【246回】6月「北野高校で全てが始まった青春はまだまだ続く~朗読劇「沖永良部島を旅して」」

Ⅰ.日時 2023年6月23日(水)11時30分~12時40分
Ⅱ.場所 銀座ライオン7丁目店 クラシックホール(Zoomによるインターネット中継)
Ⅲ.出席者数 40名(会場21名、Zoom19名)
Ⅳ.講師 佐野 真さん@102期 (音楽企画「魂の朗読劇」主宰)

1971年 大阪府豊中市に生まれる。
1987年 大阪市立豊中第8中学校卒業。大阪府立北野高校入学。オーケストラ部に入部しヴァイオリンを始める。
1990年 大阪府立北野高校卒業。
1992年 広島大学工学部第3類(化学系)入学
1998年 広島大学大学院工学研究科応用化学専攻終了。関西ペイント株式会社入社。
2010年 オーケストラ・アンサンブル西湘を設立。
2011年 西湘フィルハーモニー管弦楽団を設立。
2014年 音楽企画「ヴァイオリンと朗読の世界」シリーズを立ち上げる。現代演劇の俳優による日本神話・民話の朗読にヴァイオリン演奏をミックスしたスタイルでの表現にチャレンジ開始。
2016年  小田原の老舗劇団「こゆるぎ座」の看板女優・奥津真理子とともに「花いちもんめ」(宮本研・原作)を上演。好評を博す。「福島復興応援おきあがりこぼし芸術祭」に2年連続で参加(ゲストテラー/伊藤さつき)。
2月、女優・長澤しずか主催公演「リビドーの旋律」(三島由紀夫/原作)に音楽提供として参加・出演。
12月、ベルギー大使館にて開催された「日本ベルギー国交樹立150年記念コンサート&ベルギー料理の夕べ」(主催/ブリュッセル航空ほか)に音楽企画「ヴァイオリンと朗読の世界」として出演。名作「フランダースの犬」を上演し好評を博す。ヴァイオリンを舟山千秋・舟山奏両氏に師事。日本劇作家協会会員。
Ⅴ.演題 北野高校で全てが始まった青春はまだまだ続く~朗読劇「沖永良部島を旅して」
Ⅵ.事前宣伝 「北野高校オーケストラ部」を出発点として、50歳を過ぎた今でも「青春のど真ん中」を歩んでいます。北野高校での経験した全てのことが、今の私を形成しています。関西ペイント株式会社という大手塗料メーカーの研究開発部門で新製品の開発に従事する傍らで、ヴァイオリンを用いた音楽企画を作ってきました。この度の講演では、私自身の音楽と仕事の歩みを振り返り、後半では私のオリジナル台本による小さな朗読劇を上演します。沖永良部島という、小さな小さな美しい島を仕事で訪れたときの体験を元にした作品です。
Ⅶ.講演概要 紹介者は北野高校オーケストラ部出身の谷島由紀子さん(91期)。
大阪の公立高校でオーケストラ部をもつところは珍しい。佐野さんは楽団も作られ新しいスタイルを追及されている。本日はお話を聞かせていただくのを楽しみにしている。

【I】講演の部

1.小学生時代

クラシック音楽が好きで、バッハ作曲「G線上のアリア」、ベートーベン作曲「交響曲第9番」を震えるような感動とともに聴く。

 

2.中学生時代

さだまさしに傾倒。ヴァイオリンに憧れる。

 

3.北野高校時代

1)入学式での当時の松下校長のメッセージ「どんなことでも良い。これだけは誰にも負けない!というものを在学中に一つ作りなさい。勉学のことでも無くても何でもよい。そういうものを作りなさい」が今でも自分にとって大切な言葉。
2)高校時代は以下に傾倒し「自分だけの青春」を謳歌した。
① オーケストラ部でヴァイオリンを始め3年間続ける
② 文芸部で小説やエッセイを発表する
③ 芸術の選択科目で美術を選び油絵15点を制作する

 

4.大学時代

1)高校時代は建築学に進みたいと考えていたが、浪人時代に建築を学ぶなら絵が描けることが必要と考え、絵の具の化学的な性質に興味を惹かれ工学部応用化学に志望を変更。
2)第一次湾岸戦争が勃発。自衛隊派遣等を通じて平和について考えたいと思うようになる。
3)交響楽団に入団するとともに油絵や執筆も継続。大学でも「自分だけの青春」を謳歌した。
① 交響楽団→オーケストラで演奏するとともに演奏会を40~50回企画
② 油絵→絵を描くだけでなく西洋絵画模写により油絵にさらに惚れ込む
③ 執筆→落語をつくり落研に提供した(が、笑いをとれず。人を笑わせることは難しいことを実感)

 

5.会社時代

<<仕事における青春>>

1)関西ペイント(株)に就職→会社情報|関西ペイント (kansai.co.jp)
各種塗料の製造・販売事業で技術開発を担当。
2)塗料には大きく分けて3つの機能がある。
① 保護機能
紫外線、酸性雨、車の排気ガス等の周りの環境から塗装対象物を守る機能で、塗膜が塗装物を守り長持ちさせる。
② 美観機能
塗装対象物を美しく見せる機能で、対象物のイメージ向上や周辺環境物とマッチさせる。
③ 特別な機能の付与
遮熱性、耐熱性、耐油性、防火性、防虫性、防水性、防音性、防カビ性、耐薬品性、蛍光・夜光性等があるが、これらは機能の一部。
入社して最初に担当したのが建築用の上塗り塗料。大学進学の際に建築系から化学系に進路変更したのに、建築の業務に携わるとは不思議な縁を感じる。
3)塗料の成分は顔料、樹脂、添加物、溶剤の4つで、油絵具とよく似ている。しかし相違点も多く、両方を知ることでそれぞれの理解が深まる。
4)耐久性の研究が私のここ10年の仕事である。塗料は耐久性が大事で塗り重ねの世界。船底部の塗料などは、防食性の塗料の上に付着性の塗料を上塗りし、またその上に防汚性の塗料を上塗りする。
5)太陽光線(紫外線)、風雨、気温、潮風(飛来塩分)等に対する耐久性を評価するための屋外曝露場として、沖永良部ばくろ場(紫外線や高温)、千倉ばくろ場(海からの飛来塩分等)がある。厳しい自然環境に対象物を曝し耐性を調査研究するもの。

<<仕事以外の青春>>

1)「私だけの青春」であるオーケストラも続ける。
関西ペイント(株)に北野高校オーケストラ部の大先輩の樋口徹雄さん(75期オーボエ)がおられ、樋口さんが運営されていた湘南アマデウス合奏団でオーケストラとヴァイオリンを学ぶ。そこで人生の伴侶を見つけ、現在は高校3年の娘との3人家族。
2)2011年に西湘フィルハーモニー管弦楽団(神奈川県秦野市)を設立。
3)2013年音楽企画「魂の朗読劇」(旧名「ヴァイオリンと朗読の世界」)を始める。幼少期の娘に本を読み聞かせようとした時、かつて自分が楽しんだはずの話を忘れていることに気付きショックを受ける。他の親御さんも同じではないかとの思いで、親子で楽しめる朗読イベントにヴァイオリンをミックスすれば面白いかもとの発想がきっかけ。
4)書きものが好きで「アマオケの流儀-人生に悩んだらオーケストラを始めなさい-上下巻」を出版(夢叶創出版Amazon.co.jp: アマオケの流儀: 人生に悩んだら、オーケストラを始めなさい 上巻 (夢叶創出版) 電子書籍: 佐野 真, 矢作 有沙: Kindleストア

 

【Ⅱ】朗読劇の部

魂の朗読劇「沖永良部ラブストーリー~好きですって言えなかった、小さな恋の物語~」

朗読:桜井 柑奈さん(*)
ヴァイオリン:佐野 真さん
原作・構成・演出:佐野 真さん

(*)愛知県出身。部隊を中心に活動してきたが、昨年より映像にシフト。CM・ドラマ等に出演。佐野さんのヴァイオリンとの朗読コラボを年1~2回程行っている。

1.ストーリー

職場の同僚と沖永良部島に出張した時の体験をベースにした物語。

1)行きの飛行機で航空会社のキャビンと出会い、安心感とともに何か身近なものを感じるが、それが何かわからないうちに機内で寝てしまう。
2)沖永良部に到着し、レンタカーで島を廻る。周囲40KMの小さな島だが、この島に存在するものがとてつもなく大きく大切なものであることを感じる。美しい自然、海、鍾乳洞、ゆっくり流れる時間、太陽の恵み、満天の星、天の川。鹿児島県でありながら歴史的に琉球の文化の影響を色濃く受けた土地。その心は今も島民の生活に多く残っている。レンタカーで聞いた夏川りみの歌が心の中でうず巻く。
3)その日の夕食の「和」食に「和(なご)」む。同僚の和田君の「和」、自分の名前の和彦の「和」。偶然の一致を思ううちになぜか今朝飛行機で会ったキャビンの顔が浮かぶ。
4)二日間の滞在を終え、帰りの空港で昨日のキャビンと再会。自分の通関手続きで金属探知機のアラームが鳴り出す。狸のような腹に探知機を充てられるのを見て周りの人もキャビンも大笑い。
5)キャビンの笑い声を聞き、その声がかつて好きだった人の声にそっくりなことに気付きキャビンがその人に思えてくる。笑いながらも自然と涙がこみ上げ最後は号泣。
6)狼狽するキャビンに思わず名前をたずね、彼女は「和美(なごみ)」と答える。まさしく自分が好きだった人の名前に声を失う。自分が思いを打ち明けようと思っていた矢先に自動車事故でその人は帰らぬ人となった。
7)「和」でつながる沖永良部での不思議な体験はしっかり心に刻まれている。あのキャビンに会えればという淡い期待を持ちつつ、もう一度沖永良部に行こうと思う。

 

2.感想(記録担当者個人の感想です)

桜井さんの表情豊かな朗読、佐野さんの素朴なヴァイオリンの音色、バックに流れる沖永良部の美しい自然の風景(写真)が絶妙に調和する。沖永良部島の自然だけでなく、琉球文化を継承する島の歴史やそこに住む人の温かさまでイメージが膨らむ抒情的作品。

 

質疑応答

質問者 谷島由紀子さん 91期

Q: 本日のストーリーはご自分で作成されたものと思うが、音楽もご自分でつくられたのか?
A: ストーリーは自分で作ったが、音楽は夏川りみさん・中村雅俊さんのものから借用した。他の演目では、自分で作ることもありクラシックから借りることもある。

質問者 今井美登里さん 80期

Q: 物語を作るとき、楽しいものとシリアスなもののどちらが楽しいか?
A: 大人も楽しめ鑑賞に耐えられるという観点よりシリアスなものが多くなる。栃木県で公演した「百目鬼伝説」などは非常に悲しく涙が出る物語。
Q:  仕事を含めて2足のみならず3足のわらじの中で 時間の配分はいかにされているか?
A:  仕事最優先で差支えのない範囲で時間の割り振りを行っている。

 

記録:葛野正彦(88期)、講演者修整済

Ⅷ.資料 0621_東京六稜倶楽部講演会資料(佐野) (1).pdf (4MB)
20230621_魂の朗読劇33.pdf (1.6MB)