第29回 「ラスベガスを楽しむ~カジノ経営の面白さ」  泉 祐彰さん@68期

reporter:峯 和男(65期)

    日時: 2005年5月18日(水)11時30分~14時
    場所: 銀座ライオン7丁目店6階
    出席者: 73名(内65会会員:江原、大隈、国政、正林、峯)
    講師: I&F CORPORATION社長 泉 祐彰氏(68期)
    演題: 「ラスベガスを楽しむ~カジノ経営の面白さ」
    講師紹介: 昭和31年に高校卒業後京都大学航空工学科修士課程終了、その後神戸大学法学部にも学んだ後、白水化学入社、社長を7年間務め昭和55年に退任。ホテルサンルート梅田を買収、ホテル経営に乗り出し、ラスベガスのホテルサンレモカジノ&リゾートの経営者となり現在に至る。
    講演内容:
    (要点のみ)
    (1) 自分は養子となり、妻の父が創業した白水化学(現在は白水テックと社名変更)に入社して社長となったが、会長となった義父と経営上の意見の相違により衝突 することが多かった。社内で会長と社長が対立したのでは良い筈がない。どちらかが身を引くとすれば創業者に譲るべきと考え1980年に社長を退任、会社と スッパリ縁を切った。会社の株もかなり持っていたが全て処分した。

    (2) その後ホテルサンルート梅田を買収、ビジネスホテルの経営に携わることになった。自分は営業などは苦手だがビジネスホテルは営業の必要がない。部屋を整え接客がきちんと出来れば良いので楽とも言える。

    (3) 1986年にグアムのホテルを買収、ハワイのホテルも買いたかったがバブルの時代で値段が高く見送った。その頃ロサンゼルスの友人からラスベガスのホテル を買収してはどうかと勧められた。カジノを経営するにはGaming Licenseを取らねばならないが、これが非常に難しいとの話を聞きチャレンジしたくなった。1億円の費用がかかったが何とかライセンスを取得、 1990年に倒産していたホテルサンレモを買収した。

    (4) 既に15年間経過何とか生き残っているが、一つの大きな理由は米国に4年間住み込んで経営に注力したことが挙げられる。現在米国には約300のカジノがあ るが外国人でライセンスを持っているのは自分とミラージュというホテルの共同経営者になっている岡田という日本人しかいない。

    (5) ミラージュというホテルは2400億円もかけ3044の部屋数があるが、自分の有するホテルサンレモは50億円で部屋数は711。現在更に50億円をかけ て改装工事中で来年2月に完成する。この機会にフーターズという会社と合弁契約を結びフーターズ・カジノ・リゾートと改名する予定。

    (6) 自分は米国が大好きでアメリカかぶれと言われる。カジノはラスベガスしか知らない。従って、自分の知っているアメリカはラスベガスを通じて知ったもの。

    (7) ラスベガスとカジノについて

    1. ラスベガスを訪れる人は年間約38百万人。従来はフロリダのオーランドが35百万人でトップだったが遂にこれを上回った。ホテルの部屋数総数は132千室。ロサンゼルスが98千室、オーランドが65千室、東京は4万室位なので東京の3倍以上もある。
    2. 訪問客は1970年は7百万人弱であったが15年後の1985年に14百万人となり、更に10年後の1995年に29百万人に倍増 その後も着実に増え続け昨年38百万人に達したもの。
    3. ラスベガスのあるネバダ州は日本の約3/4の広さ。嘗てはネバダ州とアトランティック市だけしかカジノは認められていなかったが現在はユタ州、ハワイ州以外の全ての州でカジノが認められている。
    4. カジノ経営は1/4は儲けており、1/4は倒産・経営不振に陥っている。 あとはどうやらやっている程度。規模は大きくても儲からず、小さくても儲けている。要は経営力の差と言われている。
    5. 以前はマフィアがからんでいるケースが多かった。ハワード・ヒューズとネバダ州が徹底的なマフィア退治をやり、今はすっかり健全になっている。
    6. それにも拘らず、週刊新潮が「タオル一本でもその筋を通す必要がある」などと、いい加減な記事を書いたことがあったり、石原慎太郎・東京都知事がサンデープロジェクトで「ラスベガスはマフィアが仕切っているから云々・・」などと断言したのを聞き非常に憤慨した。
    7. 自分の見るところ、日本人はカジノに不向き。これは日米の国民性の違いによる。米国人はカジノで負けても、80%はゲームを楽しんだと 割り切り、20%がカリカリする。日本人はこの逆で80%がカリカリし、20%が面白かったという。日本人はマージャンやパチンコなどスキルを伴うものが 好きで、カジノのような偶然性のゲームは好まない。
    8. 更に、日本ではギャンブルという言葉そのものに何か暗い、悪いイメージが付きまとい、金額の大小にかかわらずギャンブルをたしなむこと自体が常に反社会的な行為として見られがちである。日本人は毎日畠で働く農耕民族であり、昔から勤勉に働いて収入を得て、そうして 得た金を本当に必要な物だけに使い残りは大切に貯蓄する。そのような価値観を美徳としてきたためか、労せずして大金を得たり無意味に金を失うようなギャンブルは本能的に受け入れられないようだ。 一方、中国人、韓国人はカジノが好きでよくやっている。日本人は、ロサンゼルスに大勢住んでいながらあまりラスベガスには来ない。
    9. ラスベガスには米国中の有名レストランが出店しており、またショッピングセンターも米国中の名店が出ていて値段も安い。自分のホテルで は日本人のために日本語による Gaming Lesson を無料でやっている。ネバダ大学には、有名なコーネル大学のホテル学科に劣らぬホテル学科があり、日本人留学生が学んでいる。彼等の実習としてこのような 講座を設け、約1時間判り易く解説させている(カジノのゲームには、スロットマシン、クラップス、ルーレット、キノ、ブラックジャック、スポーツブック、 ポーカー、ビデオポーカー等がある)。
    10. 自分の意見では、日本にカジノを作るのであれば淡路島全体をカジノにするくらいのスケールの大きなものでなければ意味が無い。東京のお台場などでは問題にならない。しかし今の兵庫県知事はカジノに大反対なので実現の可能性は先ず無いであろう。
    11. 米国の良さは法律で規制されていない事は何をやっても良いよいう自由さにある。 米国人は子供の頃から学校で盛んにディベートをやっており、自分の考えがどうであれ、賛成・反対に分かれ、論争 して相手を負かす訓練をしている。従って、これが身に付き、変化への抵抗が無い。それ故、政治面でも共和党、民主党の政権交代があるが日本ではなかなかこれが出来ない。日本のこういう点に歯がゆさを感じている。
    【報告者注】ラスベガスの数字(講師から配布された資料より抜粋)
    1970年 2004年
    訪 問 客 約7百万人 38百万人
    ホテル部屋数 25千室 131千室
    人   口 273千人 1641千人
    カジノ売上 約4億ドル 87億ドル
    旅行一回当たりカジノ予算 545ドル