【220回】4月「ファン・ゴッホとその手紙 ー画才もない不適応者を世界的画家に育てた家族たちの遺産ー」

4月17日開催予定

 

圀府寺司(こうでら・つかさ)さん@88期(大阪大学大学院文学研究科教授(西洋美術史))

1957年 大阪府生まれ。
1979年 大阪大学文学部卒業。
1981- 88年 アムステルダム大学美術史研究所に留学、文学修士号、博士号を取得。
1989年 オランダ、エラスムス財団よりエラスムス研究賞を受賞。

広島大学総合科学部助教授を経て現職。

2004年 ワルシャワ、ユダヤ歴史研究所研究員。

著書:Vincent van Gogh; Christianity versus Nature, Amsterdam/Philadelphia 1990. 『ファン・ゴッホ 自然と宗教の闘争』(小学館 2009)『ユダヤ人と近代美術』(光文社新書 2016) 『ファン・ゴッホ 日本の夢に懸けた画家』(角川ソフィア文庫 2019)など。編著書: 『ファン・ゴッホ神話』(TV Asahi 1992, 英語版The Mythology of Vincent van Gogh,Amsterdam / Philadelphia, TV Asahi/John Benjamins 1993) 編著:『ああ、誰がシャガールを理解したでしょうか?』(大阪大学出版会 2011)『ファン・ゴッホ   巡りゆく日本の夢』(青幻舎 2017  英語版:Van Gogh and Japan, Amsterdam 2018)など。 訳書: 『ファン・ゴッホの手紙I, II 』(新潮社 2020). ファン・ゴッホ展を1986年(大阪)、2002年(札幌・神戸)、2005年(東京・名古屋・大阪)、2017-18年(札幌・東京・名古屋・アムステルダム)に責任監修。

 

 

≪講演内容≫

どれほど歴史的意義があろうと、ほとんどすべての私信は歴史には残りません。書き手も受け手も公表を望まず、自らの手で歴史の闇に葬るからです。ただ、ごく稀に、歴史の女神の手元が狂って残ってしまう私信があります。ファン・ゴッホの手紙がそのひとつです。ここでは『ファン・ゴッホの手紙I, II 』(新潮社 2020)を個人全訳する中であらためて感じたことをお伝えしようと思います。

「炎の人」、「天才」、「孤高の画家」、「狂人」… 過去百年余りの間、美術界やアート関連市場はファン・ゴッホという画家にこのようなイメーシを付与してきました。過去の伝記も、映像作品も、手紙の翻訳さえも「不遇の天才」「孤高の画家」といったイメージを補強するように生産されてきました。しかし、ファン・ゴッホには天賦の画才などありません。彼にあったのは克服しがたい社会的不適応と、人の役に立ちたいというの強靭な意志、そして、この不適応者を支え続けた家族たちでした。歴史の女神の手元を狂わせ、生き恥晒した膨大な私信を後世に残すことになったのは、家族たちの思いに他なりません。「孤高」などではなかった画家ファン・ゴッホの家族の肖像を描き出します。