市議会議員選挙に投票した思い出(その2)【第13回】

前回から続く)

 

オランダでは、州知事も市長も、選挙では選びません。市長はイベントであいさつしたり地元新聞や地元ケーブルTVなどにたびたび出てくるので市民にそれなりに認識されていますが、州知事は一般ニュースには登場しないので存在感はとても薄いです。いずれも中央政府が任命するポジションで、地元の州議会や市議会の推薦に基づくことになっています。住民の選挙で選ばれた存在ではないので、政治家ではなく行政官として、議会の議長を務めるかたわら、議会で決まったことを執行していくことが期待されています。

アルクマールの市役所

 

初めて「市長選挙はない」と聞いたときは、とても意外な思いでした。上述のように市長は地元メディアによく出てくるので存在感がありますし、アムステルダムやロッテルダムなど大都市の市長は、ときどき全国メディアでも取り上げられたりもします。オランダの主要な諸都市の歴史は13世紀頃から記録されていますが、中には強力なリーダーシップを発揮した市長もいたと、歴史博物館などで紹介されていたりもします。19~20世紀になって議員の普通選挙が実施されるようになって以来、「市長も州知事も住民による選挙で選ぶべきだ」という言説はたびたび沸き起こるようですが、今のところ任命制から公選制に移行しそうな気配はありません。

 

余談になりますが、市長選挙がない話は、当時マンツーマンで指導を受けていたアイルランド人の英語教師に教えてもらいました。彼は、定期的に実施される市長たちへの教育研修に、英語の講師として招かれていたそうで、多くの市長と親しくなることができたそうです。中央政府は市長たちを選任し任命した形になるので、一定水準の業務遂行能力と法令遵守精神を学ばせるため、全国で300数十人いる市長のうちの数十人を順次集合させて宿泊を伴う研修を受けさせ、さらに市長間の親睦や情報交換を図る機会を提供しているのだそうです。

 

次回に続きます。

 

2022年7月24日
川崎市にて
小松雄爾

 

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