【第166回】10月「フリーアナウンサーの 生き方 話し方 仕事の仕方」~7年間のNHK「ニュースウォッチ9」時代を振り返って~

Ⅰ.日時 2016年10月19日(水)11時30分~14時
Ⅱ.場所 銀座ライオン7丁目店6階
Ⅲ.出席者数 67名
Ⅳ.講師 阪田陽子さん@97期 (フリーアナウンサー、NHK「ニュースウオッチ9」ニュースナレーター)
奈良女子大学文学部卒
(株)テレビ神奈川の局アナを経て、夫の仕事の関係で退職。渡印。
8年の専業主婦生活の後、第二子出産を機にフリーアナウンサーとして復帰。NHK、フジテレビを経て、夫の職場先に渡米。
帰国後、「NW9」にニュースナレーターとして採用、2016年3月まで勤務。
現在はNHK「ニュースチェック11」にて3週に1週ナレーションを担当。(株)ビジネス・ブレークスルー「リーダーシップ・アクションプログラム」講師。大学院修士課程2年在籍中。
Ⅴ.演題 「フリーアナウンサーの 生き方 話し方 仕事の仕方」~7年間のNHK「ニュースウォッチ9」時代を振り返って~」
Ⅵ.事前宣伝 「何気なく見ているニュース番組。その舞台裏、見えないところで繰り広げられるバタバタ劇…NHK全国中継の報道番組で、政治と皇室ニュースを生で読める、唯一のフリーアナウンサーとして仕事をしながら、その間、経験してきた、親の介護、葬儀、子供の受験などなど…様々なライフイベントに向き合ってきた奮闘記。これからの働き方を考えながらお伝えできれば幸いです。」
Ⅶ.講演概要 (今回もパソコン使用により映像を映しながらの説明であった)講師は、先ず高校時代の「赤点」の話から始めた。物理、化学、数学などが苦手でようやく卒業できた。

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この東京六稜倶楽部には、100回目から参加するようになったが、アナウンサーなら司会をやるようにと言われ、司会をするようになった。

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☆アナウンサーの仕事:

(1)アナウンサーは原稿を読むのが仕事。放送局には、局アナとフリーのアナがいる。局アナは、権力争いはあるが安定している。一方、フリーアナは実力勝負であり、一般的には33歳が定年と言われている。定年になれば、当然働く場を失う。契約は3か月、1年などがある。事務所から派遣されているので、嫌になったからと言っても事務所に迷惑がかかるので自分からは止められない。フリーアナウンサーは、休めない、代わりがいない、失業手当もないという厳しさである。フリーアナも2極化しており、古舘氏のような売れっ子になれば億単位の年俸になるが、普通は大体平均以下である。

(2)人間万事塞翁が馬{人間(「じんかん」と読む)=世間という意味}ということを常に実感しながらオーディションを受けていた。小さなオーディションに落ちたがゆえに、大きな番組のオーディションが飛び込むこともある。しかし、やはり「落ちる」というのは辛いもの。アナウンサーには「鋼の心」が必要である。様々な経験をすることが出来たことは自分にとって幸せであった。

(3)アナウンサーにとって大切なのは事前の準備である。9時の放送前には原稿をチェックする大切な仕事であるが、原稿がなかなか出てこない。毎回、ほぼ初見で読まなければならないほど原稿が手元にくるのは遅い。

(4)放送は9時からでも、通常は5時に出勤して事前チェックをするが、原稿作成者の間違いもあるので、十分な注意力が必要である。「敵は味方の中にいる。失敗は自分で防ぐ」と心がけている。

(5)本番中は、大変な集中力が必要である。特に焦った時ほど「ゆっくり」読むことが必要。放送直前には息を大きく吐いて深呼吸する。アナウンスの中で小さな言い間違いは起きるが、全国放送のため、そのプレッシャーやストレスは計り知れないほど大きい。しかし、言い直しをしたあと落ち込んでいるとその後の集中力に影響するので、自分にプレッシャーを感じたら、その時は「噛んでも死なない」と自己暗示をかける。

(6)17時出勤、23時帰宅というこのような仕事を、2009年7月1日から2016年3月25日まで続けた。

(7)今年の4月25日からは、「ニュースチェック11」でナレーションを担当しているが、45秒から1分の原稿を読む仕事なので、反射神経が必要である。この仕事は、20:00出勤、番組終了23:55、0時20分ころに「お疲れさま」となる。深夜に及ぶ仕事で泊まり込みもあり得るので、局の廊下などに布団が置いてある。

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☆ビジネス・コーチの仕事:
ビジネス・ブレークスルー大学でビジネスコーチの仕事を始めた。

(1)コーチングのポイントは:
イ)言語教示,ロ)モデリング、ハ)経験 であり、本人のレベルに合わせてコーチする。イ)については、良い行動を褒める。
すごーい。優秀。今日は一番良かった。など、正のスパイラルで明るい職場にすることが肝要である。

(2)やる気があるから「行動」がおこるのではない。「行動」が良いことだと褒められたり認められたりするために「やる気」が出るのである。やる気だけあっても、何をしてよいかわからなければ行動にうつせない。例えば「子供に勉強する気がみられない」という「やる気」は、親の言い方が良くない。具体的にどのような行動が「やる気」なのか言ってあげないとこどもには伝わらない。こどもは本当は「やる気」はあるのかもしれない。しかし、親の「やる気」と子供の「やる気」の定義が違っていると、うまくいかないものである。まずは「どのような行動がやる気なのか」具体的に示すことが大切。その場合「ことば」で話して、どのようにするのか「モデリング」してあげて、最後は「経験」させてあげないと、身につかない。コーチングは「トレーニング」である。その人に合ったレベルから始めて、徐々にハードルを上げていくことが、上達の近道である。

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☆話し方の極意:

(1)ポイントは自分の言葉で言うこと。プライベートな話し方、オフィシャルな話し方の区別をはっきりと。

(2)単一民族の故にお互いに共通認識があると錯覚、オフィシャルにもかかわらず「察して」「空気読んで」といった言い方が多く、論理的な話し方ができていない人が多い。三角ロジックである「クレーム(主張)」「データ(情報・事実)」「ワラント(論拠)」をきちんと述べなければならない。

(3)一方、プライベートでは、しっかり主張せず、気持ちを乗せて言うことも肝要。論理的に喋ってしまうと鬱陶しがられてしまうことも。ただし、何かお願いするときなどは、「親しき仲にも礼儀あり」、「有難う」という言葉はきちんと言うべき。しかし、それが言えない人もいる。その場合には、「助かったよ」と言えば良い。自分の気持ちはそれで相手に伝わり良い方向にもっていくことが出来る。

(4)他人は、自分の「気持ち」は見えない。ではどうして「あの人は○○な性格だ」と評価するのか?それはすべて「行動」をみて評価している。その場に相応しい行動を起こしたり言葉を話すことこそが、円滑な人間関係を送る秘訣である。会話は、いかにその場に相応しい言葉を発するか、ということが重要。どのような気持になるか、ではない。感謝の気持ちがあればそれに越したことはないが、感謝の気持ちがない場合でも「有難う」と伝えることで、相手は「この人は感謝してくれた」と思ってくれる。自分に嘘をつくのではなく、いかにその場に相応しいことばを発する行動ができるかどうかが重要である。

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☆女性の人生選択:

(1)自分はこれまで第一志望が叶えられないことが多かった。大学も東京の大学を希望していたが、結局、奈良の女子大に入学。→奈良のイベントや勉強会に呼ばれる

(2)就職もNHK,フジテレビなどを希望していたが「テレビ神奈川」に入社。→最終的にフリーランスで希望がかなった

(3)結婚して、夫と共にヨーロッパ勤務を志望地していたが、インド勤務になった。→ニッチがゆえに、現在、需要がある

(4)子供は男子を望む声が多かったが、結局女子2名を出産。→今は女子を望む声が大きくなってきた

(5)OLを希望していたが、結局「つぶしが効かない」アナウンサーになった。→つぶしはきかないが、おかげさまで今、専門職として仕事がある

(6)NHKの番組に採用された時も、最初のオーディションでは呼んでもらえなかった。しかし適した人がいなかったということで2回目のオーディションで呼ばれての採用であった。どうして採用されたのか後に採用者に聞いたところ、「試験の時、一番漢字が読めた」という理由であった由。何が幸いするか、人生はわからない。

(7)バブル時代の結婚は3高(高収入・高身長・高学歴)が流行っていたが、そんな流行を追わない結婚だった。出産時もDNKSが流行っていたが、構わず出産を貫いた。子供が小さくて仕事をすることに後ろ指を指される時代にも復職した。(1)~(5)の全てにおいても、「イマイチ」という結果が、のちに全て自分に良い影響を与えてくれるご縁となっている。これらの経験から自分が感じていることは、「幸せは絶対値」「幸せを相対値で見ない」ということ。「自分が幸せ」と思える選択・決断こそが、自分にとって「正しい道」なのである。

Ⅷ.資料 なし

 

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