【第183回】3月「JTのM&A」

Ⅰ.日時 2018年3月15日(木)11時30分~14時
Ⅱ.場所 THE BAGUS PLACE(バグースプレイス)
Ⅲ.出席者数 74名
Ⅳ.講師 新貝康司さん@86期 (日本たばこ産業(株)元代表取締役副社長)

京都大学大学院で電子工学課程、修士課程修了後専売公社(現JT)へ入社、複数のたばこの工場現場での経験等、製造部門でキャリアを1987年まで積んだ後経営企画部で企業買収案件や多角化事業におけるクロスボーダーでの提携案件に従事。1989年同社ニューヨーク事務所所長代理、1990年JTAmerikaInc社長に就任。以後6年にわたり、抗HIV薬Viraceptの開発等米国製薬バイオベンチャーとの数々の共同研究開発案件を発掘し提携を推進、1991年から6年間バイオベンチャー企業社取締役兼任。1996年JT本社経営企画部長、2001年JT財務企画部長を経てJT執行役員財務責任者(CFO)、JT取締役、JTInternational の最高財務責任者を兼任、2011年JT代表取締役副社長に就任。2014年(株)リクルート、ホールディングス社外取締役に就任。
Ⅴ.演題 「JTの海外M&A」
Ⅵ.事前宣伝 「日本市場が成熟していく中で、海外展開の手段として多くの日本企業が、海外での企業買収を成長の手段として活用しています。JTにおいても海外たばこ事業は、1999年のRJRI社、2007年のギャラハー社と言った大型の買収を経て、現在では売上、利益ともグループ全体の過半を占める事業になりました。買収の成功は、所期の目的を果たし買収時に支払ったプレミアムを超えるシナジー効果を上げることです。しかし、買収は異なる企業どうしの謂わば結婚であり、大規模な買収になるほど、日々予期せぬことが起きることを覚悟しなければなりません。したがって、この現実を直視し、被買収企業のガバナンスをはじめとして、買収後経営の課題に如何に対処するかが、買収の成功を左右すると言っても過言ではありません。今回は、JTの海外たばこ事業でのM&Aと買収後経営を事例として取り上げ、海外企業買収成功への道のりをお話します。」
Ⅶ.講演概要 出席者には詳細な講演資料が配布されたので、今回はそれに基づき必要と思われる項目を列記することに止めたい。

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内容は、(1)JTの概要(2)たばこ事業グローバル化の特徴とその背景(3)Gallaher社買収・統合(4)JT海外たばこ事業の経営(5)グローバル経営への示唆 の5項目である。

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経営理念は、4Sモデルの追求である。即ちお客様を中心として、株主従業員、社会の4者に対する責任を高い次元でバランス良く果たし、4者の満足度を高めていくことである。

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JTグループの事業概要
(1)たばこ事業:JTグループの中核を担う事業であり世界第3位。
日本のシェアは約60%、海外においても約120か国で製品を販売
(2)医薬事業:医療用薬品に特化した事業を展開。抗HIV薬「スタリビルド配合錠」上市
(3)加工食品:冷凍麺、パックご飯といったステーブル(主食)を柱とし独自技術を活用した調味料事業、ベーカリー事業を展開

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海外たばこ事業での買収・資本参加

Gallaher社の買収を含め14社の買収等大きな買収・資本参加を行った。
最初は、1995年のRJR International社で約9,400億円、最大は、2007年のGallaher社で約2.25兆円、他は500~600億円で、買収の型を作るようになった。

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グループ全体の売上げ・利益のそれぞれ約60%は海外たばこ事業から全体の売上収益は約2.1兆円、営業利益は約5,900億円

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たばこ事業グローバル化の特徴とその背景

1985年 専売公社からJTへ・・・市場の自由化
1987年 シガレット関税 ゼロへ
1988年 対ドル約100%上昇の急激な円高:250円~125円へ
1989年 1990年後半には、国内たばこ事業の総売上本数がピークアウトするとの予測

一方、1990年代から株主資本主義が、グローバルたばこ市場で“Winner takes all”状況を現出:利益創出力の弱いたばこ企業の陥った陥穽

・株主還元競争で体力を消耗し、事業投資を怠る事態へ
・製品市場での競争力を落とし被買収企業へ

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Gallaher社 買収・統合

(1)買収後の成功は統合の成功と言える
(2)個人の結婚に例えると、結婚生活が始まってからアレ?ということが起きるのは珍しくない。買収も同様であり、「アレ?」と言うことが毎日のように起きる。また、日本でやった経験のないことをやると失敗する。何故この買収をやったのかという反省をすることも珍しくない。
(3)Gallaher社 統合におけるチャレンジ:
(イ)世界規模での統合の実施、(ロ)周到な準備、(ハ)役員・従業員の将来への不安への対処と、ビジネスへの影響の最小化(ニ)従業員の心理、行動を考慮した、短期間(100日間)での統合計画作成と必要な社内コミュニケーション、統合プロセス組織、インセンティブ検討

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グローバル競争を勝ち抜くためのM&A

(1)買収の成功=統合の成功(or買収後経営の成功):所期の目的を果たし買収プレミアムを超えるシナジー価値を実現すること
(2)買収目的の明確化
(3)3つの市場での競争力あるM&A(即ち、製品・サービス市場、人財市場、資本市場での競争力である)
(4)Value Chain 全て揃った会社に対する買収後ガバナンスの確立

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Gallaher社買収の目的:JTIを補完飛躍させる買収

(1)2007年4月Gallaher社を約2.25兆円で買収
(2)2003年11月より、JT-JTIの混成チームによる買収先検討・アプローチの実施
(3)業界再編動向を踏まえ、金額・円滑な統合・友好的買収という観点からGallaher社をターゲットに
(4)2007年8月より、事業統合開始(買収完了から統合計画策定まで100日間という短期間で完了、被買収企業の動揺を最小限に抑えるため早期に行うことが肝要)
(5)買収の狙い:マーケット、ブランド、事業インフラ、人財

(参考)
1.マーケット/ブランド・ポートフォリオの補完
2.クロージング直後から青写真の実現に専念できる体制を構築
3.買収発表までに徹底した準備作業を主体的に実施
4.統合管理体制:Integration Steering Committee(ISC:統合委員会)
Integration Management Office(IMO:統合事務局)
Excom Members(業務執行役員)
Taskforces(47の統合課題)

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Gallaher 社統合基本原則(Integration Principles)
One company-one management Fair and equal treatment of all employees, irrespective of company origin 等

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一連の買収から得た教訓
買収後経営は買収交渉前から始まる 等

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JT海外たばこ事業の経営
日本企業と欧米企業の長所がブレンドされた経営手法 等

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適切なガバナンスを前提とした任せる経営
価値規範によるガバナンス ルールによるガバナンス
適切なガバナンスを前提とした任せる経営 責任権限の明確化
徹底した見える化 主体性・オーナーシップマインドの鼓舞

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まとめ:グローバル経営への示唆

M&A全プロセスでの経営者の強いオーナーシップ発揮
強靭な国内本業の確立と自立成長の勢いが前提、多様な人財を魅きつけ多様な市場・組織をマネジメント、日本人に拘らない有為の人財登用
欧米流・日本流双方の強みの融合、対話の徹底

Ⅷ.資料 資料.pdf(3.3MB)