【第283回】7月「日本の国連加盟70周年」

 

Ⅰ.日時 2026年7月15日(水)11時30分~13時00分
Ⅱ.場所 バグースプレイス パーティルーム
Ⅲ.出席者数 46名
Ⅳ.講師

高木 善幸さん@86期(元国連職員)

1955年 大阪生まれ

1974年 北野高校卒業

1978年 京都大学工学部卒業

1979年 京都大学工学部修士課程中退

1979年 通産省特許庁入庁

1986年 – 1987年 WIPO(世界知的所有権機関)に出向

1988年 – 1990年 特許庁に復帰

1991年 – 1994年 外務省在ジュネーブ日本政府代表部一等書記官

1994年 WIPOに転職

1999年 WIPO上級部長に昇進し、特許庁を退職

2009年 WIPO事務局長補

2014年 WIPO事務局長補に再任

2020年末 WIPO事務局長補任期満了、WIPOを退職し帰国

 

Ⅴ.演題 『日本の国連加盟70周年』
Ⅵ.事前宣伝 日本は昭和31年(1956年)12月18日に国際連合に80番目の加盟国として加盟しましたので、今年末に国連加盟70周年を迎えます。国連加盟は、戦後日本の国際社会への復帰でしたが、それ以来、世界での日本への信頼やプレゼンスも上がりました。この機会に、国連の役割や活動成果、国連でのこれまでの日本の国際社会への貢献や試練について語ります。最近の激変する国際情勢のなかで、国連は無力との批判があり、組織の改革も要請されています。創設81年の国連は今後どうなるのか、日本は何を期待されているのかなどを、国連在職28年の私の経験と失敗談も交えてお話しします。

東京六稜倶楽部 第251回「知的財産のはなし」2023年11月23日 -六稜WEB

Ⅶ.講演概要 紹介者は新貝康司さん(86期)

1.国連はいつできて、日本の加盟は?

1945年6月26日サンフランシスコで国連憲章が署名されました。国連を創設しようという動きはそれより数年前から英米が交渉し、1945年の2月にヤルタで開催された米(ルーズベルト)、英(チャーチル)、ソ連(スターリン)による3者会談でも話合われていました。

国連の旗を見ると平和の象徴であるオリーブの中に北極から見た地球が描かれていますが、日本は見当たりません。標準時地点を持つ英国を通る経度0度線を中心軸に、左が西半球、右が東半球で、米・ソがそれぞれを支配し、英国などの欧州が東西大国の力の均衡を取るとの意図も見えます。日本は1952年に加盟申請をしましたが、ソ連が拒否権を発動したため加盟は見送られ、1956年10月の日ソ共同宣言の後、1956年12月にようやく加盟が認められました。80番目の加盟国でした。その後、加盟国は増え続け、2025年時点で193ヶ国になっています。

 

2.国連はどこで、何してる? リーダーは誰?

国連はニューヨークに本部が、ジュネーブ、ウィーン、ナイロビ等にも機関があり、アジアではタイのバンコクにいくつか機関があり、日本には専門機関はありませんが国連大学があります。毎年9月末にニューヨーク本部で国連総会を行っています。当初、平和追求というよりは戦争地獄の回避を目的としていました。米国を中心に、国際秩序の管理と力のバランスを狙いとしてきました。

国連のトップは事務総長で、現在はポルトガル出身のグテーレスさん76歳です。1期5年で通常2期勤めるのですが、過去に1期だけでやめた人がいます。エジプト出身の方です。当時ソマリアで起きていた紛争に関してアメリカと意見が合わず、安保理常任理事国である米国の拒否権により再選への途が閉ざされたためです。

 

3.国連加盟の損得、日本の不満は?

日本は国連加盟により国際社会へ復帰したと言えます。日本のパスポートは現在188ヶ国でビザなしで通用します。その数はシンガポールに次いで世界で2番目です。

国連加盟は日本の平和主義、貿易促進、経済成長を後押ししてきました。日本はGDPに占める貿易の割合が45%であり、EU、中国、米国よりもかなり多く、正に無資源貿易技術立国ですので、国際秩序を維持する国連が大切でした。

日本はアジアでの平和や発展に貢献しており、とくに戦場となった東南アジアでは2025年の調査で66.8%の信頼度があり、EU、アメリカ、インド、中国を抑えて第一位です。

2025年現在で、世界各国のGDPを見ると4番目です。ですが、国連に全体の7%を出資しており、3番目に多い国です。2002年頃には20%のときもありました。いずれにせよ、分担金の多さに比べ日本の立場が弱いのが日本の不満です。日本は現在、安保理では非常任理事国という立場であり、拒否権はありません。拒否権は戦争で勝った常任理事国5ヶ国だけが持っています。安保理の非常任理事国は選挙で選ばれ、これまでに日本が選ばれた回数は12回で最多です。任期は2年間ですので、70年間のうち、約3分の1は非常任理事国として活動してきました。

国連は組織としては肥大化を続けており、国連専門機関と関連機関の数を合わせると2025年時点で20あり、1955年の10と比べると倍増です。国連職員(幹部と専門職)数は、2025年時点で1995年と比べると30年間でほぼ倍増です。

ところが日本人職員の数は分担金が多い割に全体の2.2%、8番目で、G7の中で最低です。これが不満です。ドイツの3%ぐらいにはなってほしいと思っています。

 

4.「国連は役立たず」? 崩れる国際秩序

国連は戦争回避を目指していたにも拘わらず、戦争回避に何度も失敗しています。安保理では過去20年間で60回以上拒否権が行使されています。拒否権を行使されると物事が決まらないので、国連を通さないで軍事攻撃や経済制裁を実施しようという動きもあります。ユーゴスラビア紛争やイラク戦争がその例です。現在のイラン問題もそうです。国連が政治力のみで仲裁する限界を露呈している状況です。人道支援に関しても批判されています。2002年以降、最貧国への薬の無償配布交渉で国連の専門機関であるWHO離れが起き、国連の外にグローバルファンドができてしまいました。

国連は肥大化し弱体化しているという批判に対しいくつかの内的要因が指摘されています。組織の肥大化に起因する官僚化、活動範囲の重複、決定プロセスの複雑化があります。開発援助に関して先端企業やNGO依存になってしまい、そのため専門性が低下していることもあります。さらに国際調達が政治的影響を受けることもあります。

外的要因も多くあります。オバマ政権以後、米国は世界の警察官の役割を放棄し介入に慎重になっています。また中国が台頭してきたため、とくに第一次トランプ政権の2018年以後、米中対立が激しくなっています。さらに、2014年以後のロシア・ウクライナ戦争も影響しています。そして2016年以後、トランプは西半球のことを優先するというドンロー主義を打ち出しています。

近年、米国は国連を部分的に脱退したり、分担金を払わない、あるいは支払う場合でも条件を課したりしています。その条件は、平和維持と人道支援に集中し、PKO予算は10%削減するなどです。

国連改革はUN80イニシアチブとして推進されています。2025年の総会で、大胆な組織改編や人員整理でスリム化を諮るという方針が打ち出され、安保理改革を行うこと、イニシアチブは新国連事務総長の手に委ねる、などが決められました。

その新事務総長ですが、6人が立候補しています。女性が4人、IAEAのグロシ氏もいます。地域の順番からするとラテンアメリカの候補が選ばれると思われますが、アフリカから1人立候補しています。2026年9月の国連総会で決まります。

 

5.これからどうなる? 日本はどうすれば?

国連は今後どうあるべきかについて2025年末にEconomist誌が4つのシナリオを挙げました。それから約半年たちましたが、そのうちの2つは現実的ではなく残りの2つ、すなわち、規模を縮小することと米国の要求に対応する路線を併せた方向で現在進みつつあると考えられます。

米国の分担金小出し戦略に対応するため、たとえばニューヨークやジュネーブなどの物価の高い所から拠点を移すなどの対策が講じられつつあります。現在ケニアのナイロビに大きな会議場が建設中ですので、将来は、国連総会がナイロビで開かれるかも知れません。安保理改革については、常任理事国5ヶ国に加えて、日本、ドイツ、インド、ブラジルの4ヶ国を入れて常任理事国の枠を9ヶ国に拡大するという案を、これら4か国が共同提案しています。ただ、アフリカの国が入っていないので、アフリカの国を2か国入れるようにとのアフリカグループの要望も出ています。ただ、常任理事国の数が増えても、それらの国が拒否権を乱発し合うと物事がさらに決まらないので、拒否権を制限するということも提案されています。

2025年9月の国連総会でフィンランドの大統領が、1945年以後の世界秩序は断裂しているので、新たな世界秩序を築いていこうという演説を行いました。また、カナダの首相は、今年初め、中堅国は同志国として水平協力を模索して行こうとの演説をダボス会議で行いました。日本も今年になって多くの国々を安全保障や経済協力で連携しています。

最後にこれからの日本の国連戦略ですが、安保理改革を含む国連改革・機能強化、日本らしい人権外交や女性・平和・安全保障を積極的に推進(茂木外相)し、自由で開かれたインド・太平洋の進化に利用できるように、国連の機能強化に向け改革を推進していこうとしています。

Ⅷ.質疑応答 橋本操さん(73期

Q:拠出金を滞納している国は、遅れてはいるにしても全額払っていますか?

A:滞納が続くと実質的に減額して、結果、既定の満額を払っていないことがあります。

 

橋口喜郎さん(78期)

Q:(1)国際法が機能しない状況で日本はどうすべきですか?

(2)国連職員の待遇はいかほどですか?

A:(1)国際秩序が崩壊しないように中堅国が力を合わせることが重要だと思います。いくつかの国が集まって協力しあうグループができてくると、国連の仕事の肩代わりもできるようになります。日本はと言うと、国連中心主義からは脱却し、ビジョンに従って自律性を持つこと、そして危機に際して揺るがない強靱性を持つという方向に変える必要があると思います。

(2)契約は5年ですが、5年後に更新するかどうかはそれまでの実績等で決まります。予算が尽きると途中で終了もあり得ます。不安定であり転勤も多いので、国連職員のなり手は多くはありません。給料、年金はこれまでは勤務地の生活水準に見合った額が支給されています。給料や年金はドルベースなので、単純な比較はできませんが、これまで、円がドルより安い期間が長かったため、額を比較すれば、日本の国家公務員よりはかなり多いと思います。

 

小松正樹さん(78期)

Q:いい人を集めるには給料を高くする必要があります。また日本では国連リテラシーが低いように思われます。経験を生かして国連リテラシーを高めていく活動をお願いできないでしょうか?

A:若い人の中には海外に行くのをためらう人が多いのが現状です。現役時代は、ジュネーブで国連の日本人職員会を創設し、日本人職員の横の連絡を密にする活動をしてきましたが、退職後のこれからは若い人のために、国連の活動や国連職員を目指したい人が増えるよう、情報普及活動をしていきたいと考えています。

講演資料:東京六稜会発表2026年7月最終版

配付資料:日本の国連加盟70周年配布資料

記録:阿瀬 始(80期)

Ⅹ.講演風景 image0 (1)IMG_0966 (1)IMG_0972 (1)IMG_0983 (1)IMG_0998 (1)IMG_1002 (1)IMG_1007 (1)IMG_1008 (1)