【273回】9月『北野出身、スタートアップでなんでも屋‐‐アメリカ発抹茶スタートアップで抹茶を世界へ』

 

 

Ⅰ.日時 2025年9月17日(水)11時30分~13時00分
Ⅱ.場所 バグースプレイス パーティルーム
Ⅲ.出席者数 36名
Ⅳ.講師

 塚田 志乃さん(旧姓寺内さん)@106期

(World Matcha Inc. COS)

 

神戸女学院大学卒業後、サントリー株式会社に入社。夫の転勤を機に退職し、日本とアメリカを行き来する専業主婦に。現在はアメリカ発の抹茶スタートアップ「CUZEN MATCHA」のCOS(Chief of Staff)としてブランディング、PR、採用、組織づくりまで幅広く担う“なんでも屋”。三児の母。

 

Ⅴ.演題 『北野出身、スタートアップでなんでも屋‐‐アメリカ発抹茶スタートアップで抹茶を世界へ』
Ⅵ.事前宣伝 北野高校時代、周りには才能あふれる人がたくさんいました。勉強もスポーツもできる人たちの中で、私は「明るく、健康で、誰とでも仲良くできる」だけが取り柄の普通の生徒。なんでも、そつなく、ほどほどに。そんな私が今、アメリカ発の抹茶スタートアップで「なんでも屋」として日々奮闘しています。完璧よりもスピード、緻密な計画よりも走りながら整えることが求められるスタートアップの現場で、尖っていないからこそ発揮できる“そつなさ”や気配り力が、思いがけず武器になりました。普通だった私が、なぜ挑戦できているのか。そんなお話を、北野時代の自分へのエールを込めてお届けします。
Ⅶ.講演概要 *紹介者は西田智子さん(106期)高校時代は塚田さんのことを知らなかったが、本年6月の東京六稜会総会の幹事会で昨年暮れに初めてお話した。塚田さんには会場の下見や備品の準備等、きめ細やかな仕事をしていただいた。会の当日は司会の大役をつとめられ、すばらしい進行で大変盛り上がった。その際の打合せで、塚田さんの事務所でCUZEN MATCHAを飲ませていただいた。マシーンで挽きたての抹茶があまりにおいしく、何杯も飲ませてもらった。本日は講演後にCUZEN MATCHAの試飲もあるとのことで、お楽しみいただければと思う。

1.北野高校時代

高校時代は水泳部に所属。箕面六中から北野高校に入ったが、まわりは秀でた才能を持つ尖った人が多かった。そういう人をすごい、うらやましいと思いながらも、自分をダメと思うことなく仲良く過ごすことが出来た。現在、尖った人が多いスタートアップ企業で楽しく仕事が出来ているのも、北野時代の延長ではないかと思う。

 


2.CUZEN MACHA(空禅抹茶)
とは

1)CUZEN MATCHA事業

米国でスタートした米国に本社を置く「World Matcha Inc.」と「World Matcha株式会社」という日本の会社で事業を展開している。創設者(塚田英次郎氏)はサントリーでペットボトルのお茶の商品開発に従事してきたが、ペットボトルのお茶では、かなえられるお茶のおいしさに限界があるとして、本来のお茶のおいしさを追求すべく2019年に会社を創設。投資家から資金を調達し、プロダクトの開発や事業を展開している。シリーズAとしてUS$7.5Mを資金調達済で、シリーズBの調達を本年予定している。20年に米国で販売開始、21年に日本での販売を開始。

 

2)CUZEN MATCHA商品

抹茶マシーン(コーヒーのエスプレッソマシーンのようなもの)とオーガニックの茶葉を扱う。お茶は粉ではなく、碾茶といわれるひく前の茶葉(Matcha Leaf)。マシーンに臼を内蔵し、茶葉を挽いて抹茶を作る。飲む前に茶葉を挽くことにより、簡単においしく健康的な抹茶を提供している。メイン市場は米国で、23カ国に輸出している。色々なメディアに取り上げられ、賞もいただいている。

 

3)CUZEN MATCHAのポジショニング

日本の伝統的な感覚では、抹茶は茶室でお茶をたていただく茶道や禅に代表される「非日常」のイメージ。一方、若い世代では、スイーツに抹茶を加えた抹茶アイスや抹茶ラテ等のファン(楽しみ)やエンターテイメントとして人気を得ている。CUZEN MATCHAは、マシーンと茶葉で簡単に抹茶を作れることより、抹茶の世界を非日常から日常へ、また、エンターテイメントに健康効果(Wellness)を付加することを目指している。

 

 

3.日本のお茶生産地が直面する課題とOUR MISSION

1)課題

日本国内で生産者の高齢化や耕作放棄茶園の増加が叫ばれているが、根本的な原因は高品質茶葉の需要がなくなったことと考えている。

 

2)お茶の飲み方の変化

高品質茶葉の需要がなくなった原因は、お茶の飲み方の変化にあるのではないか。過去、急須でお茶を飲んでいたのが、近年はペットボトルでお茶を飲む比率が大幅に増えた。ペットボトルは外でお茶を飲むのに便利だったが、最近は家でもペットボトルのお茶が普通になっている。高品質の茶葉からペットボトル用の一般的な茶葉に需要が移っており、高品質茶葉の需要が減少している。

 

3)荒茶価格(=生産者の収入)の変化

ペットボトルのお茶は、生産技術の向上もあり安い茶葉で十分おいしいお茶を作ることができ、一番茶は必要ない。一番茶の需要は減少し価格下落が止まらず、生産者が一生懸命お茶を作っても適正な価格がつかず、次世代に事業を引き継ぐことが出来ない。これが、高齢化、耕作放棄茶園の増加や終農につながっていると考える。

 

4)OUR MISSHION

高品質のお茶の需要(市場)を作らないと生産者から適正価格で茶葉を買い取ることが出来なくなり、日本から高品質のお茶が消えてしまう。CUZEN MATCHAはこの課題に真剣に取り組み、「世界で品質の高い抹茶の需要を作る」ことをミッションとしている。日本の高級茶葉を世界に届け抹茶の世界需要を拡大することを目指す。

 

4.WHY MATCHA?(なぜ、抹茶というニッチ市場で戦うのか)

1)茶葉の豊富な栄養素をまるごと摂取できる抹茶

お茶を煎茶や紅茶として飲む場合、栄養素が水に溶けて人体に摂取されるのは30%で、残り70%は捨てられる。抹茶は100%食べることができ、カテキンやテアニン等の栄養が豊富で非常に身体に良い健康飲料である。

 

2)抹茶に含まれる豊富な栄養素とその効果

抹茶には様々な栄養素が含まれるが、その中でもテアニンに注目している。テアニンは、安眠等のリラックス効果に優れており、糖尿病や認知症にも効果があるという研究データが発表されている。覆いをして育てた抹茶には煎茶の約2倍のテアニンが含まれている。

 

3)OUR MISSION

CUZEN MATCHAでは、生産者・消費者・地球に良い環境をもたす「和・輪・環」の3つの「わ」を「CUZEN Circle」と呼び、

・生産者と公正な価格で取引を行い、高品質なお茶を守る生産者との共生

・マシーンメーカーとの協力し、世界中の消費者へ最高品質の抹茶飲用体験を提供

・地球環境への配慮を怠らず、持続可能な社会の構築への貢献

により、搾取型ではない、お互いを支え合い、それぞれが適正な利益を得ることができる循環ビジネスモデルを目指している。

 

 

5.世界における抹茶

1)世界的抹茶ブーム

世界的な健康指向にもあずかり、抹茶の需要が急増。抹茶は「新しいコーヒー」、「新しいラテ」と言われている。タイや中国で茶の生産が拡大中。

 

2)新しい抹茶の魅力

・サステナブルエナジー

海外ではコーヒー・カフェインの過剰摂取(カフェイン・クラッシュ)の問題が提起されている。カフェインは身体にダイレクトに作用し即効性があるが、持続力が低いことより何回もカフェインをとることが過剰摂取につながっている。優しいカフェイン摂取飲料として抹茶に人気が集まっている。抹茶にはカフェインとテアニンの両方が含まれていることで、カフェインがなだらかに持続することが知られている。

・抗酸化力スーパーフード

抹茶は他の高抗酸化食品より抗酸化力が圧倒的に高く(アサイーの25倍)、抗酸化健康商品として選ばれている。

 

 

6.抹茶の課題とCUZEN MATCHA

1)抹茶の課題

粉にした抹茶には、水に溶けない、粉が飛び散る(汚れる)、ダマになる、すぐに劣化・変色する等、取り扱いが面倒でおいしく飲み続けることが難しいという課題がある。

 

2)CUZEN MATCHAの目指すところ

上記の課題に対し、抹茶マシーンの開発により「抹茶=粉」という常識を変え、抹茶の新しい飲用体験を創出することを目指す。企業やカフェへのマシーンの導入、ホテルやバーでの新しい飲用体験(抹茶ミルク、抹茶ソーダ割、抹茶カクテル、抹茶ワイン、抹茶ビール割、等)で需要を拡大中。また、国産オーガニックシングルオリジン抹茶リーフとして、単一品種・単一農園のシングルオリジン抹茶でお茶の品種や農園による味の違いを味わう新しい飲み方も提案している。

 

3)CUZEN MATCHAの特徴とこだわり

栄養・味・品質にこだわりぬいた国産有機リーフ(碾茶)を一般に流通していない茶葉の状態で指定先へお届けすること、酸化しやすい粉末抹茶をフレッシュに楽しめるように「飲む前に挽く」こと、日本の美しい茶畑と地球環境を守るため国産100%オーガニック高品質茶葉の需要をつくり続けること、にこだわっていく。

 

 

7.CUZEN MATCHAの商品紹介

添付資料の商品および導入事例を参照。

日本の農業というと稲作を思い浮かべる方が多いと想います。戦後の農政は水田の稲作をいかに振興し、国民にコメを供給するかが課題でした。今年は令和のコメ騒動と言われる事態が起きていますが、このような状況になった背景を農水省で政策に携わってきた立場からお話ししたいと思います。

Ⅷ.質疑応答

三谷秀史さん(82期)

Q:静岡では、荒茶の生産量が極端に落ち込んでいること、碾茶用の機械が高価で碾茶が作れない状況等の問題に対して、同産業内の事業転換に補助金の拠出等を検討しているが、貴社でお茶の生産者に対する同様のアプローチは検討しているか?

A:高級茶葉市場を拡大しても、茶葉の供給が無くなれば何にもならず、しっかりした供給体制を作ることが重要。普通の茶園をオーガニックに変えるのに5年、耕作放棄茶園を再生するのにも同じく5年かかる。大きなことはできないが、オーガニック茶園を広げるべく粛々と準備しているところ。

 

真木勝次さん(82期)

Q:私はIPOの経験があるが、IPOを目指しているか。目指しているなら、いつ頃を考えているか?マーケットはあると思うが、貴社はどのような位置にあるのか?また、本日の講演の動機や目的は何か、ファンになって欲しいということか?

A:弊社は本質にこだわり過ぎて見せ方が下手で不器用。小さな会社だが、一人一人にきちんと話をすることで、(CUZEN MATCHAの製品や会社を)まずは知っていただくこと、その上で、CUZEN MATCHAを飲んでいただき、販売の機会等もアドバイスいただければ嬉しい。

 

多賀正義さん(76期)

Q:お茶は作り方により色々な製品に変わると認識している。タイや中国でも同じ品質の茶葉を作れるのか?

A:茶の木自体は一緒で、茶葉の発酵度合いにより紅茶・烏龍茶・緑茶に分かれる。その内、緑茶は、覆下園(茶木に覆いをかけて栽培)で碾茶(抹茶)・玉露が作られ、露天園で煎茶・ほうじ茶・玄米茶が作られる。露天園は太陽の光によりカテキンが豊富で苦みが出るが、覆下園はテアニンが残りうまみ成分が豊富。中国政府は、お茶はもともと中国から日本に輸出したものでお茶文化のオリジンは中国、ということでお茶市場に攻勢をかけている。中国のお茶は、その圧倒的な土地の広さと人の多さで価格が安い。現在は中国国内の需要内で収まっているが、後2~3年後に海外市場がどうなるか分からない。中国のお茶は露天園で、カテキンは豊富だが苦みが強くうまみが少ない。CUZEN MACTHAは、覆下園の高級抹茶に含まれるテアニンの健康貢献とうまみを消費者にアピールしていく。

 

Q:食べるお茶には興味があるが、値段はどうか?

A:マシーンは36千円(税抜き)。茶葉は一番茶のみのプレミアム、一番茶と二番茶を混ぜたオリジナル、ラテタイプの3種類があり、プレミアムで都度購入150円/杯(定期購入128円/杯)、需要の多いオリジナルで都度購入100円/杯(定期購入65~85円/杯)で、そんなに高くなくみなさまに飲んでいただけるものと思う。

 

清徳則雄さん(79期)

Q:抹茶の粉はそのまま食べられるのか

A:食べられる。マシーンには粉をひくだけのモードがあり、粉の状態で提供できる。塩と混ぜて抹茶塩として天ぷら等に使用することもできる

 

Q:茶葉の賞味期間はいかほどか?

A:未開封の茶葉の賞味期限は2年。日本の暑い夏は冷暗所で保管するのが良い。未開封の茶葉は冷凍することができるが、冷凍庫から出したら常温にした後に開封するとおいしくいただける。

 

山本直人さん(85期)

Q:娘の嫁ぎ先は静岡の茶農家だが、茶農家の継ぎ手が無いと聞く。貴社からお茶の生産者を見てどう思うか?

A:茶農家には足繁く通っているが、たいへんだと思う。お客様には「こんな農家さんが作っている」と生産者の紹介をしたいし実際しているが、農家さんや茶畑の情報をお客様に届けるだけでなく、どのような人がどのようにお茶を飲んでいるか、生産したお茶が如何に多くのお客様を喜ばせているか等、一般のお客様の情報や声を農家さんに届けたい。そうすることで、農家さんがやりがいや喜びを感じてもらえると嬉しい。

Ⅸ.資料 250917 六稜倶楽部 (1)

記録:葛野正彦(88期)

Ⅹ.講演風景 273蝗・250917 - 2273蝗・250917 - 3273蝗・250917 - 6273蝗・250917 - 7273蝗・250917 - 8273蝗・250917 - 4273蝗・250917 - 9273蝗・250917 - 10273蝗・250917 - 11273蝗・250917 - 12273蝗・250917 - 13273蝗・250917 - 15