【255回】3月「子どもの貧困の連鎖解消に挑む20代NPO代表の苦労と挑戦」

Ⅰ.日時 2024年3月20日(水)11時30分~13時00分
Ⅱ.場所 バグースプレイス パーティルーム
Ⅲ.出席者数 36名
Ⅳ.講師

平井 大輝さん@126期(認定NPO法人CLACK理事長)

北野高校126期卒業(28歳)中学時代に親の自営業の廃業と離婚を経験し、経済的な困難に直面。困難を抱える中高生の学習支援のNPOで3年間活動。その後、生まれ育った環境に関係なく自分の人生を自分で切り拓いていくための機会をつくるため、大学を休学しCLACKを設立。シチズン・オブ・ザ・イヤー受賞。FORBES JAPAN 「世界を変える30歳未満」 30 UNDER 30 受賞。

Ⅴ.演題 『子どもの貧困の連鎖解消に挑む20代NPO代表の苦労と挑戦』
Ⅵ.事前宣伝 中学時代に親の飲食店が潰れ、両親の離婚を経験。その経験をバネに大学時代にNPOを設立。学生起業で、かつNPOという儲かりにくい形で立ち上げた理由。今年度には年間の事業規模が1億円を突破する中、今後何を目指すのか。社会貢献とビジネスの両立、子どもの貧困、生成AIによる雇用環境の変化、教育の未来などにも触れていけたらと思っています。
北野高校を訪問したテレビでの特集動画はこちら。https://www.youtube.com/watch?v=amPwECtMCJI
Ⅶ.講演概要 この概要は、講演内容を簡単にまとめたものです。詳しくは、IX.資料 にある平井さんが講演に使ったPPT(PDF) を参照ください。 

1.自己紹介と目標、そしてCLACKについて

 

⑴平井さんは、CLACKという認定NPOを立ち上げており、このVisionとして、「生まれ育つ環境に関係なく、子供が将来に希望とワクワクを持てる社会を築く」、そしてそれを成し遂げるためのMissionとして、「日本中の困難を抱える高校生に、プログラミングによる自走支援を届ける」という目標を掲げています。

⑵この目標を掲げる背景には、事前宣伝に述べる平井さんの貧しかった中学時代からの家庭環境がありました。この経験をばねに2018年に立ち上げたCLACKの事業費は、80万円/年に過ぎなかったのですが、2023年予算では1.12億円までにのばすことができました。これにより様々な事業を通して社会に貢献できるようになりました。

⑶社会からも様々な分野から認知されるようになり、数々の賞を受賞しました。特に、シチズン・オブ・ザ・イヤー受賞、Forbs誌からは、Forbs Japan 30 under 30 に2023年に選ばれました。

⑷CLACKの認識として、貧困が連鎖する社会構造だけでなく、貧困がもたらす経験不足、人との繋がり不足、そして考え方の不足、この3つの不足が、子供たちの自立を困難にし、自立の障害となっていると考えています。

 

2.立ち上げの背景

⑴中学時代から貧困の中で育ったのですが、大阪府大の工学部に入学し、次の2つを軸として学生生活を送りました。

・勉強以外のことに興味を抱き、ヒッチハイク、バックパッカーとしての東南アジア旅行、スポーツ、アルバイト、寄食等、いろいろな事にチャレンジしました。特に、IT関連のインターンシップには力を入れました。頭を使ってお金を儲ける面白さを体験しました。

・自分と同じように貧困な境遇に育った子ども達に何かできないか。どうすれば貧困から脱出できるかを考えた。

 

⑵貧困、虐待、ヤングケアラー、発達障害、外国ルーツ、不登校といった多くの困難が立ちはだかる様々な子供たちと接していて、自分自身の人生はラッキーも多かったことに気付きました。自分が貧しくなったのは中学生になってからで、両親とも大卒、塾に通うこともできた、家族旅行にも行きました。それに比べて、世の中には、もっと絶望的に過酷な境遇に置かれている子供が多いことを知りました。

 

⑶就活を辞め、子どもの貧困に1年間本気で取り組むために大学を休学しました。初期構想として、子供たちがIT企業でインターンで働くことができれば、お金もスキルも習得、そしてそのためにパソコンを用意してプログラミングを学ぶ機会を作ろうと考えました。このため、シアトルでのリーダーシップ研修に参加しました。

 

⑷子どもたちの貧困をマクロ的な視点から見ることの重要性に気づきました。これについては、大阪府大の山野紀子教授から多くのことを学び、イギリス、フィンランドへ海外視察を行いました。

 

⑸こういった経緯から、「子供の貧困に事業として本気で取り組み、世の中を良くして行こう」と覚悟を決め、2018年6月、23歳の時にCLACKを立ち上げました。

 

⑹勿論、当初資金は無い、場所は無い、パソコンも無いと、プログラミングを教えるどころではなかったのですが、徐々に周囲の理解を得て協力者も集まり、寄付も受けることができました。中古のパソコンを廃棄するよりは良いということで、情報の取り出しはしない、情報の完全消去することを約束して、パソコンを譲って頂くことができ、事業が徐々に軌道に乗って行った次第です。

 

3.事業概要

⑴Tech Runway:困難を抱える高校生に、3ヵ月に渡ってプログラミングの学習支援を行う。PCを無料で支給し、授業料は完全無料、そして交通費も支給するようにしました。十三、堺、五反田、西城(愛媛)に施設があります。

 

⑵Tech Runway+:Tech Runwayで学んだ高校生たちが、より専門的にITやプログラミングについて更に3ヵ月学ぶ。京橋、五反田に施設があります。

 

⑶デジタル居場所:Tech Runwayを終えた高校生の居場所として、そして困難を抱える中高生への継続的な支援を行う。十三のよどがわBase、東京にも同様の施設を2024年に開設する予定です。

 

⑷実績

・プログラミング体験会 1,236人

・プログラミング参加数  640人

・PC寄贈企業数 21社

・PC寄贈台数 1,000台

 

⑸スタッフ数:常勤 11名 非常勤 25名  ボランティア― 30名(2024年3月)

 

⑹課題へのアプローチと自走支援モデル

Step1: 出会う。困難を抱える中高生と出会い、デジタルを身近に感じてもらう。

Step2: 学ぶ。Tech Runway、Tech Runway+等でプログラミング学習を行う。これにより、選択肢を拡げる事ができる。

Step3: 実践する。プロになるためのITスキルの実践で習得。Be Pro、クエストと言った制度も用意されている。

Next Step: 自走する。インターンシップに参加する。巣立ちと独り立ち。

*上記の過程で、食糧支援、居場所支援、学習支援、就労支援等、個々の事情に応じて対応することとしています。

 

⑺一人暮らしを希望する若者が多い。それは自走という点で重要ですが、キチンとリスク管理ができていないことが多い。どういった費用が発生するか、どういう困難に直面するかといった具体的な情報を事前に与えて、柔軟に対処できるようにアドバイスしている。

 

 

4.最後に

いろいろな事例を挙げてきたように、貧しく厳しい環境の育った子どもたちが、我々CLACKに来て良かった、人生を変えることができたという人を、一人でも多く育てたいと思っています。子どもたちが、生まれ育った環境に関りなく、別の次元のワクワクした人生を送れるよう、今後とも支援していきます。そのためには資金が必要で、多くを寄付、中古のパソコンなどの現物供与を受けているのですが、皆様の中でこういった活動に共感を覚え、CLACKに協力しようと方は、下記のQR Codeから寄付をして頂くと大変有難く思っています。よろしくお願い致します。

マンスリーサポーターの申し込みはこちらQR

 

 

 

 

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質疑応答

質問者  橋口喜朗さん 78期

Q:感動的な話をして頂き有難うございました。お金を払ったからと言ってITでうまく行くとは限らない。これまでに実績で、どれぐらいの成果があったのですか。

A:Tech Runway(TR)は、年3回、15名ぐらいの少人数のクラスで実施している。高校中退の子どもも多いのですが、一般に15人中、14人はやり切れている。但し、TRを終えたと言ってもすぐにエンジニアになれるわけではない。また、高卒ではITの世界で生きていくのは難しい。従って、半分は進学して情報を学ぶ人が多い。残り半分は、プログラミングは好きということで、学習意欲が増して、いろいろな分野に進んでいる。上智に進んで法律を勉強している学生もいる。

 

Q:どういう企業が、どういう目的で寄付をしているのか。また、行政の支援を受けていますか。

A:寄付は、民間や民間の財団、個人からが多い。行政からは援助を受けていなし。稼いでいる以上、社会に貢献するのが当然という意識のある企業、特に外資系のIT企業にその傾向が強い。CLACKの方から企業にお願いして、援助を得ている場合もある。これによりCLACKとしても企業との繋がりを作ることができます。パソコンなども、中古であるが寄贈してもらっています。中古でも十分に使えるものです。

 

質問者 菅さん 97期

Q:本当に素晴らしい話しで、感動した。どういう伝手から、援助を必要としている子供を見つけてくるのですか。

A:行政からの情報が一つで、例えば不登校の生徒など。また、子供食堂に通っている子供。そして、商業高校、工業高校、通信制高校等からも情報を得ます。

 

質問者  稲垣京子さん 94期

Q:中学校の教諭をしているが、学校内、外に3か所ぐらい不登校のための居場所を作っているが、有効に使われない。つまり、子どもがやって来ない。平井さんの場合、どれぐらいの期間、どういった密度で子供と接して、効果を上げているのですか。

A:基本的には子供の意思で我々の制度、施設を利用している。時間の長さというよりは、接し方の方法、密度によると考えています。そして、その中で変わることができる子は変る。我々の施設の中では、仲間とおしゃべりをして、それぞれ好きなことをやっている。親や教師が言ってもダメでも、外部の人間だと素直に受け入れるということはありますよね。

 

質問者  多賀正義さん 76期

Q:よどがわベースについて、企画と目的について詳しく説明してくれませんか。

A:Tech Runwayを卒業した中高生は、卒業すると日常的に行く場所がなくなるので、仲間とのコミュニケーションも滞りがちとなる。これを解消するために、いつでも、誰とでも集まって、話合える居場所を確保しようと、十三の木川通りにあるシャッター通りの店舗を借り受けて、そこをよどがわベースとして、中高生に時間を決めて開放している。パソコンを置く、漫画本を置く、アニメ等の映像を置く、キッチンがあって食事が作れる等で、子供たちが仲間と楽しく過ごす場を提供している。

詳しくは、VI.事前宣伝にあるURL: https://www.youtube.com/watch?v=amPwECtMCJI を参照ください。

東京でも、ミクシー財団から多額の援助を受けて、同様の施設を2024年に開設する計画です。

 

質問者  今井美登里さん 80期

Q:利用者の男女比は、どれぐらいの比率ですか。

A:よどがわベースの中高生では、男:女=8:2、プログラミングで半々、ITやロボット系では男の方が多い。

 

質問者  三谷秀史さん 82期

Q:会計報告によると地代家賃が安いが、この理由は何ですか。実は東京六稜会でも自分の事務所を持ちたいが、家賃が高くてオフィスを借りる余裕がない。

A:12、3万円/月です。企業のオフィスの夜の時間を借りる等、企業の余っているリソースを活用している。公民館なども利用している。2023年からよどがわベースができて、この比率は上がるでしょう。

 

質問者  引野えみさん 94期

Q:スタッフはどのようにして雇用しているのですか。

A:教育、福祉、Social Workerのような経験のある人が転職してCLACKに参加する人が多い。行政とか教育機関から応募する人も多い。男:女=4:6というところです。いろいろな専門家と連携体制を取り、必要なら彼等より情報を入手する、あるいは相談する。

 

記録:多賀正義(76期)

Ⅷ.資料 講演に使用したPPTのPDF:認定NPO法人CLACKの説明資料1東京六稜会登壇資料 3月20日平井大輝さん