【261回】9月『ネット情報時代の護身術「騙されないためのマーケティング講座」』

Ⅰ.日時 2024年9月18日(水)11時30分~13時00分
Ⅱ.場所 バグースプレイス パーティルーム
Ⅲ.出席者数 33名
Ⅳ.講師

津川 義明さん@79期

フリーランス・マーケター

1979年日本SPセンターにてテクニクス・オーディオのコピーライターとしてキャリアスタート。松下電器(現パナソニック)担当チーフとして、ロサンゼルス(84年)ソウル(88年)バルセロナ(92年)のオリンピック・キャンペーンを手がける。2001年よりITマーケティング・チーム主幹として、パナソニック「つなぐともっと面白い」(01年)「探検キッズ」(02年)「ものづくりスピリッツ発見マガジン・イズム」(03年)等のサイト構築をプロデュース。2008年デジタル絵巻(縦書き)プロジェクトリーダー。2012年シニアマーケティング研究室室長。2013年よりフリーランス。著作に「戦略的クロスメディアマーケティング」(03年)「羊をめぐるマーケティング」(06年)。大阪大学基礎工学部制御工学科卒(76年) 。大阪在住。

Ⅴ.演題 『ネット情報時代の護身術「騙されないためのマーケティング講座」』
Ⅵ.事前宣伝 2000年には広告費全体の40%がテレビ広告でした。2019年にインターネット広告がテレビを超え、2021年にはマスコミ四媒体広告費を上回りました。広告メディア(テクノロジー)の変化は、マーケティング(テクノロジー)の変化に直結しています。ネット時代のマ―ケティング(テクノロジー)のメリットを簡単にゆうと、「企業は大量の(商品)情報を安価に発信できるようになり、消費者は受け取る(商品)情報が増えて選択肢が広がる」ということです。しかし、このメリットは、「企業は大量の(偽)情報をたやすく発信できるようになり、消費者は受け取る(偽)情報が増えて騙されやすくなる」とゆうダークサイドも、たやすく抱えこむことになります。多くの企業が、このダークサイドに落ちて消費者をいかに騙そうかともがいているのが、ネット情報時代の、ぞっとするけれども避けられない現実です。本講座では、現代マーケティングの手法を学び、騙しのテクニックを知ることで、「騙されない商品選び」だけでなく「騙されない情報選び」を身に着けていただきます。
Ⅶ.講演概要 ・山上芳昭さん@79期からの津川さんのご紹介。津川さんは小学校からの幼馴染。歴史、地学、スポーツ等何事にも博識で我々の仲間では「情報室長」と呼ばれている。昨年150周年記念事業があったが、北野中学からの歴史を巡るツアー等も企画され大阪の皆さまが楽しみにされている。連休に断捨離を行い相当なものを捨てたが、良く飛ぶドライバーや背の伸びる健康器具等、TVやスマホを見て注文したものがある。津川さんの専門の話を聞くのは初めてだが、何故こういうものをついつい買ってしまうのか、騙されないようするにはどうすれば良いかを本日聞けるのを楽しみにしている。

第1章:マーケティングて、なに?(マーケティングの進化)

 

1.ビジネスとは

「使用価値」から「交換価値」が発生し、交易が始まった時に「ビジネス」が生まれた。「商品」も「顧客」も同時に生まれた。ビジネスとは顧客の創造である(ドラッカー)。

 

2.マーケットとは

「商品」の移動を担う者(企業)、つまり、「生産者」と「消費者」をつなぐ者(企業)を「流通者」と呼ぼう。「マーケット」とは「流通者」の活動範囲、すなわち、「商品」「顧客」が分布する範囲であり、「マーケット」は「流通者」が登場した時に生まれた(日本では縄文時代、たとえば、隠岐の島特産の黒曜石の分布範囲)。

 

3.マーケティングとは

交換価値を生み出すものは商品の「情報」であるから、モノを売るには「情報」(たとえば、「サントリー天然水奥大山」)が必要不可欠である。「マーケティング」とは、従って、「情報」を「マーケット」に届けることに他ならない。「マーケティング」は「マーケット」と同様、「流通者」が登場した時に始まった。

 

4.メディアの誕生と進化

1)マーケティングを有効にするものが「メディア」

メディアは、口コミ(縄文時代からのメディア)→印刷物→TV→Webと進化してきたが、Webを含むネットメディア(SNS等)も実は口コミ(のマス化)。口コミはいつの時代でもマーケティングの王道である。

2)マーケティングは変わらない。テクノロジーが進化する

テクノロジーの進化に伴い、同時に届ける情報量が多くなり費用が安くなる(費用対効果が高くなる)。現在のメディアの姿は、その基底にあるテクノロジーの産物だから、変わらない(進化しない)メディアは生き残れない。ビジネスもメディアもテクノロジーの制約を受けている限り、その制約がなくなれば、もっとよいものが出てくることは間違いない。

 

第2章:騙しのテクニック(影響力の武器)

 

1.広告とは「この商品を買ってください」というメッセージ(意見)

メッセージを受け取った人は、買う(賛成)か、買わない(反対または無視)か、どちらかを判断する。判断するためには「情報」が必要。買っていただくために必要な情報、商品の価値を高める情報=これを「商品情報」と言おう。

 

2.「広告」と「詐欺」、ルーツは同じ「説得」にあり

1)「情報」は「だれが」発信するかで、信頼性が決まる。語りかける自分をどうしたら信頼してもらえるか。これが説得技術の原点である。商品やメディアの進化とは関係なく、変わらない部分である。

2)この技術は、人を騙す場合にも有効である。伝える情報がホント(真)の場合が「広告」であり、ウソ(偽)の場合が「詐欺」である。

 

  • 商品広告の基本構造

「○○○、だから買ってね、この商品」

○○○=ホントの商品情報(広告)

 

  • 詐欺広告の基本構造

「△△△、だから買ってね、この商品」

△△△=ウソの商品情報(詐欺)

 

3.ロバート・チャルディーニ(アリゾナ州立大学社会心理学教授)著書『影響力の武器』の「騙しのテクニックの6原則」

(以下、掲載順を現在の広告の頻度順に変えてあります=詳しくはスライド参照)

 

1)好意

(広告の事例)「満足した顧客は最良のセールスマン」

・好感度、ワン・ツー・ワン(語りかけ)、シェア(いいね!)、アフィーリエイト、インフルエンサー

(騙しの事例)「ステマはマーケティングにあらず」

・ライザップがインフルエンサーを使い「ステマ広告」、消費者庁が措置命令…低価格ジム「チョコザップ」巡り(読売2024/08/09)

 

2)希少性

(広告の事例)「いまだけ、ここだけ、これだけ、あなただけ」

・数量限定、一回限り、広告限定の特別価格、ラストチャンスセール、会員限定・会員先行販売、お客さま限定クーポン

(騙しの事例)「ここだけの話は、ここだけでは済まない」

・ジュエリー店ココ山岡 10万人が巻き込まれた詐欺事件(日テレ2022.10.04)

 

3)社会的証明

(広告の事例)「みんなの意見は、おおむね正しい」

・ランキング、レーティング、レビュー、アンケート

(騙しの事例)「三人疑之、其母懼焉」

・「満足度No. 1」広告 客観的裏付けなく 6社に再発防止命じる( NHK2024年3月1日)

 

4)権威

(広告の事例)「ブランドは一目でわかる卓越した品質から生まれる」

・ブランド広告、国(公共機関)許認可、学識者・学会、社会的地位

(騙しの事例)「権威を信じることは良心の源泉(ニーチェ)」

・安倍晋三内閣総理大臣からの「桜を見る会」の招待状(ジャパンライフ平成27年3月)

 

5)返報性

(広告の事例)「いいね!を受けたら、いいね!で返す」

・ティーチ&セル、ブートキャンプ、スタートガイド

(騙しの事例)「無料のランチなんて、あるわけない」

・LINEスタンプの「無料プレゼント」や「続きはLINEの外で」に騙される10代(CNET2016年07月02日)

 

6)コミットメントと一貫性

(広告の事例)「お困りのことはございませんか」

・無料診断、モニター、サンプリング、オープンキャンパス、活用セミナー

(騙しの事例)「自ら手を挙げて、カモになる」:

突然現れるパソコンの警告表示をすぐにクリックしないこと!-その表示は、有料ソフトウエアの広告かもしれません-(国民生活センター平成26年4月24日)

 

第3章:騙されないための護身術(「なんか変」原理)

 

1.広告にも報道にも適用できる「なんか変」原理

普通の人が「なんか変」と感じたら、それは「ゼッタイに変」。「常識」があれば騙されない(「常識」ではなく、「通説」に騙されている)。

1)「事実」が先、「意見」は後

→「意見」だけの広告(見出し)は、「なんか変」。

 

2)「事実」には「ホントの事実」と「ウソの事実」がある

→ 「ウソの事実」に基づく広告(意見)は、「なんか変」。

 

3) 物事(人のやる事)には、必ず「動機」がある

→「動機」を隠した広告(意見)は、「なんか変」。

 

2.「なんか変」度はメディアによって異なる

1)新聞など大手の有料印刷メディアは「基本、ウソはつかない」。

2)NHKニュースをはじめとするTVメディアは「編集=誤認誘導」が横行している。

3)SNSは「だれが」発信しているかで判断。とくに政治系はインフルエンサーに注意。noteなど自前ネットメディアはすべて「ステマ」。

4)YouTubeなど動画系SNSメディアは「平気でウソをつく」。

 

3.リファレンス(事実をして語らしめる:信頼できる情報リソース)

1)ニュース(事実)を確認するなら

・47NEWS(よんななニュース):

全国52新聞社と共同通信のコンテンツを束ねた総合ニュースサイト。

・ロイター:

トムソン・ロイターのニュース・メディア部門で、毎日世界各地の数十億人にリーチする世界最大級の国際マルチメディア通信社。

 

2)科学的(医学的)根拠を確認するなら

・CiNii(NII学術情報ナビゲータ[サイニィ]):

論文、図書・雑誌や博士論文などの学術情報で検索できるデータベース・サービス。著者名で検索。

・素材情報データベース<有効性情報>(国立健康・栄養研究所):

「健康食品」に添加されている素材について、現時点で得られている科学的根拠のある有効性の情報に関して、科学論文の内容を忠実に集めたもの。素材(一般名称)で検索。

 

3)歴史的事実・人物、言葉の意味・用例を確認するなら

・コトバンク:

インターネット登場以前の雑音のないしっかりした情報が網羅されている。

 

記録:葛野正彦(88期)

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Ⅷ.資料 講演会スライド(参考資料含む)PDF 騙されないためのマーケティング講座γ版