【第189回】9月「短歌朗読――無常の風に抵抗して」

9月20日開催予定

 

辰巳泰子さん@96期(歌人)

 

  • 共著、作品収録など
    『短歌俳句同時入門』(東洋経済新報社)などに執筆。
    講談社学術文庫 現代の短歌』(講談社)、「現代短歌大事典」(三省堂)、文部科学省検定教科書「展開 現代文」「国語総合」(桐原書店)などに作品掲載。
    共同通信社と三省堂の共同事業「書評大全」に、過去に執筆の書評が収録される。
    群馬県立土屋文明記念文学館の企画展「現代女性歌人展」(2016年)の30人に選ばれるなど。

 

  • 講演
    1995年、NTT東日本社内報編集者研修。
    2003年、UIゼンセン同盟、夏季研修。
    2006年、 信濃毎日新聞社主催の信毎女性セミナー各会場にて講演。

 

 

≪講演内容≫

私が短歌を作り始めたのは13歳の秋。きっかけは、国語の予習をしていて、あすから短歌の単元だなぁ、どうせなら自分で作ってみようという気になったのでした。6年ばかり独学でしたが、19歳のとき、「短歌人」という結社に入会し、高瀬一誌先生に付きました。23歳で第一歌集『紅い花』を上梓し、この歌集は、短歌の芥川賞といわれる現代歌人協会賞を、当時としては最年少で受賞することができました。受賞を受けて思ったことは、文学賞の受賞作家として、発言する手形を手に入れたということでした。実社会における通行手形です。そしてこの手形が、世の中を助けることに結びつくのがいいと考えていました。ところがまもなく、離婚によってシングル・マザーとなり、自身の名誉や地位や財産を押し上げていく才覚などさっぱり無かったことに直面し、ただただ、子育てと実作の傍ら、教材制作や塾の講師や、身の上をなるべく侮られないお固い方面の在宅勤務やアルバイトで、口に糊せざるを得ませんでした。まさに「貧しさに耐えつつ生きて或る時はこころいたいたし夜の白雲」(佐藤佐太郎)というふうでした。

2001年に転機が訪れ、朗読の活動を始めることになりました。岡井隆さんにお声をかけていただき、岡井さんのカルチャースクールで短歌朗読を初体験してから、自分なりにもっと深められるのではないかと思うようになりました。都内のライブハウスを中心に、10年ぐらいソロライブを続け、そのなかで、「安達ケ原」や「平家物語」といった古典を戯曲化し、手がけたりもしました。2013年以降、家族が病に倒れたのをきっかけに英語の勉強を始め、2016年には「古今和歌集」から101首の英語超訳「The Natural Beauty」が完成しました。そうこうするうち母が亡くなり、しばらくは、連句に夢中でした。無常の風に、抵抗して――。

当日は、思春期の読書であった『風姿花伝』の一節と絡めながら、短歌朗読をさせていただきます。