【233回】5月「人生100年時代に応じた身体づくり。認知症対策を中心に。」

Ⅰ.日時 2022年5月21日(土)14時13分~15時30分
Ⅱ.場所 Zoomによるインターネット開催
Ⅲ.出席者数 88名
Ⅳ.講師 髙田義弘さん@93期 (元野球部キャプテン/神戸大学大学院人間発達環境学研究科 准教授)

1962年大阪市十三生まれ
1981年北野高校93期卒業 野球部主将
1982年神戸大学教育学部 体育科入学
1987年神戸大学大学院教育学研究科修了
1989年神戸大学教養部助手
1996年アメリカスポーツ医学研究所(文科省在外研究員)
現在 神戸大学大学院人間発達環境学研究科 准教授 博士(健康科学)
Ⅴ.演題 「人生100年時代に応じた身体づくり。認知症対策を中心に」
Ⅵ.事前宣伝 メタボ、フレイル、サルコペニア、ロコモ、認知症と健康不安に関する言葉が氾濫しています。特に高齢化の進展とともに、認知症患者数も増加し「日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究」の推計では、2020年の65歳以上の高齢者の認知症有病率は16.7%、約602万人となっており、6人に1人程度が認知症有病者と言えます。そのため認知症対策は喫緊の課題です。人生100年時代、健康で長生きするためにはいつどのような運動を行えば良いのか。子どもから高齢者まで年代に応じた運動についてお話しさせていただきます。特に中高年以上のメタボ対策の重要性と認知症予防、筋力低下予防について血糖値(糖尿病)との関連から最新のデータをもとに解説致します。
Ⅶ.講演概要 自己紹介:十三生まれ。十三中学(66期松山先生)、北野高校(57期清水さん)、神戸大学(69期善積さん)と北野の先輩に師事した野球一筋の人生。アトランタ・シドニーオリンピックではアメリカスポーツ医学研究所の一員として野球・テニス選手の体力測定・動作解析研究に参加。趣味は献血。

(1)身体づくりは子供の時代から

健康とは肉体的・知的・精神的・社会的に健全な状態のこと。近年子供の体格は良くなってきたが基礎的運動能力が顕著に低下傾向にある。運動不足、偏った栄養、テレビやゲームでの睡眠不足が背景に。子供の一日歩数は27600歩(1979年)から17000歩(1999年)に減少、現在はさらに少ない可能性。子供たちに時間・空間・仲間が無くなり、外で遊ぶ習慣が減っている。そのため脳の発育発達にも影響が出てきている。運動習慣のある子は達成意欲が高い傾向にある。神経系は6歳までに成人の90%が形成されるので、3歳から小学生までに鍛えることが肝要。幼少時に五感を高め、集団活動の中で様々な人間関係を経験する機会を確保することが重要。

 

(2)中高年はメタボ・脚力の衰え・認知症対策

がん、脳卒中、心臓病に加えて、生活習慣に起因する糖尿病への対策が重要。メタボ、フレイル等怖い言葉だが、適切に対策すれば防げる。皮下脂肪に比べて、内臓脂肪は付きやすく減りやすい。ウォーキングがメタボ防止に有効。メタボは糖尿病につながる。運動習慣、食習慣悪化で内臓脂肪が増えるとアディポネクチン(超善玉ホルモン)の分泌が低下し問題を起こす。糖尿病は網膜症、腎臓、心臓、脳梗塞、脚など体の様々な部位に影響を及ぼす。空腹時血糖値だけでなく、1~2ヶ月の血糖値の平均値を表すHbA1cという指標も重要。「終末糖化産物指標AGE量=血糖値×持続時間」もリスクの指標となる。健康な人は、血糖値を下げるインスリンと筋収縮作用で糖を筋肉内に取り込み血糖値が低下する。さらに糖と一緒に蛋白質も取り込むので筋肉もつきやすい。血糖値を下げるインスリンの感受性が低下すると血糖値が上昇した際になかなか血糖値が下がらず、血糖値を下げるために過剰にインスリンが分泌される。過剰に分泌され使われなかったインスリンは、脂肪細胞の合成を促進するので、インスリン分解酵素で分解する必要がある。このインスリン分解酵素が認知症の原因物質のひとつであるアミロイドベータも分解するが、インスリンの分解を優先するので、糖尿病患者でインスリンが過剰に分泌されるとアミロイドベータ分解まで手がまわらず、アミロイドベータが蓄積されやすく認知症につながる。

糖尿病発症リスクのあるラット実験では、ケージ内運動有無の糖尿病発症を検証。運動を行うと筋収縮作用で血糖値が下がり、糖尿病の発症が抑えられた。一方運動しないラットは糖尿病を発症し、持久力、筋力が弱く、アミロイドベータ量も1.8倍多い。糖尿病ラット5匹ではそのすべてで電気ショック体験の50日後に学習記憶の喪失(認知症の発症)が確認された。

 

(3)60歳以降は貯筋に励もう

血糖値を下げるには食後の運動習慣に加えて筋トレで筋肉貯金が必要。ロコモ診断の目安として大股2ステップ長を身長で割った指標が1.3以下だとロコモ兆候と診断。神戸市健康体操教室では「くねくね体操(運動神経を向上)」と「スロースクワット(筋力強化)」を推奨。筋肉合成のため運動後48時間以内のタンパク質摂取を推奨。

 

質疑応答

香川(93期): アミロイドベータの溜まった5匹のラットは50日後には電気ショック記憶を失っていたとの実験ですが、何匹のラットのうちの5匹だったでしょうか?

高田: 5匹中の5匹です。一匹検査に6万円かかるので5匹しかできませんでしたが、近々安くなる可能性があり、検体を増やすことができると期待しています。

雫石(75期): 血糖値スパイクは短時間なので、そんなに問題ないのでは?

高田: インスリンが出るのを分解するのに酵素が使われ、アミロイドベータに手が回らなくなるのが問題。血糖値については常時モニターできる機器も開発されています。

宮本(93期): 運動後どんなタンパク質をとればよいでしょう?

高田: 私は薬局のあるホームセンターで購入でき、吸収しやすいGrass-fed Protein(乳製蛋白)を専用さじで一杯分を牛乳に溶いて、摂っています。

家(80期): 血糖値測定器を2週間つけ毎時測定してみたら、血糖値の上下がリアルに見えるようになり、これは拙いと怠け者でも心を入れ替えるきっかけになりました。

高田: 7000円くらいでネット購入できるので、こういうハイテク機器を使って食生活改善のきっかけにするのは良いと思います。

西尾(66期): 南仏で740㎞歩いたりしてきたが、コロナ禍と加齢で最近歩く気力が衰えてきた。教えてもらった体操をやってみたい。

高田: 神戸では高齢者スポーツ教室で何かイベントを企画してみたい。

今井(80期): 室内で足首にウェイトをつけて生活していますが、筋力アップに効きますか?

高田: 効果はありますが、すり足になりがちなので転倒などに気を付けてなさってください。

 

資料

くねくね体操高齢者向け・トレーニング用 – Bing video

 

高齢者向け・トレーニング用 – YouTube

 

スロースクワット

【ダイエットにおすすめ】全身の脂肪を燃焼するスロースクワットの正しいやり方 – Bing video

【ダイエットにおすすめ】全身の脂肪を燃焼するスロースクワットの正しいやり方 – YouTube

 

血糖値測定器の情報

 

 

記録担当 家正則(80期)

 

Ⅷ.資料 東京六稜倶楽部22年5月資料.pdf(2.7MB)