| Ⅰ.日時 | 2026年5月20日(水)11時30分~13時00分 |
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| Ⅱ.場所 | バグースプレイス パーティルーム |
| Ⅲ.出席者数 | 45名 |
| Ⅳ.講師 |
寺岡 加代さん@79期(東京科学大学名誉教授)1964年3月 大阪学芸大学附属天王寺中学校卒業 1967年3月 北野学校卒業 1974年3月 大阪大学歯学部卒業 1978年3月 大阪大学大学院歯学研究科修了 1979年10月 大阪大学歯学部保存学講座助手 1983年4月 東京医科歯科大学予防歯科学講座講師 1985年7月 University of North Colorina Post Doctoral Fellow 2000年4月 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 医療経済学分野講師 2004年4月 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 口腔健康教育学分野教授 2014年4月 東京医科歯科大学(現東京科学大学)名誉教授 2016年4月 梅花女子大学教授
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| Ⅴ.演題 | 『高齢期にこそ知っておきたい誤嚥性肺炎の原因と予防』 |
| Ⅵ.事前宣伝 | 誤嚥性肺炎は人口の高齢化と運命共同体のような関係にあり、2017年に死因統計分類(厚生労働省)の変更により独立項目として明確に区分・集計されるようになりました。以降、その死亡者数は増加の一途を辿っています。一般的な感染性肺炎とは異なり、治療後も再発リスクが高いという特徴があります。誤嚥は脳血管疾患などの後遺症として生じる場合がある一方で、加齢に伴う筋肉の衰えにより多くの高齢者に認められる老化現象という側面もあります。今回は「嚥下の仕組み」の概説から、「誤嚥の原因」を整理し、さらに生理的老化による嚥下機能の低下に焦点を当てた「予防のための日常習慣・簡単体操」をご紹介します。 |
| Ⅶ.講演概要 | 紹介者は高校と大学を通しての同窓生、成本洋子さん(79期) 「寺岡さんは、2015年8月19日【第152回】「高齢期にこそ知っておきたい口腔ケア」 に続き二度目の登壇となります。寺岡さんは北野高校卒業後、大阪大学歯学部へ進学されました。30代の時に大阪大学歯学部保存学講座助手から東京医科歯科大学予防歯科学講座講師へとなられ、海外留学を挟んで同大学の教授から、現在では(現)東京科学大学の名誉教授に就任されています。女性でそこまでになられた方は、私たち同世代の中では、大変まれで貴重な存在です。」 ~はじめに~誤嚥(ごえん)とは、本来「食道」に入るべき食べ物や飲み物が、誤って「気管」に入ってしまう状態のこと。誤嚥は脳血管疾患などの後遺症として生じる場合がある一方で、生理的な老化に伴って徐々に起こる「筋肉の衰え」が引き起こす現象でもある。しかし、加齢による筋肉の衰えは、筋肉を鍛えることで老化のスピードを落とすことができる。 本日は生理的な老化現象の一つである「誤嚥」の原因と予防について紹介したい。
誤嚥性肺炎は、2017年度に厚生労働省の人口動態統計で、初めて独立した疾患名として採用された。統計を取り始めて10年も経たない疾患だが、2023年度の統計では死亡原因の第6位に挙げられた。2017年度から2023年度の6年間の統計では、この疾患による死亡率が1.68倍に上昇している。特に2020年ごろからの上昇が大きくなり、将来はさらに増えると予想される。また、亡くなった人の99%が65歳以上であることから、誤嚥性肺炎は高齢者の疾患と言える。
~咀嚼・嚥下のプロセス~嚥下は咀嚼の段階で問題(歯のかみ合わせの不具合、舌の麻痺、唾液分泌の減少など)があると、円滑に進まない。 したがって咀嚼は、食べ物を正常に飲み込むための準備過程であると言える。
1)咀嚼のプロセス ①食べ物を口腔に取り込み、口唇が閉じる。 ②咀嚼する。 ・食物を噛んでのみ込める大きさにする。舌・奥歯・頬筋の協働作業。 ・舌が奥歯に食べ物を運ぶ。舌と頬筋で食べ物を挟み、上下の奥歯で噛む。 ・飲み込めるくらいの、まとまった食塊を形成する。上顎・舌・奥歯の協働作業。 ・この時、唾液が食塊を包み、食塊の表面をなめらかにする。 ・まとまった食塊を舌の上と硬口蓋で挟む。(⇒嚥下へ)
2)嚥下のプロセス ①飲み込み前:空気は鼻からはいって気管を通る。食道は閉じている。 ②飲み込み中:嚥下中枢の働きで嚥下反射が起こる。 鼻腔と口腔の境目が閉じられ、咽頭蓋が閉じられ、声門が閉鎖され、完全に空気を遮断する。(舌骨が挙上し、気管の入り口が閉じて、食道の入り口が開く) ③飲み込み後:気管を閉じた状態で、食塊が食道を降りてゆくと、食道の入り口が閉じて気管の入り口が開く。(①に戻る)
3)嚥下反射のメカニズム ①口腔内圧が高まり、咽頭方向へ食塊が移送される。 ・口唇が閉じる。 ・口腔の前方部が舌により閉鎖される。 ②気管入り口が閉じられ、食塊が咽頭から食道へ送り込まれる。 ・嚥下反射により、鼻咽頭が閉鎖され、喉頭蓋が舌骨挙上により気管入口を閉じる。同時に食道入口が開く
・一連の嚥下動作(嚥下反射)はわずか0.5秒で行なわれる。 ・就寝中も唾液を誤嚥しないようこの動作を繰り返している。 ・一日の嚥下回数は500~1000回と言われている。
~おさらいクイズ~1)プリンや豆腐(やわらかい食べ物)の飲み込むのに歯や義歯は必要か?⇒必要 ・食べ物をつぶすだけなら歯は必要ないが、飲み込むためには、歯・義歯が必要。 ・まとまった食塊を形成するのに歯列がストッパーとなって舌背の中央が凹型になり、舌がスプーン状になる。 ・口唇を閉じ、奥歯がかみ合った状態で舌を上顎に押しつけ、口腔内圧を上げる。奥歯がかみ合わないと舌が不安定になり、内圧が上がらず、咽頭へ送り込む力が弱まる。 2)口唇を開けた状態で、唾液を飲み込めるか?⇒飲み込めない ・口唇がわずかでも開いていると、口腔内圧があがらず飲み込めない。 ・脳血管疾患などの神経性後遺症で口唇に麻痺があると、唇がしっかりと閉じられず、正常に飲み込むことが出来ない。
~嚥下モデルのCGビデオ~嚥下反射のタイミングにずれが生じる場合、気管に水が入る。特に声帯の動きに注目。
1)正常な嚥下では、気管と声帯は完全に閉じている。水は気管に入らない。 2)飲み物の流れが速い場合、声帯が閉じる前に水が流れ、気管に水が入る。(誤嚥) 3)飲み物の流れが遅い場合、声帯が開いてから水が流れ、気管に水が入る。(誤嚥) 高齢者向けの食べ物(水分)はとろみをつけて誤嚥を防ぐ。しかし、とろみ加減には注意が必要である。
~誤嚥の原因と症状~1)誤嚥の原因 ①加齢:舌・顎・喉周辺の筋力低下、歯のかみ合わせの不具合、唾液分泌量の減少 ②病気:咽頭癌などの器質性障害、脳血管障害などの運動性障害 ③薬の副作用:睡眠薬・筋弛緩剤などの薬剤性嚥下障害
2)嚥下機能低下のサイン ・むせる、咳が出る、痰の量が多くなる、喉の違和感、声の変化(嗄声:かすれ声)など。 ・「むせ」と「咳」は別物。「むせ」は異物が気管への侵入を防ぐ防御反射、「咳」は気管に入った異物を外に出す排除反射。 ・痰の量が増える原因:少量の誤嚥により気管に入った異物を排除する働き。 ・嗄声(させい)の原因:声帯の筋肉量が減少し、声門の開閉不全がおこり、声が弱まる。
3)「むせ」ない誤嚥(不顕性誤嚥)について。 ・不顕性誤嚥は寝たきりの人に多い。 ・咽頭・喉頭の感覚低下、嚥下反射・咳の反応(喀出力)の低下。 ・「むせ」が見られないと周りは誤嚥に気づかない。夜間に唾液が気管に入り、誤嚥性肺炎を起こしやすい。
4)嚥下機能低下のサインを感じた時の評価方法 ・簡易評価(RSST) 30秒間で何回、唾を飲み込めるかを試す。3回以上なら正常範囲、2回以下なら嚥下機能低下の疑いがある。 ・嚥下内視鏡検査(VE)不顕性誤嚥の確認 ・嚥下造影検査(VF)
~誤嚥による肺炎発症のメカニズム~①飲食物、口腔細菌、唾液などを誤嚥する。 ②誤嚥した物が気管から肺に入る。 ③肺が炎症を起こす。 ・解剖学的に見て、右の気管支の方が太く、傾斜も大きくなっているため、誤嚥性肺炎は右肺に起こりやすい。 ・肺炎発症は攻撃側と防御側のバランスで決まる。同じ量の嚥下物が肺に入っても(攻撃)、防御力(免疫力・嚥下力・喀出力)が強ければ発症しにくい。したがって予防には、攻撃側と防御側の両面から対策が必要である。 ・誤嚥性肺炎と診断されたら、原則、経管栄養や胃ろうなどが行なわれ、口から食べられなくなる。
~口から食べられないと生じる3つの問題~1)唾液の分泌量が減少する。 ・人体の入り口のバリア機能として、唾液は非常に重要な役割を果たしている。 ・唾液の分泌量が減ることにより、口腔内の湿潤作用(咀嚼と嚥下を助ける)や排泄・抗菌・緩衝・消化作用などが減少する。すると口腔細菌が増殖し、それらが気管から肺に移って誤嚥性肺炎を発症するリスクが高まる。 ・経管栄養や胃ろうの人は唾液の量が減り、食べなくても口の中が汚れる。口から食べられない人の口腔内は清潔に保つことが重要。 2)免疫機能が低下する。 免疫細胞の6~7割は腸に存在する。口から食べられない期間が長くなると、小腸からの栄養吸収量が減る。すると小腸粘膜の廃用性萎縮が起こる。腸管免疫細胞が減り、腸管免疫機能が低下、癌・感染症などに罹患しやすくなる。 3)咀嚼による脳への刺激が減少する。 脳への刺激(脳血流が増加、認知機能の維持と低下予防、海馬(記憶)の活性化)が減少する。噛めない生活が続くと、前頭前野や海馬などの機能が低下し、認知症が進行する。
~誤嚥の予防(訓練)方法~加齢に伴う嚥下機能低下である老嚥(老人性嚥下機能低下)はケアや訓練などによって進行を緩やかにすることができる。 1)誤嚥物(飲食物、口腔細菌(歯垢)、唾液)の量と質の改善 ①口腔ケア(口腔清掃) ・歯に付着している歯垢(デンタルプラーク)は細菌(雑菌)の塊。加齢が進むと歯並びがずれてプラークが溜まりやすくなる。歯と歯の隙間や歯と歯ぐきの境目のプラークは、歯間ブラシや数種類の歯ブラシを活用し、時間をかけて丁寧に取り除く。義歯の裏側やバネ回りの汚れもしっかり取り除く。 ・就寝中は唾液の分泌量が減るために、口腔内の細菌が増える。就寝前の口腔清掃が重要。 ②唾液の分泌量を増やす。 ・咀嚼回数を増やす。噛みごたえのある物をしっかり噛む。 ・唾液腺マッサージを行なう。耳下腺、顎下腺、舌下腺への刺激(配付資料参照)
2)体力と免疫力の向上 食事(栄養)+運動+休養(睡眠)
3)咀嚼力と嚥下力の向上(配付資料参照) ①咀嚼力の強化(口唇と舌の筋トレ) ・パタカラ体操 「パ」口を閉じる力 「タ」押しつぶす力 「カ」咽頭へ送り込む力 「ラ」まとめる力 咀嚼力の低下は、舌・口唇機能検査(オーラルディアドコキネシス)や舌圧測定などで測定できる。これらの検査は歯科医院で実施されている。口腔機能低下症(2018年~)と診断されると健康保険が適用される。 ②嚥下力の強化 (喉ぼとけを挙上する筋肉を強化) 高齢者は喉ぼとけを吊り下げている筋肉(舌骨上筋群)の減少により、成人に比べ、喉ぼとけの位置が低く、“ごっくん”とのみ込む時も喉ぼとけを上げる力が弱い。したがって食道入口の開き方が不十分になり、気管入りやすくなる。 ・頭部挙上訓練(シャキア・エクササイズ) 頸に大きな負担がかかるので、高齢者にはあまりお勧めしない。 ・嚥下おでこ体操 「喉ぼとけ周辺の筋肉を鍛えている」と意識して行なうと効果があがる。 ③食べる前の準備運動(施設やリハビリ病院で実施されている) 誤嚥は食べ始めのひと口目で起こりやすいので、食べる直前に行なうと効果がある。 (1)深呼吸で呼吸を整えリラックスする。 (2)頸・肩周辺をほぐして筋肉を柔らかくする。 (3)パタカラで口・舌などの動きをスムーズにする。 (4)最後に深呼吸をして副交感神経を優位にして消化液分泌・消化管運動を促進する。 4)喉を鍛える日常習慣(無理なく楽しく続けられる習慣) ①うがい⇒少なめの水で「喉を鍛えている」ことを意識しながらしっかりうがいする。 ・舌骨/咽頭・喉頭周辺の筋肉を鍛える。(嚥下機能の維持) ・咽頭感覚を刺激する。(嚥下反射の活性化) ・食物残渣・口腔細菌・分泌物を減らす。 ②声を出す⇒会話、音読、歌などにより、声帯と声帯周囲筋を鍛える。 ・人と楽しくおしゃべりをする。 ・天声人語や平家物語の冒頭部分を毎朝音読する。 ・お風呂に入ったら、歌を一曲歌ってから出る。お勧めは英語の歌。LとRの巻き舌の発音が舌筋の強化によいと思う。
~本日のまとめ~高齢者の誤嚥性肺炎は再発が多く、根治が困難。したがって、老嚥の段階での予防が重要。 予防は①体力・免疫力(健康三原則)②口腔ケア③咀嚼・嚥下の筋トレの総合的な観点から行なう。
「お揃いの 湯飲み茶わんで むせている」2026.1.21朝日川柳(山丘春朗選)より
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| Ⅷ.質疑応答 | 清徳則雄さん(79期)
Q:同期の友人が喉頭癌の手術を受けてから、飲み込むのがとても辛くなったと話していました。何か良い改善策はありませんか? A: 咽頭癌などの器質性障害ですと、喉に異物ができている状況ですので、筋トレで症状を緩和するレベルではなく、大変お気の毒に思います。
瀬戸馨さん(85期) Q:誤嚥を防ぐのに良い食べ物はあるのでしょうか? A:誤嚥を防ぐのには咀嚼機能を保つのが重要で、それにはかみ応えのある食べ物が有効です。年を重ねますと、噛まなくても良いやわらかい食べ物を選びがちですが、実はやわらかい食べ物は噛まないことで口の中をひどく汚します。もし誤嚥が起きた時には、肺に雑菌がたくさん入ることになり、肺炎を発症しやすくなります。
蓑原律子さん(96期) Q:就寝中に起こる誤嚥の話がありましたが、どのような姿勢で眠ると誤嚥を起こしにくくなりますか? |
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記録:野田美佳(94期) |
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| Ⅹ.講演風景 | ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |







