【222回】6月「ウナギの完全養殖の実用化を目指して」

6月26日開催予定

 

田中秀樹さん@88期(近畿大学水産研究所教授(魚類繁殖生理学))

1957年 大阪府生まれ
1982年 京都大学大学院農学研究科水産学専攻 修士課程修了
1982年 水産庁養殖研究所 研究員
1996年 博士(農学)
2004年 日経BP技術賞 医療・バイオ部門賞、2011年 水産学会賞、2012年 日本農学賞 受賞
2018年 国立研究開発法人水産研究・教育機構 増養殖研究所を定年退職後、同年4月より現職

著書:うなぎ[謎の生物](築地書館 2012)分担執筆、ウナギの科学(朝倉書店 2019)分担執筆、トコトンやさしい養殖の本(日刊工業新聞社 2019)分担執筆

 

 

≪講演内容≫

ウナギは日本の食文化に欠くことのできない食材ですが、国内消費量の99%以上を養殖に依存しています。ウナギは川や湖など淡水で育つ魚ですが、産卵は日本列島から遠く離れたマリアナ諸島西方海域で行われます。孵化した仔魚はレプトセファルスと呼ばれる透明な柳の葉のような形態の幼生となって北赤道海流に運ばれて黒潮源流にたどり着き、約半年かけてシラスウナギと呼ばれる稚魚となり、日本列島など東アジアの生息場所に来遊するのです。ウナギ養殖の元種となる種苗はすべて河口付近で採集された天然のシラスウナギが用いられており、現在のウナギ養殖は「完全養殖」ではありません。近年、漁獲されるシラスウナギの量が著しく減っているためウナギ養殖に必要な種苗の確保が課題となっており、一日も早い「完全養殖」の実用化が望まれています。

ウナギの完全養殖を目指す研究は古くから行われ、北海道大学で1973年に人工孵化に成功しました。ところが、孵化した仔魚は、それまでに種苗生産に成功していたマダイやヒラメなどと同様の方法では全く育てることができず、20年以上、大きな進展は見られませんでした。その間、地道な研究を続けていた国の水産研究所において、1996年にサメの卵を材料とした液状の飼料でウナギの仔魚を成長させうることが発見され、2002年に初めてシラスウナギまで育てることに成功しました。その後、2010年には人工飼育した親から生まれた卵をシラスウナギに育てる、いわゆる「完全養殖」も達成されましたが、実用的なコストでの大量生産ができないため、この技術は現在も実験室レベルに留まっており、実用化されていません。その原因として、ウナギの完全養殖実現のための各ステップに様々な困難が残されていることが挙げられます。

近畿大学水産研究所では、これまでにクロマグロだけでなく多くの海産魚の完全養殖を世界に先駆けて達成し、実用化してきた実績があります。国の研究所で開発されたウナギの種苗生産技術に近畿大学水産研究所の実用化のノウハウを融合させ、ウナギの完全養殖実用化を実現することを目指しています。