第一回 微笑みの国ミャンマー

2018年6月25日

 86期の倭(やまと)です。総合商社に37年勤務した中で、4度に分けて、通算12年強、東南アジアのミャンマーに駐在した経験から、ミャンマーの国と人々の魅力と、日本との深い関わりと親和性について、少しずつご説明して参ります。ご一読下さり、ミャンマーに関心を持って頂けると、誠に幸甚です。
 ミャンマーの人達は、本当に笑顔が良く似合います。いつも、自分の周りの人達との会話を楽しみ、皆で幸せな気分になりたい、という気持ちが旺盛なのです。そして、両親はもちろん、僅か1歳でも違えば年長者を強く敬い、家族を大切にします。また、外国人にも親切な中で、特に日本への憧れが強いので、私のような63歳(ミャンマーでは十分な高齢者)な日本人は、いくつかの点に注意さえすれば、とても大切に扱われ、極めて居心地が良いのです。何故そうなのか、について、長年、現地でも日本でも様々な方々や書物から学び、私なりに考えてきたことを、色々なエピソードを交えながら、申し述べてまいります。
 まず第一回は、ミャンマー人男性が妻や子供との団欒をいかに大切にするかというお話をしましょう。殆どの男性は、その日の朝、夕食を家族と食べるという前提で家を出ておきながら、仕事や友人との付き合い等で外食する、ということが出来ません。また、(残業そのものを嫌がる訳ではない人でも、)急な残業で家族を待たせるということには、強い拒否反応を示します。例えば、朝、上司である私がミャンマー人の営業マンに、「急ですまないが、自分は別の会食があるので、今晩、日本からの出張者のAさんのお相手をしてくれ」と頼むと、大抵は、一瞬青い顔をします。でも、とにかく断るということが苦手な人達なので(これについては、その内、詳細にご説明します)、一旦、すごすごと席に戻ります。そして、昼過ぎに、「下痢なんで、行けない」と言ってきて、こちらがそれでも「いや、悪いけど、君は余り食べなくても良いので、とにか頼む」などと言いますと、次は、夕方になって、ゴホン、ゴホンと大きな音で咳をしながら、「Aさんにインフルエンザを移すといけないです」と言ってきます。これ、私が実際に何度も経験した話です。もちろん、本音では飲みに行きたい、美味しいものを食べにいきたい男性も多いのですが、どうもミャンマー人男性にとって、その日になっての晩御飯の外食は、我々日本人サラリーマンで言えば無断外泊くらいの迫力で、奥さんや子供さん達を悲しませる(或いは、怒らせる)ようなのです。
 もう一つ。何か突発事態が発生して、急な残業になった場合に、その内、家から電話がかかってきます。ここで、気の弱い彼等は、その場凌ぎで、「今、会社を出るところだ」なんて言ってしまうのです。いわゆる、「蕎麦屋の出前」の催促への対応ですね。でも、蕎麦屋さんとは違って、どうしても必要だから本人の納得ずくで残業している訳ですから、すぐには帰れないので、やがてまた電話がかかってくることになります。これも何度も聞きました。
 これらは、自分の大切な家族を悲しませたくない、という気持ちのなせる業ですが、その根底には、彼等が篤く信仰する上座部仏教の教えがあります。次回は、その辺りについて、ご説明致しましょう。