【247回】7月「ヘルスケアの進化をデザインする」

Ⅰ.日時 2023年7月19日(水)11時35分~12時55分
Ⅱ.場所 銀座ライオン7丁目店 クラシックホール(Zoomによるインターネット中継)
Ⅲ.出席者数 79名(会場62名、Zoom 17名)
Ⅳ.講師 家次 恒さん@80期 (シスメックス株式会社 代表取締役会長 グループCEO)

大阪府出身。京都大学経済学部卒業後、1973年三和銀行(現 三菱UFJ銀行)へ入行。1986年東亞医用電子(現・シスメックス)に入社。1996年に社長就任、2023年に会長グループCEOへ就任。神戸を拠点にグローバル展開を積極的に推進中。社業以外では、2016年に神戸商工会議所第31代会頭に就任。“All Kobe, For the Kobe”をモットーに、2期6年の任務を全う。趣味は読書、スポーツ観戦。大のタイガースファンである。(今年こそ阪神タイガースが優勝することを信じています!)座右の名は「意あらば通ず」。僅かな可能性があれば積極的に攻め、新たな道を切り拓くことを常に考えている。
Ⅴ.演題 ヘルスケアの進化をデザインする
Ⅵ.事前宣伝 シスメックスは健康診断などで血液や尿を採取して調べる検体検査に必要な機器・試薬・ソフトウェアの研究開発、製造・販売、サービス&サポートを一貫して行っており、現在、世界190以上の国と地域で製品をご利用いただいています。

「環境変化の先読み」「ビジネスモデルの変革」「品質への拘り」など、シスメックスの成長と共に大切にしてきたことについて紹介いたします。これからも世界中の人々が健康な生活を送れるよう、医療の最適化を通じ皆様のQOL向上に貢献できるよう取り組んでまいります。また、新たな感染症や認知症、手術支援ロボットなど、変化を続ける医療領域に挑戦している内容を紹介いたします。

Ⅶ.講演概要

1. 自己紹介

高校時代は合気道部に所属していた。1973年に京大経済学部卒業後、三和銀行に入行したが1984年に義父が他界し、義父が起こした東亞医用電子株式会社に1986年に入社し、後を継ぐことになった。同社は臨床検査機器や試薬を作る会社で、現在のシスメックス社となった会社である。1996年に社長になり幸い会社を成長させることができた。2016年には神戸商工会議所会頭になり地域振興を諮っている。

2.シスメックス社の紹介

神戸市に1968年設立の会社で、現在、従業員1万人(国内4割、海外6割)、関係会社数77社、連結売上高4100億円の国際的グループ企業に成長した。
事業内容は医療を支える検体検査を軸にしている。皆さんも健康診断や病院での検査でお馴染みと想われるが、赤血球数の測定(ヘマトロジー)、血液凝固検査、糖尿病や肝機能の指標となる生化学検査、尿検査など、さらには免疫検査や遺伝子検査などの検体検査を通じて、一人一人の健康維持に寄り添う企業として、診断に役立つシステムを開発し提供してきた。
マーケットは人口に比例するので、比較的早い時期から積極的に海外展開を図り、代理店販売方式から直接販売サポート方式へ切り替えることにより、地域及び個々のニーズに応え、顧客の信頼を得てきた。欧米に加えて中国、インド他への展開を進め、ヘマトロジー分野では世界の50%以上のシェアを占め、全体では世界第10位の会社となっている。試薬の収益が大きい。
検査装置は国内で製作する方針を守っている。中国のみ国産品優遇策に対応するため国内で生産した装置を分解して中国で組み立て直すノックダウン方式をとり、環境適応をしている。機器、専用試薬、システム保守等のトータルなサービスで信頼を得ている。

3.大切にしてきたこと

経営は環境に適合してくことが大事。1985年以降のIT革命、1993年のEU発足、2003年のゲノム解読の流れの中、世の中の変わり目はビジネスチャンスと捉えてきた。
1960年代の健康需要の高まりで検査数が増加。1980年代には、検査の自動化による検査技師の感染リスク低減と効率性向上が鍵となった。このシステムが米国で大変評価され事業拡大につながった。2000年代以降はITネットワークで世界中のシステムがつながりはじめ、データを活用したサービスが誕生し始めた。当社においてもユーザーが使用している装置の状態をネットワークでモニタリングすることで、装置のダウンタイムを軽減し、品質の向上に役立てていった。
EU発足で通貨がユーロに統一されたことは、M&Aにより代理店方式から直接販売方式に転換する上で大きな助けになった。米国では従来の代理店から直接販売に切り替えるためにロシュに協力してもらい、連携関係ができた。中国は漢方を中心とした東洋医療の国だったが近代医療が21世紀に入り急速に広がって大きなマーケットになったが、近年政治的な問題で難しい面もでてきている。併せて、これからはインドやBRICSへの展開が重要となる。
検査が止まると医療が止まるので、検査システムの不具合を早期発見、ネットワーク診断でダウンタイムの最小化を目指している。壊れない・正確・安全は当たりまえ。現場のニーズの先取りを心掛けている。
地域を尊重する。海外の多様性を認め、当社現地法人は現地メンバーを中心とした非日本人がCEOを務めビジネス展開をし、できるだけ日本を持ち込まないようにしている。アライアンスについては競争相手とも協力できるところを探し、共生を目指す。

4.更なる挑戦

市場環境の変化(COVID-19, 先進国高齢化社会、新興国の経済成長。地政学的リスク)と技術革新(ゲノム、再生医療、mRNA創薬、AI、ロボット)から目指すべきなのは、個別最適医療、負担の軽減、生産性向上であろう。
新たな挑戦としては、(1)アルツハイマーの原因となるアミロイドβの蓄積を血液で判定する検査の開発に成功し市場導入を進めている。これにより、負担を軽減しながら、エーザイの治療薬と合わせてQOLの向上に貢献している。(2)米国の手術支援ロボットダビンチに対抗する手術ロボット“hinotori”を川崎重工業株式会社と開発し、2020年より国内販売を進めている。現在海外への展開及びさらなる付加価値の提供を目指し、遠隔手術の実現を目指している。(3)マラリア感染の早期発見で全地球的な貢献も目指している。

5.最後に

地元アイススケータの坂本花織、三原舞衣を応援しています。

質疑応答

質問者 武正雄さん 80期

Q: 海外シェアの大きなビジネスを展開されていますが、血液の分野で世界のプラットフォーマーになれるでしょうか?
A: ヘルスケアのマーケットは世界を見ると大きくなる。GAFAのようなプラットフォーマーでなく、得意な分野に集中して進出するという考えでやっている。

質問者 奥村康さん 73期

Q: 順天堂で基礎医学をやってきた。シスメックスは北野の卒業生がトップだと自慢してきた。国の予算はどれくらい使ったか? 米国では軍の予算も入っている。
A: 経産省の資金など一部応募したことはあるが、基本的には国からの資金には頼ってこなかった。

質問者 家正則 80期

Q: 検体検査システムをシスメックスが効率的にしたことが成功の根幹だと想うが、他社ができなかったのは何か秘密が?
A: 検査現場の安全性を担保したシステムが現場で評価された。画像処理も大事。
C: 天文学でも画像から銀河を数えたりするが、周辺でも医療画像処理に転身した若手が複数いる。このあたりも日本の強みになっているのではと想う。

質問者 中山行輝さん 80期

Q: Sysmexの名前の由来と、その想いは?
A: 私の入社前からブランド名としてあった。SysはSystematical組織的のSys、真ん中のmeはmedicsのme、「組織的医療」に無限を表すXを加えて、Sysmexである。東亞医用電子という社名より馴染んでもらえた。
Q: 中国、インドとの付き合いの注意点、学べること。
A: 中国はスピード感をもってチャレンジする精神がある。インドはレベルの高い人材がいる。
一方で日本の品質に対する姿勢は今でも優れていて大事にしたい。

質問者 黒岩暎一さん 75期

Q: 合気道の海外展開も応援してほしい。
A: 文化は大事。茶室と日本庭園を設けて海外からの訪問者に接している。

質問者 谷口ゆたかさん 81期

Q: 若い人が海外へ出たがらない。シスメックスではどう教育したか?
A: 海外との交流が多いので、余り違和感なく海外勤務が受け入れられていると想う

質問者 住田淳子さん 98期

Q: エーザイに努めている。アルツハイマー病検査試薬は承認された。装置の開発はいつごろになるか?
A: 血液での検査機械はすでにできている。エーザイと一緒に展開につなげたい。

質問者 三角智子さん 94期

Q: 働き方改革など、従業員の働き易さへのどんな取り組みをしたか?
A: 特別なことはしていない。研究開発の見極め判断やモノづくりでのプレッシャーなどはあると想う。日本の女性の勤勉さ器用さが素晴らしい。企業として非難されることが無いように勤務環境を整えることは当然している。

質問者 高田義弘さん 93期(リモート参加)

Q: アミロイドβとスポーツ運動との関係を研究している。検査費用が5万円かかったが、安くなるか?
A: やがて保険が適用できるようになるので安くなるはず。

記録:家正則(80期)

Ⅷ.資料 20230719_東京六稜会.pdf(4.3MB)