【第179回】11月「人工知能と人間」

Ⅰ.日時 2017年11月15日(水)11時30分~14時
Ⅱ.場所 銀座ライオン7丁目店6階
Ⅲ.出席者数 91名
Ⅳ.講師 北橋忠宏さん@69期 (大阪大学名誉教授)
大阪大学工学部卒、工学博士。大阪大学助手、豊橋技術科学大学助教授、教授を経て大阪大学・産業科学研究所教授、大阪大学名誉教授。人工知能学会創設委員、電子情報通信学会フェロー
Ⅴ.演題 「人工知能と人間」
Ⅵ.事前宣伝 「人間にのみ許された知的な仕事だと考えられることをコンピュータが人間以上の出来栄えでやってのける、そのような事例が頻に報じられている。
日本では芸能とも見なされる囲碁・将棋では、予想よりも早期に、それぞれの技の国内外の最強の棋士が破れた。また、理詰め判定での知識発見が顕しい医療の分野でも、最高権威に勝る診断と治療指針を示した事例もよく話題に上る。このままでは、人間が挑戦者として立ち向かっている分野を尽く、コンピュータが人間を凌駕するのではと、異質な知性体の誕生の不気味さがよぎる。しかし今のところ、囲碁・将棋でさえ同一のシステムではなく、自動診断システムはこれらとシステムの構造さえ違っている。一人の医療の権威が余暇に囲碁を嗜む風情は、まだまだ人間の領域である。」
Ⅶ.講演概要 ++-++-++-++-++ 北橋忠宏氏編 ++-++-++-++-++ 

(1)人工知能って、急に騒がれ出したのは何故かDeep-Learning(深層学習)[=大脳視覚領域の神経回路網を参考にした(超)多層模擬神経回路網を用いた超大量データによる学習] が予想外のパターン識別能力を示したことによる。画像・音声・文の認識ができる。

(2)これまでの人工知能と何が違うのか

大脳の一部(視覚領域の神経回路網)の構造と学習方式を真似たシステムをコンピュータ上に実装して、予想以上の学習能力を示したこと。

(3)(人工知能は)人間とはどう違うのか

・ 人間 : 一つ身で多彩なことが そこそこ できる
・ 人工知能 :意図されたことは迅速に見事に遣り遂げるが、それ以外のことはできない。

(4)今後どうなっていくのか

明確には分からない。一つの人工知能システムが多彩な課題に対処できるための鍵となるアイデアは今のところ知られていない。また、見つけ出せる見込みが立ちそうにもない。現在の有力な方式として、2つの方略がある。

1.IBM が推進する Watson というシステムの応用
長所:導かれる結論の理由を説明できる。
短所:予測される範囲をそれほどは越えない。

2.巨大IT企業が推進する Deep-Learning の応用システム
長所:応用の工夫次第で、予想外の弁別能力を発揮する。
短所:得られた結論がどうして得られたのかは説明できない。
++-++-++-++-++ 峯和男氏編 ++-++-++-++-++

1.
今回もスクリーンに映像を映しながら詳しい説明があった。また、出席者にはそれと同じ図解入りの詳細なレジュメが配布された。
詳しいレジュメの内容に鑑み、その中の一部を抜粋して以下に記述することとした。

2.
最初に、ホテルの受付に制服を着たロボットの映像が映し出された。
産業用ロボットは、指示された通りのことを正確に繰り返すことが出来る。

3.
ネット販売においても商売上手である。書物をネットで買った場合、次のような本も・・・と関連した本を勧めてくる。上着を買った場合は、このスラックスや帽子は如何?・・・と一味違う。顧客を特定し、個人情報を利用できる。

4.
IBMの人工知能システム(人工知能はAIと略記)Watsonは、全米のお昼茶の間で人気の早押しクイズ番組で、連勝していたチャンピオンに勝利した。

5.
クイズ番組で回答を求めるには:

(1)問題を聞き取り理解する→音声・文字認識、文章理解
(2)解を求める:推論・判定、情報探索
(3)分野に応じた情報:テーマ別データベース

システム構成:(1)言語処理+(2)推論判定+(3)データベース

(1)と(2)は多くの課題に共通

応用システム:店舗用→服飾店 医療用→医療診断 銀行用→窓口・貸付業務

<二世代前>パターン認識=文字認識:郵便物の表書きの認識etc.
<一世代前>ルールベースシステム

1988:宛名自動読み取り・区分機
1998:郵便番号7桁化。配達順並べ替え自動化
音声認識:国会議事録の自動化(2011,4)

辞書:新聞記事→ケータイ・SNS用語

<今世代>ビッグデータ:深層学習(ネットの時代)・・認識率向上
1998:深層学習による手書き数字読み取り(カナダトロント大)

今世代のAI知能ブーム:
囲碁のプロにも勝利:アルファ碁:深層学習
自動走行車:トヨタ、ベンツ、BMW・・・ではなくGoogle

ロボット:操作の自動学習
・深層学習の進化
・衝突回避ハンドル捌きを自動学習

<AIシステム実現への二つの方略>

IBM:知識ベース型AIシステム:知識べースを人手で個別に作成→結論を説明できる。システム暴走の危険なし
Google,MicroSoft,Amazon,Facebook etc.:深層学習型AIシステム→ビッグ

データが不可欠だが、思いがけない大局的判断が期待できる=理論は不明!

工学的いいとこ取り!

米国企業:IT・ネット系の巨大資本
日本企業:産総研、理研に研究所、先進的ベンチャー

  • AI絡みの二つの脅し

Ⅰ)シンギュラリティ:AIの独走
自律成長型AI:深層学習システム
時代変遷の指数関数的短縮

Ⅱ)孫の世代、仕事の半分はAIが代行!=安定的な作業はコンピュータに置き換わる=AIシステムの高い性能

AIに代替されやすい(日本での)仕事:マニュアル通りの業務
AIに代替されにくい(日本での)仕事:

個人的な発想を要する業務。サービス・ロボットによるサービス産業の生産性向上。 目新しさによる集客力

AIと人間:

人間:多彩なことがそこそこできる AI:定番業務は見事にできる

1)幾つものAIをつなぐAI
2)意思決定:多彩な因果関係のその時々の重要性を読み解き順序付ける
3)自動掃除機:ごみと貴重な小物との識別
4)留守番機:定番業務に非定番業務の割り込み、非常事態の発生、重要性と処置判断。
5)人工物の知性・感性=対話システムとのやりとり。「らしく」見せる・振る舞わせるが、喋りの因果関係は無頓着・・・その喋りの論理的一貫性は保証できない

AIと人間の知識:

人間:環境の中で身体で獲得する
AI:一つの文脈で、記号列として届く:

言ってることが下界と矛盾しない保証。文字で書けても実態を伴っていない。自己主張の根拠が不確定。論理の通った長文は作成困難。小説は書けない。

手足、感覚器官をもつロボット:
外界を観察でき、外界に根差した言動が可能
外界に合った発想・発話・振舞い=外界構造の確認手段の保有。施行実験と検証の必要性。書いた、考えたことを外界で検証。
自己検証:自発的知識獲得。自発的成長性

AIによる環境知力の増大:
思考力の低下・弱体化:受け身・・自己知力の弱体化
思考力の新生・活性化:能動・・・異種(想定外)の刺激との遭遇
知能の可逆性

もっと気になる噂が・・・近い内に、現在の仕事の半分は、AIが代行する!
AIでどうしてそういうことに
AIの能力が爆発的に進化・・超人間的知能

自律成長可能なシステムの一構成法:
アルファ碁の第2段階:自己対局:無限発展の一形態
シンギュラリティの可能性?
完全情報ゲーム→千日手以外は必ず終局?
ゆえに、無限に発展することはない

(人工物の)感性→感性:外界認識の鋭さ 鋭さ:認識の正確さ、速さ
独創性:鋭い感性と意外性  意外性:推論の正確さ、速さ
認識:推論の正確さ

産業の今後:
本来は移動手段、安全な移動が優先:ライドシェアも広がり車の所有意欲が減り、車の運転は贅沢行為に?
車の90%は動いていない、いわば不動産。
20年もすれば、自動車産業から移動サービス産業へ産業構造ががらりと変わる可能性がある。

米国のAIやIT企業は、自ら主導権を握って自動車産業を再編し、新たなサービス体系を作ることにエネルギーを傾注。

これからも人間は、個性豊かで、未来を拓き未来に続く仕事

結局、人間らしく生き、自他をともに重んじ、知性を尊び、感性を研ぎ、自分を生きることであろう。

(文責:65期 峯 和男)

以   上

Ⅷ.資料  web-人工知能と人間.pdf (2MB)

 

 

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