第18回 「俳句の楽し み~私と俳句」   大隅徳保さん@65期

レジュメ(当日配布資料)

reporter:峯 和男(65期)

    日時: 2004年6月16日(水)11時30分~14時
    場所: 銀座ライオン7丁目店6階
    出席者: 58名(内65会会員:大隅、岩下、江原、大塚、岡田、梶本、国政、古山、笹本、正林、高橋(相)、三上、山根、峯)
    講師: 元住友シチックス米国社副社長 大隅徳保氏 (65期)
    演題: 「俳句の楽しみ~私と俳句」
    講師紹介: 65期卒。神戸大学経営学部卒業後住友金属工業入社、31年間勤務の後、大阪チタニウム米国社社長、(組織及び社名変更後の)住友シチックス米国社副社長等を歴任。現在、俳句結社「門」同人、俳人協会会員、国際俳句交流協会会員。平成15年11月に第一句集「抜錨」上梓。
    講演内容:
    (要点のみ)
    (1)今朝、鶯の声を聞いた。俳句では今頃鳴く鶯を「夏鶯」や「老鶯」と言い俳句の季語になっている。春には「梅に鶯」と言われている様に昔から「鶯」は我々に親しい鳥である。 因みに、何故「梅に鶯」と言われるのか。その理由は「梅」に「蛾」の幼虫がおり、これを食べるために「鶯」が寄ってくるからである。 「梅」も「鶯」も俳句では春の季語であるが、この様に日本の風土は四季に恵まれ俳句の生まれる素地がある。

    (2)先月米国へ行き、ロサンゼルスからニューヨークまで15日間のバス旅行をして来たが、自然や風土の日米の大きな違いを再認識した。 矢張り俳句は日本の風土から生まれるべくして生まれたものとの感を強くした。

    (3)後記レジュメⅠ.「俳句の喜び」について
    俳句は「出会い」である。自然、人、季節との出会いの喜びがある。ここに紹介した3つの句。第一句は卒業式の悲しみの表現。第二句は娘を嫁がせる親の気持ち。 第三句は我々と同期の小野京子氏の「金子みすず顕彰全国俳句大会知事賞受賞」の秀句である。 また、その次に挙げた2つの文章は、俳句を愛する人の気持ちを素直に表したものとして紹介した。

    (4)レジュメⅡ.私の「俳句」生活について
    1)自分は高校、大学時代を通じハンドボールに打ち込んでいたので、どちらかと言えば体育会系であった。 しかし、大学時代に天王寺高校出身の仲間に誘われて彼等の句会に参加する機会があり、それが最初の俳句との出会いであった。 その後、山口誓子・日野草城氏の句集を読み、いずれも住友の人達であったので住友へ行けば俳句が出来ると思い住友金属工業に就職した。
    2)ところが、入社後の鉄鋼界は労働争議の連続で俳句どころではない状態が続き、その後も仕事中心の生活のため約18年間俳句を中断せざるを得なかった。 しかし、いつかは又俳句をやろうという気持ちがあり、その時より「不惑」の40歳になったら再開しようと決めていた。
    3)自分の過去のビジネスキャリアーの中で印象に残る事が3つあった。
    (イ)イラン・イラク戦争:
    イランに石油掘削用のパイプ用厚板を売るにあたり、住友金属が日本側の幹事会社であったため自分がテヘランへ行くことになった。帰りはドバイからカラチ、 香港経由で帰国したがこれらの土地はいずれも俳句には馴染まない風土と感じた。
    (ロ)日米鉄鋼交渉:
    当時の通産省に同行しワシントンに15日間滞在、余暇を利用してナショナルギャラリー等を見物、美術館・博物館は素晴らしかった。しかしこの地も俳句は別の世界と感じた。
    (ハ) 米国駐在:
    「新産業の米」といわれるシリコン製造・販売の米国会社に駐在したが会社はアリゾナ州、ニューメキシコ州に新工場を建設し、このため砂漠の真ん中にある工場によく出かけた。 砂漠の風土は人間に厳しい環境であった。
    4)句集「抜錨」紹介:
    昨年11月に第一句集を出したが、本来はもっと若い時に最初の句集を出しているのが普通。作った俳句は自分史として大切にしているが、句集には海外吟の多くは割愛した。

    (5)レジュメⅢ.「俳句の効用」
    1)会社の定年後に俳句を始める人が多い。現在の高齢化社会においては65歳から始めても10~15年は充分俳句を楽しむことが出来る。俳句をやると感性が磨かれ精神的にも若々しくなり健康にも良い。
    2)この項で99歳の人の俳句を紹介したが、この方は神戸大OBの俳句同好会を発足させた方。惜しくも今年亡くなられたが、これだけ高齢になっても俳句は一生続けられた。また、過去の経験や趣味が俳句の中に生きてくることは度々実感することである。
    3)「右脳俳句」という本がある。右の脳は心の文化活動を司り想像力、直観、イメージ等に関係する。左脳は知識、論理等に関係するが左右の脳のバランスが大切。我々はどちらかと言えば左脳を使うことに偏り過ぎて来た嫌いあり、 俳句を作ることによりこのバランスも良くなると思う。
    4)同齢の人で最近俳句を始めてから「この齢になって年賀状が増えた」とか「道を歩いても周りの草花に関心が行く」、又、「俳句の会に出席して色々の人と出会える」と言った声を聞く。    これも俳句の効用であろう。

    (6)レジュメⅣ.「句遊会」の紹介
    約3年前に我々65期の仲間でパソコンによる「65ML」という“メル友の会”が出来、その後その中の有志でインターネット句会を始めようという動きが出た。  これは「座の文学」ではなく、全てパソコンを利用して行なう新しい試み。一ヶ月をワンサイクルとし「投句」、「清記」、「選句」、「選評・鑑賞」等をすべてパソコンを通じて行なっている。  当初、14~5名のメンバーが現在は22名になっている。既に2年半続いており、昨年は卒業50周年を記念して「合同句集」も発行した。  この項で紹介しているのはその句集にも載ったメンバーの句であり、男性はいずれもこの句会開始を機に俳句を始めた仲間である。この句会は現在も続いており、今後も継続することは間違いないと信じている。

    (7)レジュメⅤ.「俳句入門」
    短時間で俳句の作り方を述べるのはあまり適切ではないので省略するが、俳句を始めるきっかけは、「結社・サークル」への加入、新聞雑誌への応募、カルチャー教室への入会等いろいろとありその選択肢は広い。 俳句に関心のある人にとって最も重要なことは「歳時記」を読むことである。「歳時記」は「季節の百科事典」としていろいろなことを教えてくれる。これに「辞書」があれば俳句は作れる。

    (8)おわりに
    俳句の「5・7・5」は最も美しい音律であり、美しい自然に恵まれたこの国に生きる者として、四季ある風土に感謝し、この美しい音律を信じてまず俳句を作ってみては如何であろうか。 「健康」で「長生き」の俳句「的」生活を大いにお薦めする次第である。