第62回 「地域活性化とカジノ」  中山行輝さん@80期

reporter:峯 和男(65期)

    日時: 2008年2月20日(水)11時30分~14時
    場所: 銀座ライオン7丁目店6階
    出席者: 62名(内65会会員:大隅、正林、山根、峯)
    講師: ギャンブリング・ゲーミング学会理事 中山行輝氏(80期)
    演題: 「カジノと地域活性化」
    講師紹介:
    (講師より聴取)
    東京大学法学部卒業後日本開発銀行(現日本政策投資銀行)入行。営業第三部、経理部等を経て(財)中東経済研究所(現エネルギー経済研究所)主任研究員 (出向)。その後高松支店審査課長、設備投資研究所主任研究員、企画部(現プロジェクトファイナンス部)副長 /企画審議役、(財)大阪湾ベイエリア開発推進機構総務部審議役/部長(出向)、設備投資研究所次長等を歴任。以後(財)南西地域産業活性化センター(沖 縄)上席研究員、アジア太平洋トレードセンター㈱取締役、㈲大分TLO技術移転スペシャリストへ出向。㈱くろがね工作所へ常勤顧問として出向後日本政策投 資銀行を退職、同社に転籍し現在に至る。
    【教職歴】琉球大学法文学部非常勤講師(「地域経済論」)、大分大学地域共同研究センター客員教授(兼務)。
    (著作・投稿)エコノミスト(1990年9月4日号)「フセイン独裁の権力構造」。大阪商業大学アミューズメント産業研究所(2003年3月)「カジノ導入をめぐる諸問題>1<」(共著)他。
    【委員歴】環(わ)の時代懇談会委員(旧環境庁、座長:近藤次郎元中環審会長)、沖縄国際情報特区構想の推進方策等に関する調査研究会委員(旧郵政省、座長:仲井真弘多現沖縄県知事)他。
    講演内容:
    (要点のみ)
    【カジノが日本で実現していない七つの理由】

    • そもそも刑法に抵触する
    • 倫理的(宗教的)抵抗感
    • 家庭崩壊、ギャンブル中毒の増加
    • 犯罪増&治安維持コスト増
    • 既得権者(パチンコ・公営競技等)からの反対……アングラカジノも反対
    • バブル崩壊以前の日本経済への信仰&歳(出)入は何とかなるとの漠然とした国への信頼
    • 世界の趨勢・状況変化に対する情報・認識不足……変化を嫌う国民性も

    【昨今導入論が出てきた五つの背景】

    1. 規制緩和の流れ
    2. 観光/集客による国/地域の振興/活性化
    3. 雇用機会の創出……ディーラー等スタッフの直接雇用に加え二次波及も
    4. 新たな財源の確保
    5. 低未利用地の活用(大都市圏臨海部=お台場、大阪南港等)
      ※2~5の総合点で誘致の声が強くなる傾向

    【カジノ導入の四つの「弊害」】

    1. 組織暴力の介入を招く?
      →徹底した管理・監視により排除(ハワード・ヒューズのラスベガス登場以降の適正な競争状態も寄与)……米国でマフィアの介入は現在全くない
    2. 犯罪が増加する?
      →犯罪発生率は上昇しない(ラスベガスは安全も売り物に)
    3. 青少年への悪影響は?
      →toto(スポーツ振興=サッカーくじ)導入時の議論を想起、むしろ Spirit of Capitalism を知る機会に!
    4. ギャンブル中毒者がまた増える!?
      →一定率のギャンブル依存性発生を認めつつ、正面から更正にも取り組み(収益の一部を充当)副次的マイナスを軽減する

    【違法性阻却の四つの手法】

    1. 刑法の改正……正面突破は極めて困難!
    2. 風俗営業適正化法改正で実質認可(パチンコ類似)……3店方式の換金は?
    3. 特別法で公営競技として追加(競馬・競輪・競艇と同様)……特定官庁の影響大?控除率25%は?
    4. 地域を挙げて合法化……ある種の特区として、但し何らかの国法での違法性阻却が必要……カジノ特別法を作る、関連法も整備の要

    【カジノ収益の地域還元四例】

      参考:ラスベガス所在のネバダ州はカジノ事業税により所得税、法人税がゼロ

    1. 観光・産業振興、自然環境の改善、街づくり等
    2. 福祉財源に
    3. 人材育成へ
    4. 新規事業/コミュニティビジネスのシーズとして
      ……何れにしろ使途を明確化し説得力を高める努力も平行して行うこと

    【推進体制を支える三つの柱】

    1. 前提となるのは地域住民の理解・総意(合意形成)
    2. 事業の中核はやはり民間(地元企業・中央資本・外資)
    3. 管理・監督責任は民間と行政(地方・中央)双方が担う
      ……事業方式は公営/民営/公設民営等が考えられるが、何れにしろ官民協力(PPP)は必須

    【むすび】
    我が国のカジノは地域の総合的(複合的)魅力作りが基本となる。そして国際観光のツールに限定するのではなく、国内観光に広げ、さらに周辺地域の人々も (非日常ではあるが)楽しみの選択肢として(徹底した管理下で)気軽に参加できるものとするべきであろう。マカオがラスベガスを凌駕しシンガポールも導入 を急ぐ今、タブー視せず真面目に検討を進めて行く時期と考える。

    (報告者注)
    1.ギャンブリング・ゲーミング学会とは:
    日本においてギャンブリング・ゲーミングに関する研究を促進することを目的として設立され、大阪商業大学アミューズメント産業研究所に事務局を有する。会長は同大学の谷岡一郎学長。
    活動内容以下の通り:

    • ギャンブリング・ゲーミング研究
    • ギャンブリング・ゲーミングに関する情報収集および整理
    • 研究会・講演会等の開催
    • 研究結果の出版・公表
    • 他の関連学会・機関との連絡および協力
    • その他目的達成のために必要とされること

    2.国会議員の動き:
    共産党を除く各党ともに観光資源としてのカジノに関心を持ち、自民党は百数十名の国会議員の参加により「国際観光産業としてのカジノを考える議員連盟」 を設立、政務調査会観光特別委員会に検討小委員会もでき、平成18年6月「我が国におけるカジノ・エンターテイメント導入に向けての基本方針」を決定、数 年以内の導入実現を図るべきと提言している。