【217回】1月「健康ファイナンス思考による、長寿時代の健康戦略 +新型コロナウィルス感染症 最新事情」

Ⅰ.日時 2021年1月16日(土)14時00分~15時30分
Ⅱ.場所 Zoomによるオンライン開催
Ⅲ.出席者数 104名
Ⅳ.講師 奥 真也さん@93期 (埼玉医科大学総合医療センター客員教授)
1962年、大阪府生まれ。医師、医学博士。経営学修士( MBA )。大阪府立北野高校を経て、東京大学医学部医学科卒。
英レスター大学経営大学院修了。専門は 医療未来学、放射線医学、核医学、医療情報学。東京大学医学部附属病院放射線科に入局後、フランス国立保健医学研究所( INSERM )に留学。東京大学医学部附属病院 22 世紀医療センター健診情報学講座准教授、埼玉医科大学総合医療センター放射線科准教授、会津大学先端情報科学研究センター教授などを務める。その後、ビジネスの世界に転じ、製薬会社、薬事コンサルティング会社、医療機器メーカーに勤務。埼玉医科大学総合医療センター客員教授。創薬、医療機器、新規医療ビジネスに造詣が深い。著書に 「 放射線を超えて 」 (SCICUS 、 2012 )、「 Die革命 」 (大和書房、 2019 )、「 未来の医療年表 」 (講談社現代新書、 2020/9 )、「世界最先端の健康戦略」(KADOKAWA、2020/11)など。
Ⅴ.演題 健康ファイナンス思考による、長寿時代の健康戦略+新型コロナウイルス感染症 最新事情
Ⅵ.事前宣伝 人生100年時代からさらに人生120年時代へ、医学は驚異的な進歩を続けています。2019年に出版したDie革命(大和書房)、2020年9月の「未来の医療年表」(講談社現代新書)で描き出した現代、そして近未来の医療をベースに、ファイナンスの考え方を用いて、長寿時代の健康法について皆さんと考えたいと思います。健康や身体をお金のように一つの資源と捉え、「見える化」「節約」投資」そしてその先にある「消費」という健康のPDCAサイクルをどう回していくか、お話ししたいと思っています。本講演は、2020年11月に上梓した「生存格差時代を勝ち抜く世界最先端の健康戦略」をもとにお話しします。なお、首都圏に緊急事態宣言が発令された時節柄、「新型コロナウイルス感染症 最新事情」として、講演時間の一部を使って、流行の行方、病気についてわかってきたこと、ワクチン開発、治療薬開発などについてお話し致します。
Ⅶ.講演概要

★はじめに(演題追加の経緯)

・医者が講演をするのに、それ以外の普通の演題だけで良いのかということで、1週間前に事務局の方と打合せた際に、感染が拡大している「新型コロナウィルス感染症の最新事情」を追加することが急遽決まった。

・今回は、前半Aで「長寿時代の健康戦略」、後半Bで「コロナ最新事情」を解説し、最後Cで質疑をお受けする。

 

A.長寿時代の健康戦略

1.これまでの著書の経緯

*2019年に「Die革命」を発表して、人生100年時代到来を標榜して以来、約1年で(丁度1年前の昨1/16に)日本で初めてコロナ感染者が発見され、コロナが騒がれるようになった。

「Die革命」は、医学の進歩について何から何まで解説しているものであるが、その一般の評判は、“マニアック”で専門家でもやや難しいとのことあった為、少し易しくすることを目指して、2020年9月に「未来の医療年表」、続いて11月に「世界最先端の健康戦略」を出版した。

「未来の医療年表」では、25年~40年先の医療の状況を著し、ここで時代背景が分かった後は、全体としてどうやって健康に生きて行けば良いかという視点で、「世界最先端の健康戦略」を発表した。

・ここでは、お金とのアナロジー、つまり、医療をファイナンスに置き換えて表現すると分かり易いのではないかということで、その言葉使い・概念を使って、解説を加えている。

*この講演では、「未来の医療年表」に少し触れ、「世界最先端の健康戦略」をメインに解説する。

 

 

2.未来の医療年表(10年後の病気と健康のこと)

「医療未来学」つまり、未来の医療を医学だけでなく、社会的・経済的なことを交えて、健康・医療について学問的に考えることをベースにしている。・平均寿命も50歳を超えたのは戦後で、それ以降今日の80歳代まで順調に伸びている。

・昭和の時代に「エイズ」が不治の病で騒がれたことがあるが、次第に克服されて、大量の薬を要する時代を経て、今では、月1回、注射をすれば足りるくらい、普通の病気となりつつある。

・20世紀の終わりから21世紀にかけて、癌が治り始めて、それ以外も含めて、100歳から120歳にまで伸びても可笑しくない時代に至ろうとしているが、その時代の健康や医療を考察したものである。

「未来の医療年表」は、2025年から2040年のことを示しているが、以下の7つ大事な要件がある。<尚、以下⑤~⑦は、遺伝子技術・治療の発達に基づく>

① 2025年:初の本格的認知症薬誕生(参考):「病院へのフリーアクセス廃止」
② 2030年:AI診療が主流に
③ 2030年:感染症の脅威から解放 (感染症がなくなる訳ではない)
④ 2032年:安楽死法制定(法整備は必要)
⑤ 2035年:がんの大半が治癒可能に
⑥ 2040年:神経難病克服(ALSやパーキンソン病等)
⑦ 2040年:糖尿病解決

 

 

3.世界最先端の健康戦略

*ここで伝えたかったことは、もう少し軽いタッチで「何をすればいいのか」ということで、「Finance思考」「健康に関するPDCA」が浮かび上がり、ファイナンス的な思考で「健康資本」をどう生かしていくかを、軽い言葉で表現することとした。*「血管の問題」
・血管性病変(心臓、脳など)癌に代わって、21世紀中盤の死因の大きな要因となることが予想される。*「PDCAと可視化」
・Plan-Do-Check-Actサイクルを健康資源に利用する。
・P:健康を「可視化」➡D:臓器を「節約」➡C:健康に「投資」➡A:健康を「消費」する。*「可視化」:健康を数値で示して記録しておく(歩行数・摂取カロリー・ジョギング距離・体重・体脂肪率)→今は、これらを記録する便利な携帯ツール等がある

*医療をファイナンスに置き換えて表現する工夫としては、著書の中で「健康ファイナンス相談室」というコーナーを設けて、医療的な「相談内容」(3事例)を「ファイナンスに置き換えて」、トータルに「健康ファイナンス・アドバイス」として解決策を提示している。

*長い道中ならではの、ファイナンス思考の重要性として、「死のボーダーライン」という考え方がある。人間の体調(良い~悪いと変動)の領域として、「プラス」・『ゼロ』・「マイナス」・「グレーゾーン(死のリスクが高く救命処置が必要)」・『死のボーダーライン』・「ブラック(デス)ゾーン」があるが、この「デスゾーン」に割り込むことがなければ元気でいられる。
従って常にこの状況を把握してそれに応じて対処することが肝要である。

「節約」
・臓器の節約
:「耐用年数50年」特に「心臓」/運動器・目・歯
・血管の節約:再生は当面ない→今後当分、最大死因は「血管」になることが必定である。

「投資」
・薄味体験の積み重ね・ちんたら運動習慣
オーラルケアの習慣・ヘルスリテラシー向上
・老後に備えてVR練習(アバター・人工ステーキ・ゲーム)・遺伝子検査によるがんの予防切除

「消費」
健康は「あの世に持っていけない」→消費しましょう。
・VR投資の回収 ・「後半20年」はこれからのテクノロジーが盛り上げてくれることを期待している。

 

 

B.新型コロナウィルス感染症最新事情

 

1.今後の流行予測私論

*緊急事態宣言・現在、11都府県に発令されているが、陽性感染者数を始めとして前回(去年の4~5月)と状況は全く異なっている。

・どちらが深刻かということに関してはなかなか判断が難しい。

・陽性者が人口の4~5割に達すると所謂「集団免疫」になるとTVなどで識者が述べているが、これはこの先1~2ヶ月でなるような話ではない。(かつ、集団免疫学説はまだ確立したものではない。)

・陽性率が東京都では20%弱くらいになっているが、去年は1桁代のしかも下位の方で、今は全然違った状況で陽性者が増えている。そういう中で今後どうするかが問題になっている。

*Factor Xは存在するか?

・去年、山中伸弥教授が提唱し、日本人が欧米人に比べて罹患率が低いというものであるが、この存在について私は否定的で、存在しないと思っている。ただよくわかないこともあり、日本の罹患率が低いままかもしれないかも知れないが、日本というのは島国で、隔離されていて、諸外国からウィルスが入って来るのに時間がかかっただけなのではないかとも言える。また、「Factor X」には明確な証拠というものがない。

*なぜ医療「崩壊」なのか

・何をもって医療崩壊というかによる。ある意味では医療崩壊はすでに始まっていると思われる。荏原・広尾・豊島の都立病院をコロナ専門とし、お産の受け入れ等を止めている。

・これは、コロナがなければ当然普通にやれていた医療が出来なくなる状況が生まれ、癌治療やお産に支障が生じているわけなので、崩壊と考えられるというのが私の見解。

*国民皆保険議論(菅首相の発言は)

・そういう状況の中で、国民皆保険の見直し論というのは重要と思われる。

・今政府は、陽性者の人全てを病院で受け入れることを考えており、重症者以外の無症状・軽症・中等症の方は、自宅・ホテルでの療養を組合せて出来るだけ病院の負担にならないようにしている。

・しかしながらこれについては、やはりトリアージ(患者の選択)は甘いと思っている。本当はもっと重症者だけに限定することやらなければならない時期に来ている。(事後ノート:この議事録を確認している2021/2/7現在はPCR陽性者の増加は止まっており、トリアージ変更は目下は不要かもしれない。)

・今、癌やお産や麻酔を要する手術に支障が起こって、恐ろしい事態になっていると思われるが、皆さんが大事にしている日本のこの保険制度の基で、素晴らしいレベルにある医療を受け続けられるようにしてゆくべきであろう。

*「自粛」はいつまで・五輪は?

・社会状況をどのように認識するかにかかっており、感染の予想は簡単ではないし、そんなに簡単に収まるものではない。

・五輪については、個人的には、開催出来ないと思っている。

・放映権を考え、参加国を絞って、無観客で開催すれば可能性はあるかもしれないが、今、コロナは市中感染率が上がっていて、普通に行動していても感染リスクがある時期に来ている。

・依って、自粛期間がいつまでかと想定するのは難しい。

 

 

2.ワクチン開発

*RNAウィルスのワクチン開発成果(過去)・RNAウィルスの特徴は、まだ効果的なワクチンがあまり造られておらず、成功例が殆どない。日本のこれまでのインフルエンザワクチンは中くらいの効き目で成功例と言える。他の感染症の例えばエボラ等のワクチンは出来ていない。

*mRNAワクチンという技術について

・一方、mRNAワクチンはワクチンを造る方法・技術で、モデルナやファイザーといったメーカーが造っているのはこれに該当する。これらはこれまで未だ世の中に出回っておらず、出来れば人類初となる。

・しかしながら、そもそも訊くかどうかも分からないし、副作用も分からない。

・ここに掲載したグラフは、「ニューイングランド・ジャーナル・メディカル」の12月号に掲載されたものであるが、明らかに「ワクチンの効果」があるということを示したものである。医者から見ると非常に効果があることが見て取れるが、効くことと副作用があるということは、全く別なので、これでワクチンを必ず打てばよいということにはならない。

*打つか、打たないか?(2021/1/16現在の意見)

・打つか打たないかということに関しては、私の今日現在では「打てる順番になれば打とうかな」と思っている。

・ただちょっとわからないのは、このワクチンは「遺伝子技術」を使ったものなので、人間のもともと持つその存在や機能に悪影響をもたらすかどうか分からない。

・従って、これから子供をつくる予定のない方については、アナフィラキシーショック等の急性反応の懸念が大きくないい限り、打ってよいと思っている。

・一方、これからお子さんを産む可能性のある方については、まだ可否の見解を決めかねている。

・いずれにせよ、ワクチンを打つかどうかは個人が決定しないといけないものであることは協調しておきたい。

*現在見えているワクチンについて(「Modernaワクチン治療成績」)

・ここに掲載したグラフは、「ニューイングランド・ジャーナル・メディカル」の1月号に掲載されたものであるが、Placebo(偽薬)に比べてモデルナ社の「mRNA-1273」というワクチンの効き目が極めて大きいことを示したものである。その有効性は理解すべきものだと思っている。

・ファイザーのBNT162についても同様(有効と推定できる)である。

 

3.重症化と後遺症

*誰が重症化するか・ここに掲載した資料は、インターフェロンが体のなかに如何に存在するかを示したものであるが、これによって、その人が重症化するかどうかわかるというものである。

・このようにどういう人が重症化してどういう人がしないかということが予め分かる研究が既に結構出てきている。

*後遺症(味覚・嗅覚異常の遷延化と髪の毛が抜けること等)

・この二つは、重大なことだと思っている。

・無症状や軽症で終わる若い人は多いが、一定の割合でこれらの後遺症が残る人はいる。

*若者へのメッセージ

・上記のことを肝に銘じて行動して欲しい。

*年長者へのメッセージ 

・コロナにかかるのは一日でもあとの方が良いということに留意して行動して欲しい。

*今後の見通し

・ACE2レセプターという人間の身体の中の「分子」が多い人が重症化するということが言われていて、米国・日本で研究されている。

・病態の解明が色々なところで進んでいて、あと半年~1年くらいで、この感染症についてもっとわかるようになることが期待されている。

*著作等について

・成毛眞さんの「2040年の未来予測」という本に私の著書の「未来の医療年表」の結構な部分が引用されている。

・2~3月出版予定:中高生向けの「医学部に行く心構え」

・4~5月出版予定:「死生観について」

・3月14日(日)21時~23時 BS朝日にて放送予定:「未来の医療年表」関連特別番組(https://bit.ly/2MAb6hI

 

 

C.QandA(質疑応答)

 

植村和文(82期)<事前質疑登録>

質問:SNS等で、海外かどこかの学者が「感染症によって、数十年から数百年後に人類化が滅亡する可能性がある。」と言ったのを聞いたことがあります。今回の新コロナウィルス(COVID-19)について、そう云った意味でどのようにお考えでしょうか?

回答:感染症のそういう可能性がないとは言えないが、確率としては大きくない。だいたいr歴史的に100年に1回くらい大きな疫病が発生する。今回のコロナについては、色々な数字に惑わされて一喜一憂して、心配されていると思われるが、かつての歴史的な感染症であるペストやスペイン風邪に比して、今の段階では、相当低い実力のものと考えられる。今回の話は、その頃からは医学が相当進歩しているのに、結構人が多数亡くなっているのを聞くと、より一層悪い方向に感じているのが今の状況だと思われる。その実力以上に世の中が委縮している。
尚、将来もっと強い感染症が起こるのではないかという点に関しては、100年のタイムスパンがあって、人類が遺伝子操作という愚かな試みを行わない限り、平均的には400~500年は起きないと思われる。

植村:奥さんのこのシリーズのご講演は、「Die革命」が出版された2019年の10月に、大阪の「六稜トークリレー」で実施されていますが、東京ではそれに先立って、出版(2019年4月)されたばかりの同年5月に「KITANO cafe」にて開催されていますので、これで都合3回目となります。
この先も機会があれば、またのご登壇を是非よろしくお願いします。

 

宮下英雄(75期)<チャット>

質問:日本人の死因の中で、老衰死は何割くらいを占めているでしょうか?

回答:2018年の統計では、死因の3位で11万人を占める。これを多いと捉えるか少ないと捉えるかは別として、今、医療界では、なるべく「老衰死」に分類しないようにしている状況がある。複数の状況があって、どれにも当てはまらなくて、高齢で亡くなった場合を「老衰死」としているので、「病死」に近いと言えるかも知れない。

 

赤井知之(98期)<チャット>

質問:医療従事者の娘がおり、これまで卵アレルギーがある為、インフルエンザのワクチンはパスしてきました。子供を産む可能性のある女性として、今度のワクチンは受けるべきか否か?

回答:お勤め先の状況がウィルスの暴露に対して感染確率が高い状況かどうかにもよるが、世界的にも未だワクチン接種が始まって3ヵ月もたっておらず、事例が少ないため、副作用の状況も良く分かっていないので、情報をウォッチしつつ、もう少し様子を見た方が良いと思われる。
尚、ワクチンの話では、

(1)子宮頸がんのHPVワクチンの若い女性(19~21歳)の接種率が6%程度と世界を見渡しても、これほど低い国は日本以外には少ない。これは同ワクチンの接種関連症候群がマスコミ的に有名になり、副作用が余りに喧伝されていることが原因とされているが、これでは10年先くらいに、日本の子宮頸がんの発生率が世界の中でも突出する恐れがある。従って、副作用等を過剰に警戒するのではなく、有効性はじめ諸要素を比較検討して然るべく対応する必要がある。

(2)今回のコロナのワクチン(mRNAワクチン)では、モデルナ製・ファイザー製の2種類があり、他にもアストラゼネカ製(ウイスルベクター型)や日本製のもの等各種あって、現在どれを選ぶかは指定できないとされているが、遺伝子に影響を及ぼすかどうかを初め、夫々性能が違うので、国民に提供する側が、国民が選べるようにしてゆく必要があると思われる。

 

白石俊已(89期)<チャット>

質問:欧州に比べて、日本の病床の逼迫度が高く、公共は既に満杯なので、国は民間に依頼する他ないのでしょうか?

回答:現在(21.1/16)重症者数は800~900人代であるが、日本全国の対象病床数は3万~5万床ある。仮に1,000/50,000として、2%なので、逼迫とは言い難い
これについては、法律でコロナが感染症の2類に指定されていて、感染すると、軽症であっても報告や入院の対象にされて、言って見れば、「病床の無駄遣い」状態にあるからだと思われる。従って、民間依頼云々よりも、法的な位置付けを変えることを考えた方が優先度は高いと個人的には思っている。
また、協力しない民間には罰則を与えるとか、議論が変な方向に向かっている。

 

三谷秀史(82期)<チャット>

質問:感染指定症の分類については、どうあるべきとお考えですか?又、重症化し易い要因としてインターフェロンの話があり、それは例えば、サイトカインストームを起こしやすい体質であるとか、ACE2受容体の数を相関する知見はあるのでしょうか?

回答2類・5類問題は、基本的に出来るだけ外すべきだと考える。外された場合、届け出を法的にしなくなった分、厚労省がちゃんと方針を出すなど、都道府県の保健所や県庁レベルのところが、医療機関と連携して、感染症の法律に基づく部分ではないけれどこうやるとかちゃんと決めれば良い。今は、法律があることが足枷になって、病床が無駄遣いされたり、医療従事者の差別に繋がる問題とかいろいろなことが起こっている。
インターフェロンの話については、ACE2レセプターの数が、多いと重症化する模様、サイトカインストーム(免疫反応の過激化)状況を起こすのが、ACE2レセプターであることははっきりしていて、こういうものとの関係性について一つがインターフェロンレセプターであり、生化学的な方法で測定できるものを、重症化やサイトカインストームを起こす状況を細かく予知する方法が研究されていて、早ければ半年後くらいに何か出てくることが期待される。

質問:現在、厚生労働省や医師会、病院等は、組織としてフルパワーで動いてると思われますか?

回答:厚労省というところは、専門家が外にいて、内部には医者が20~30人とノメディカルな専門官がいる組織で、その中での意思決定のプロセスがサイエンティフィックに中々進まない。決まって進んだとしても、今の厚労省は、(今日は北野の同窓会なので言わせて頂くと)パワーが非常に低いと思われる。その低さ故に、今、色々な問題が起きている。
ただし、風通しを良くして、正しいことをサイエンティフィックに議論して進めるようになるのは、厚労省の問題というより政治全体の話だと認識している。

 

星野恵美子(104期)<チャット>

質問:フリーアクセスと国民皆保険にてついて、今後どのように変わっていくでしょうか?

回答:「剥奪するとすれば、その両者のどちらと思われるか」というアンケートでは、フリーアクセスを剥奪し国民皆保険は残して欲しいというのが大多数であった。それが国民の総意であるならば、国民皆保険でカバーする範囲を命に関わる致死的な病気に限定し、美容などの軽易な、あったらいいけどなくても死なないようなものには医療保険のお金を使わないような制度にしてゆきべきだと思われる。
フリーアクセスについても、現在は、紹介がなくでも、お金をだせば、東大や慶応等の名の通った病院を受診できるが、欧米にあるようなGPによる”前裁き”(高度医療が必要否か判断する)機関のようなものを設けるなど、代替施策を講じれば、なくしてもよいと考えられる。

 

引野えみ(94期)<当日会場>

質問:コロナに罹患した場合、日本の保険の中で選択できる「薬」の情報を教えて頂けますか?

回答:先ず、罹患した場合どうするかというのがみなさん気になっているかと思うので、二つのケースで説明する。先ず、①症状があって疑わしい場合は、医療機関を受診する。現状でも手を尽くせば見つからないことはない。そこで陽性の場合に、最悪入院となり、入院先を見つけるのが困難な状況が喧伝されているが、それは心配することはなく、その医療機関に義務があるので、任せておけばよい。次に②何らかの形でPCR検査が陽性になった場合は、その先、自宅待機がホテル療養か入院かとなるが、それについてはその検査主体の責任となるので、余り心配する必要はない。
次に、「薬」については、重症化に対しては抗アレルギー薬では、阪大などで開発している「アクテムラ」が訊くといわれている。その他には、マスコミで示された「アビガン」などがあるが、これもそれが投与された時がたまたま、適合したかあるいはほかの要因があったかは定かではなく、医師の友人などの情報だと、現時点で「特効薬」的なものはあまりないのが実情と思われる。

質問:著書の中で、主に「体」について、つまり“ハード”がメインだと思うのですが、「メンタル」つまり“ソフト”について描かれた部分はありますか?もしないのであれば、今後描かれるご予定はありますか?

回答「身体医学」が殆どで「精神医学」が殆どないというのはその通りで、20世後半から21世紀前半まで精神医学は殆ど進化していないので、本を書くネタがない。例えば、鬱病や統合失調症の治療に新しいことが描ける状況にない。
糖尿病や神経難病にアプローチできる遺伝子治療技術が精神医療に使える可能性が非常に高い。話は逸れるが、これには脳の部分の解析とかに「画像診断」が関係している。但し、画像診断技術は、20年に1桁(1/10)しか進展しないので、あと1桁半くらい精度が高くなる、30年後の2050年頃に、精神疾患に関する画像診断の貢献度合いが高くなると思われる。
尚、認知症に関しては、分子生物学的な話は非常によくなされているので、目先の症状が良くなる薬は、2030年までにいくつか出てくる。ただ、部分的改善はするが、根本的改善が可能であるどうかも含めて分かっていない。また不可能かもしれない。不可能でないとしても、そのことに先端医療技術が役に立つにはもう少し時間がかかる。精神疾患に関して20~30年かけて少しずつ成果が出てくるので、今の処1冊の本として構成できるような状況にない。

 

中山行輝(80期)<事後メールによるQ&A>

質問:
<総論>
確か「ゾウの時間 ネズミの時間」だったと思いますが、動物(哺乳類)としての人間の寿命は、その脈拍(拍動)から50年程度と計算される所、120年まで延びたのは、PDCAサイクル(効率的健康資産消費)活用の成果ということでしょうか?

<各論>
ⅰ)新型コロナウイルス重症者をカウントする際の、全国(厚労省)基準東京都基準のダブルスタンダードのどちらに合理性が認められるのでしょうか?
ⅱ)同じく死亡者大阪府が東京都より多い理由は何なのでしょうか?
高齢化の差、医療提供体制の違い(?)等が一般に考えられる所ですが—。

回答:臓器の耐用年数という観点からは、人間の寿命が50年程度ということは正しいと思います。120年は医学側の都合であり、もともともたない設計の人間が120年もつようになってしまったということで、おっしゃるようなPDCA効率化も進みますし、それよりも、致死的病気がことごとくのように解決したことが大きいと思います。

ⅰ)重症者のカウントというような単純なことなので帳簿はあってほしいのですが、歴史的に国と地方行政の数字が合致しないことは例が多数あります。どちらが合理的という考察は難しいと思います。(しいて言えば両方とも不正確というところでしょうか。)国の数字は基本的には各地方自治体のものが由来なのですが、タイミングや集計経路などで誤差が生じます。お粗末であるとは思っています。

ⅱ)これについては合理的な説明は難しいです。大阪の若者がより動き回るからとか諸説ありますが、どれが正しいかの検証は相当難しいですし、正確な検証をするための労力が報われるとも思いませんので、行われないのではないでしょうか。ご指摘の高齢化率、医療提供体制の差などは要因の一部であるかと思います。

 

里村利光(98期)<事後メールによるQ&A>

質問:昨今の状況を見ていますと、自身又は家族が感染し自宅療養となる確率は高いと認識しています。療養中に症状が急変し亡くなられる方も報道されているところです。症状の程度など素人には判定出来ないと思うのですが、自前で例えば血中酸素濃度測定器などを購入して、管轄の保健所に対して、症状に関する客観的なデータを提供出来る備えをしておくのも有効かと考えているのですが、あまり賢明な備えとはいえないでしょうか?ある程度意味があるならば、ちゃちな測定器は避けるべきでしょうか。最低5000円の物ではないと意味がないとか。長文で恐縮です。

回答:血中酸素濃度測定器を自宅で揃えることに意味はあると思います。もともとの市場流通価格において、3,000円程度でも十分正確なものはありましたが、いまは品薄で高騰しているのと、一部の海外業者が日本製も含めて買い占めて国際通販しているのですが、取り引きがちゃんと行われる保証もないので、お勧めしません。よく指摘されるように、呼吸系疾患を有する人や高齢者では感染症と関係なく必要とする方も多いのでその方たちに行き渡るように何らかの販売規制を行う必要があるとすれば行政のやるべき仕事であると思います。(個人が買い控えることに大きな効果があるとは思えない。)
ちゃちなものは避けるべきと思いますが、上記の通り、ちゃちかどうかは価格では判定できないのが現状です。医療機器認定を受けているもの、国産品、電子取引サイトのレビューがしっかりしているなどを勘案してご判断ください。

 

【記録:植村和文(82期)】

Ⅷ.資料 東京六稜会20210116講演スライド(奥真也)(4.6MB)