【248回】8月「「役割語」と翻訳、村上春樹のことなど」

金水 敏(きんすい さとし)さん@87期(放送大学大阪学習センター所長、大阪大学大学院文学研究科名誉教授。日本学士院会員)

<講演要旨>
役割語とは、主にフィクションで登場人物の年齢、性別、職業、出身地等によってあらかじめ予測される話し方のスタイル(語彙、文法、音調等の組み合わせ)のことを指す。役割語は日本語による創作物には必ず使用されていると言ってよいが、特に翻訳や吹き替え等では男女の性別が強調されて表現される傾向にあり、そのことに対する批判も聞かれるようになってきた。さらに、自ら翻訳をよくする村上春樹は、自分の小説の登場人物にあたかも翻訳作品のようなスタイルで話させることで独特の小説世界を生み出している。これらの事例を紹介しながら、日本語の現状と将来について皆さんと考えていきたい。

<略歴>
1956年大阪生。六稜同窓会87期卒業生。放送大学大阪学習センター所長、大阪大学大学院文学研究科名誉教授。日本学士院会員。大阪女子大学助教授、神戸大学助教授、大阪大学大学院人文学研究科教授等を経て、2022年より現職。専門は日本語の文法の歴史および役割語研究。主な著書として、『ヴァーチャル日本語 役割語の謎』(岩波書店、2003年。2023年に岩波現代文庫から復刊)、『日本語存在表現の歴史』(ひつじ書房、2006)、『コレモ日本語アルカ 異人のことばが生まれるとき』(岩波書店、2014年、2023年に岩波現代文庫から復刊)、『〈役割語〉小辞典』(研究社、2014年)ほかがある。