ポラントリュイだより: スイス・ジュラの年中行事~復活祭編

2010年2月28日

クリスマスパーティの楽しみ:手作りデザート
▲2006年3月4日から5日にかけて降った60年ぶりの大雪で、ポラントリュイはすっかりマヒ状態
雪かきをしなければ車も動かせない。
(ジュラ=大雪という印象らしいが、近年のポラントリュイでは年間を通じてほとんど雪が降っていない)
クリスマスからは、学校、そして多くの会社も休みで、スイスの家族は揃ってスキー休暇に出かけたりする。
12月31日、日本で言う大晦日は、スイス・フランス語圏では聖シルヴェスターと呼ばれる。(ローマ教皇であり聖人に列されたシルヴェスター1世の命 日)この日の夜は、家族や友人達を含め、大勢で集った方が楽しいかも知れない。11時59分を過ぎるとカウントダウンが始まる。零時きっかりには花火を上 げ、「新年おめでとう!」と、皆が抱き合い、キスし合う。私は家族でしか祝ったことがないが、この瞬間だけは、見知らぬ人にもキスして良いそうである?!
日本のような、「正月らしい」風情はスイスにはまったくない。それに、1月3日から店も会社も休暇明け、平常通りに営業を始める。学校だけが、その週末 までかろうじて休みである。

「王様ゲーム」ができるパン
▲「王様ゲーム」ができるパン
(公現祭のころ、スーパーやパン屋で売られている)
別にたいした遊びではない、と思いつつも
自分の取り分を選ぶ時は結構真剣になってしまう
玄関前を雪かきした
▲我が家の前。60cmは積もっていた
生まれて初めて雪かきをし、玄関から
道に出る通路を作った!

カトリック・プロテスタントでは、1月6日は公現祭(Epiphanie)と言い、休日ではないが、生まれたばかりのイエスを東方の三博士が訪問したこ とを記念する。ほとんど祝いらしい祝いはしないが、各家庭では主として買って来た写真のようなパン、またはガレット・ド・ロワ(王様ケーキ)を分けて食べ る。そして、自分の取り分の中に小さな王様人形が入っていた人が冠をかぶり、命令をすることができるという他愛ない遊びがある。

1月、2月はかなり寒く、冴えない天気が続き、春はまだ遠い気分である。謝肉祭(フランス語でCarnaval・カーナヴァル)の仮装パレードやどん ちゃん騒ぎの翌日からは四旬節といい、復活祭まで祈りと断食の46日間だが、現在ではそれを実行する人は一般市民にはほとんどいないと断言できる。
3月、春らしくなってきたかと思いきや、いきなりドカ雪が降ったりするので油断はできない。どんなに暖かくなっても、自動車の冬用タイヤは4月までキー プしていた方が無難である。標高が高い地方では、雪は季節を問わず降ることがある。
暖冬が続いていたスイス、「地球温暖化の影響なのね! 昔はこんなに降ったのに……」と、スイス人の誰もが憂いを口にしていたここ数年だが、今年に限っ て言えば、文字通りの厳寒、ポラントリュイでも何度も雪が降り、毎日零度前後、冬らしい冬とは言え、少しうんざりしていた。そのこともあり、春を待つ行事 でもある復活祭は、今年は特別楽しみにされていた。
復活祭は基本的に「春分の日の後の最初の満月の次の日曜日」に祝われるため、年によって日付が変わる移動祝日である。クリスマスは毎年同日だが、復活祭 の日によって他のすべてのキリスト教行事の日程が決まる。
イエス誕生を祝うクリスマスと並び、いや、それ以上に、十字架に架けられ処刑されたイエスが三日目にキリストとして復活したことを記念する復活祭は、キ リスト教徒にとって大切な行事である。去年のクリスマスイヴのミサで、司祭が「クリスマスは復活祭の始まり」と言い、「もう復活祭の話かい」と参列者の間 でウケた。真の意味は、復活祭なくしてクリスマスは成り立たない、ということだ。イエスが十字架に架けられ、処刑され、復活しなければ、神の子としてのイ エスの誕生日=クリスマスを祝う意味がない、ということだ。

「イースター・エッグのなる木
▲義母が飾りつけた
「イースター・エッグのなる木」
スイスのお母さんのアイディアの豊富さには驚かされる

多産であるウサギも復活祭のシンボル
▲私の住むアパートの管理人の
奥さんによる飾りつけ
躍動感溢れ、多産であるウサギもまた復活祭のシンボルとなっている

定番のウサギチョコ
▲この時期、どこへ行っても
プレゼントは「ウサギチョコレート」
左が「デカ卵を背負ったウサギ」
右が「耳垂れウサギ」

卵型のイースター・ケーキ
▲友人家族からいただいた
卵型の「イースター・ケーキ」
見た目はこってりだが、メレンゲが多く
ふんわり、あっさりしていて美味しかった

復活祭に関する習慣について少し述べておく。「イースター・エッグ」と英語で言った方が日本人には分かりやすいだろうか。学校や家庭では卵の殻に様々な 色で模様を描いたり、卵(我が家では卵ではなくチョコレート)を庭や家に隠して子供達が探すというゲームもある。卵は、もともとヒナが卵から生まれること をイエスが墓から出て復活したことに結びつけたもの、また、冬が終わり草木に再び生命が甦る喜びを表したものと言われている。
クリスマスギフト用のチョコレートがようやく商店からなくなったと思っていたら、今度は復活祭用チョコレートの登場だ。どのスーパーにも山積みで置いて あり、ウサギ型、卵型(卵にトリュフチョコが植わっているという凝ったものである)など、大きさも包装も様々。どうせあちこちでもらってくるので、我が子 には敢えて買わない。親戚の子供達のために大量に購入し、復活祭当日まで壊れないように保管しておく。

復活祭前の金曜日は、イエスが処刑された日、ということで肉類は食べず、魚を食べるという習慣がある。ミサでは司祭が地に伏し(最初見た時はびっくりし たが)、十字架に架けられたイエスのための嘆きを表現する。復活祭前夜に当たる土曜のミサは非常に長い。私は2006年、この日に洗礼を受けたが、普段の 2倍以上の時間がかかるミサであった。残念ながら、復活祭の日曜ミサに出席したことがないのでどんなものかは書けない。いつも義父母に招かれ、家族で集 まって食事をするからである。チョコレート探しゲームはこの日。
どういう祝い方をするにせよ、春の復活を喜び祝い家族で集まることは、クリスマスに続き、何物にも替えがたい幸せをもたらしてくれるのである。