2023年度大阪府立北野高等学校 創立150周年 記念式典・記念総会・祝賀会のご報告

阪神とオリックスによるプロ野球日本シリーズの初戦――59年ぶりの関西球団同士の対戦に、大阪の街が熱気に包まれていた2023 年10 月28 日(土)。中之島のリーガロイヤルホテルでも、負けず劣らずの一大行事が挙行されました。我らが母校・大阪府立北野高等学校の「創立150周年記念式典」および「六稜同窓会150 周年記念総会・祝賀会」です。翌29日から1週間開催された150周年記念展示とあわせて“ 北野史上最大のイベント”となった行事を、担当期104期の視点を交えて振り返りたいと思います。

2300人参加で超満員御礼

その日、会場のホテル周辺はおびただしい数の警察官によって厳戒態勢が敷かれていました。ちょうど同日「G7大阪・堺貿易大臣会合」が隣接する大阪府立国際会議場で開催されるためでした。しかも記念式典への参加者は、同窓生約1300人に、在校生・教職員約1000人を加え、なんと約2300 人! 140 周年の総会参加者約450 人の3倍もの同窓生が集い、当初の想定をはるかに超える大式典となりました。 さしものリーガロイヤルホテルも、厳戒態勢下でこれほどの行事は初めてだったそうで、前日までホテル、大阪府警、高校と何度も協議を重ね、無事故の運営に最善を尽くしました。当日は参加者全員に手荷物検査と金属探知機によるチェックを受けてもらうことになり、10 時受付開始から11時開幕まで1時間以内に2300人が無事に着席できるかが最初の難関に。104 期は8 時から会場に集まり、約70 人の役員態勢で、誘導・受付などに当たりました。3階「光琳の間」へ延々と続く参加者の列。しかし、この最大の会場のキャパも優に超える参加者だったため、400人余りは第2会場「桐の間」で中継モニターを視聴していただくことになりました。開幕に先立って、真宗大谷派・大谷暢裕第26代門首からのビデオメッセージが上映されました。北野高校の歴史は150年前、難波御堂の敷地内に開校した欧学校から始まりますが、この難波御堂は真宗大谷派の寺という縁で祝辞を頂いたのです。大谷門首は英語で話されましたが、当時の欧学校が授業も日常会話も全て英語だったことに因んで「では、英語で話しましょう」となったそうです。さらに150 周年記念事業の紹介動画に続いて、150人で歌う校歌リレーが映し出されました。世代を超えて繋がる歌声に多くの方が胸を熱くしたと思います。

吹奏楽部のファンファーレで開幕!

続いて、北野高校吹奏楽部のメンバーが舞台へ。世界的に活躍するヴァイオリニスト・高木和弘さん(103期)も加わり、式典の開幕を告げるファンファーレを雄壮かつ華やかに奏でました。
そして、司会の朝日放送テレビ・齋藤真美さん(119期)が登場すると、ひときわ大きな拍手が。人気、実力ともに関西ナンバーワン・アナウンサーに、第1 部の記念式典から第2 部の総会・祝賀会まで務めていただき、司会周りは何の憂いもなく、本編へと入っていきました。天野誠校長は「開会の言葉」の中で、幾多の困難を乗り越え、150周年記念事業を成し遂げた歩みに「北野の同窓会の驚嘆すべき底力を見ました」と力説。現役生に向かって「いつものように四字熟語を送ります。『雲外蒼天』!」と結ぶと、生徒の間にドッと歓声が上がりました。続いて挨拶に立った、六稜同窓会・野村正朗会長(82 期)は150 周年記念事業への多大な尽力に深謝しつつ、「この記念事業が、新たな六稜魂の糧となり、北野ブランドをさらに高め、世界に貢献する人材が養成されることを切に願います」と、母校の新たな歴史の開幕に期待を寄せました。次いで来賓を代表し、大阪府教育委員会・橋本正司教育長が祝辞を。府立高校で10 校のグローバルリーダーズハイスクールの中でも、北野高校が学内留学や海外の高校生とSDGsをテーマにディスカッションする国際会議の実施など多彩な取組みでリードしていることに言及し、「現役生の皆さんは、素晴らしい環境を存分に生かし、多様な分野で活躍する人材に育ってほしい」と念願されました。

六稜倶楽部などの目録を贈呈

続いて六稜同窓会から母校へ目録贈呈。早嶋茂副会長(87期)が六稜倶楽部と同窓会館のICT 設備・空調設備の目録を読み上げ、天野校長に手渡しました。これを受け、在校生を代表して生徒自治会生徒会長の藤井陽向さんが壇上へ。「これだけの設備を揃えていただいたのは、先輩方から私たちへの期待度の高さの表れだと思います。大切に使わせていただき、自分自身をさらに磨き、後輩に伝えていきたい」と謝辞を述べました。 そして、いよいよノーベル化学賞受賞者・吉野彰博士(78期)の入場が司会から告げられました。

吉野彰博士が記念講演

吉野博士は会場中央の扉から、在校生と触れ合いながら壇上へ。大きな拍手に包まれる中、「リチウムイオン電池が拓く未来社会」と題する記念講演を始められました。 冒頭、母校での思い出として、断郊競走で「生まれて初めてランナーズハイを経験した」と述懐。途中、苦しくてギブアップ寸前になったが、そこを我慢して走り続けると急に楽になり、ゴールできたと振り返ると、会場に共感の笑いが広がりました。このエピソードは“ 苦しい時を乗り越えると楽しくなり、やがて目標に到達できる” という講演全体を貫くテーマでもあり、続いてリチウムイオン電池の商品化までの苦労を語られました。さらに、2019年のノーベル賞受賞理由には「リチウムイオン電池の発明が現在のモバイルIT 社会の実現に大きな貢献をした」ことと「今後のサステナブル社会実現に大きく貢献することへの期待」の2 点があったことに触れ、未来を展望。2025 年、2030 年、2050 年の3 つのマイルストーンを示し、日本がリーダーシップを執り、日本が生んだ技術によってサステナブル社会が実現したと言われる挑戦を訴えられました。
そして、若い世代に期待を寄せつつ、“ 苦しいこともあるだろうが、ランナーズハイで頑張ってほしい” とユーモアを込めて講演を結ばれました。

「未来先導宣言」と新制服の紹介

生徒自治会会計・宮嶋優太さん、水飼拓人さんから吉野博士へ花束が贈呈された後、生徒自治会副会長・安高茉優さんが「未来先導宣言」を発表。誰一人取り残さない社会、世界平和の実現へ、一人一人ができることを考え、他者を慮り、行動することを表明し、「先輩方が連綿と紡いできた歴史と六稜魂を大切に、次世代に繋いでいきます」と力強く宣言しました。 続いて、生徒一丸となって作り上げた新制服の紹介へ。“ 誰もが着用しやすい制服” を目指し、体型に合わせて選べるジャケットに、ボトムスもスカートかスラックスを自由に選択するもの。伝統の上に、個性と多様性を尊重し合う母校の新たな飛躍を感じさせる制服でした。最後に、北野高校オーケストラ部と高木和弘さんの演奏で、全員で校歌を斉唱した後、記念撮影。吉野博士には第2会場にも移動していただき、全員がカメラに納まり、第1部は幕となりました。

第2部の六稜同窓会総会・祝賀会へ

続いて第2 部の六稜同窓会150 周年記念総会・祝賀会へ。20分間で2300人が大移動する運営上、第2の難関でしたが、ここも参加者の皆さんの整然とした行動のおかげで無事にクリア。“ やっぱり北野生、すごい! ” と感じ入りながら、開宴の時を待ちました。第2 部もメインの「ロイヤルホール」には収まり切らず、次の間のラウンジ、さらには「光琳の間」と3室を使ってモニターで中継することに。野村会長の開宴の言葉に続き、大阪府立学校長協会・澤田佳典会長が祝辞を。「豊かな人間性、学力と心身の逞しさを併せ持つ人材を輩出し続けてきた北野高校の益々の発展を
念願します」と語られました。 続いて、吉野博士に発声いただき、高らかに乾杯。これを合図に、堰を切ったように皆が動き出し、テーブルを囲んで食べて、飲んで、喋って、会場の熱気はグングン高まっていきました。とにかく広い会場に人、人、人。知り合いを探し出すのに誰もが苦労したことでしょう。それでも、そこかしこで懐かしい友との思い出話に花が咲いていました。歓談の間、吉野博士と司会の齋藤さんは「一緒に写真撮ってください」攻撃にさらされ続けていました。食事をする間もなかったでしょうが、二人ともずっと笑顔で応じられ、願いが叶った皆さんは大満足の様子でした。舞台は式次第に戻り、六稜同窓会・笹川忠士事務局長(74 期)が同窓会報告。150 周年記念事業への協力に感謝を述べた後、明治期の本校の動向を伝える貴重な「学事年報」(約800 ページ)を富士フイルムホールディングス株式会社が電子化し、複製も寄贈されたことを紹介し、同社の助野健児取締役会長(85期)へ感謝状が贈呈されました。

高木和弘さんのアンサンブル

六稜同窓会・太田省三副会長(東京六稜同窓会会長 77期)の挨拶に続いて、高木和弘さんを中心とするアンサンブル「Salon de Sasanoha」の皆さんが合奏を2曲披露。吉野博士をはじめ多くの方が熱心に聴き入っていました。 実は、高木さんたちは第2部開始まで参加者が移動している間もずっと生演奏し、総会に華を添えてくださったのです。実に贅沢なBGMでした。 続いて104期の企画へ。例年は担当期の最大の仕事であり、総会の重要な一コマですが、今回は豪華盛りだくさんの式次第。「サクッと終わって、運営に全力を注ぐのが私たちの使命」と早々に悟り、企画では104期がどんな学年だったかなどを駆け足で紹介。そして“ 縄跳びに挑戦! ” と、有志3人に懐かしの縄で二重跳びの回数を競ってもらって、おしまいとしました。“優勝”は鷲見菜月さん(125期)でした。
その後、株式会社髙松コンストラクショングループ・髙松孝之取締役名誉会長(68 期)の創立150周年事業への功労を称えるセレモニーを。拍手の中、六稜同窓会から感謝状が代理の関西電力株式会社・藤洋作顧問(68期)へ贈呈されました。次いで来年度担当期の105期生が舞台に上がり、学年理事の清水憲明さんが抱負を語りました。

応援団エール&原譜演奏で校歌斉唱

総会・祝賀会もいよいよクライマックスへ。鎌田俊一先生(81期)率いる応援団OB・OG有志が登場し、佐々木功さん(91期)の先導でエールを送った後、岡野貞一が1915 年に作曲した原譜で「Salon de Sasanoha」が演奏する中、全員で校歌を大合唱しました。
続いて、早嶋副会長が「閉宴の言葉」を。コロナの蔓延期と重なり、様々制限がある中で、準備・運営を成し遂げた104 期を労われました。その104 期生全員が舞台に上がり、学年理事の新堂雄美さんと隈元友里江さんが感謝を込めて「閉宴の辞」を述べ、最後に、規格外の企画力と推進力で歴史的事業を遂行した立役者、佐野憲一150 周年担当常任理事(98 期)の音頭で“ 元気よく、愛情を込めて” 北野高校150周年の万歳三唱をし、お開きとなりました。 この後が運営上、最後の難関。完全撤収時間が迫る中、速やかに全参加者に退場していただき、漏れなく記念品を手渡しするのです。ここでも参加者の皆さんが快く協力してくださったおかげで、一切を無事故で終え、最後に104期で記念撮影をすることもできました。 <余談>記念品は、記念誌『北野百五十年』と『六稜かるた』、そして特製トートバッグでしたが、このトートが大正解! 開始前、山積みにしてセッティングしたのですが、紙袋ではできないこと。手渡しもしやすかったです。なお、160周年行事を担う114期の有志も手伝ってくださいました。
本稿の結びに、学年理事の新堂雄美さんのコメントを紹介します。 文責 平松和朗(104期)

壮大な構想を実現した「北野の絆」

記念式典、総会・祝賀会は当初の予想をはるかに超える参加人数で、運営上至らぬ点もありましたが、同窓生の皆様のご協力で大成功で終えることができました。本当にありがとうございました。
佐野150 周年担当常任理事の壮大なアイデアを運営・実務に落とし込むのが、学年理事の私と隈元さんの仕事でした。記念展も含め“ 本当にできるの? 誰がするの? ” と思うアイデアを「北野の絆」で実現することができました。
祝賀会が終わり、同窓生の皆さんが帰り際、「楽しかった!」「素晴らしかった!」と口々にお声掛けくださったことが、何より嬉しかったです。
これも同窓会理事・事務局、リーガロイヤルホテル、大阪府警の皆様、そして、同期104期の「北野の絆」と団結力の賜物だと思います。
私自身、このような貴重な経験をさせていただいたことに感謝申し上げます。   (新堂雄美)