われら六稜人【第28回】女性公務員の歩んできた道

6号線
お客様のための電車-公共サービスの意味-

    私たちの世代は、初めての女性管理職という世代ではないのよね。次くらいの世代で。先頭切った、男勝りに仕事をばりばりやってっていう人たちの段階から、 家庭や子育てと仕事をどう両立させていくか、職場の女性差別を先頭切っていった人のように跳ね返して行くんでなく、女性であることを当然として、どう働き やすい、また、自分の能力を生かせる場をつくっていくか、なんていうことに、悩みながら仕事をしてきたわけ。もちろん、私だって、いつもこうしたことばか り正面切って悩んでいたわけではないけれどね。

    同期入庁の女性は、たしか5名だけど、同じようなかたちで残っているのは私ともうひとり。他は、結婚退職、家裁の調停員、それから学校の先生ね。まあ、こ れから女性の職員や管理職はますます増えてくるでしょうけど、仕事の分担の中に、対等に女性がいることが当たり前で、男ばかりでいるよりも、さらに仕事が 円滑に進むという状態をつくろうということが大切な気がしますね。

    後輩の女性職員について言えば、私も何回か新規採用の面接やらなんやらをしてきましたけど、みなさん勉強していますね。 むしろ、そういう優秀な人材をうまく生かせないことが問題ね。管理職試験なんかでも試験に通る女性は、だんだん増えていますね。一番若手の試験では、女性 が半分くらいかな。これは歓迎すべきことですね。だんだんあがるに連れて、少なくなりますが・・・。
    それと、俗っぽい話になるけど、よく、女性はペーパーテストには強いけど、実際の職務では・・・とか、管理能力が・・・とか言うような話がよくあります が、これは、男女というよりも、人それぞれと思いますね。男でも、ダメなのはダメ。同じ条件を与えられて教育訓練されていますからね。

    仕事の中身も、女性だからと言うこともありませんし、女性の人数も増えているから、責任ある地位も女性が就いていかないとならない し・・・。男女差よりも、個人差の問題として捉えていくことが大切ですね。交通局なんか、昔から男社会だったけど、これからはますます女性の力をどう引き 出すかということが求められていくと思いますね。

    でも、現実には、なかなか難しいのよ。例えば、法律が変わって、女性でも泊りができるようになったけど、実際、駅に泊ま ることができるようにするには、いろいろ条件を整えなければならないでしょ。男女平等って理念から言えば、所詮「諸条件」なんだから、費用や手間がかかっ ても整えればいいじゃないかって話になるんだけど、そうはいかない。現実の都営交通の経営という問題もあります。これはもう厳しいんです。

    例えば都営地下鉄では、都営12号線、4月から大江戸線という名前に変わりますが、これが今年4月に代々木と国立競技場の二駅だけ先行開 業して、12月に全線開業します。それから三田線が9月に目黒まで延伸します。今年は、都営地下鉄はじまって以来の新駅開業数なんですね。その意味で飛躍 の年でもあるんですが。経営は無論大変なんです。
    大江戸線の建設費が当初予定より3000億円も増えたり、また、他の民営交通と比較しての経営効率の問題だとか、あと、都営独特の事情のひとつですが、大江戸線が開通すると、競合する都営バスの乗客数がどうなるかという問題もあります。

    一方、公共交通という視点も重要です。高齢化社会を迎えて、お客様を地下駅にもぐらせたり、高架駅に登らせたりするのは 大変ではないか。路面電車やバスを利用してもらう方がいいのではないか。そのために『低床型』っていう出入口が地面とほとんどすれすれになっている電車や バスの普及や、地下鉄の場合もエレベーターやエスカレーターの増設など、いろいろ考える必要があると思います。こういう風に現実の赤字経営のなかで、全体 的に考える必要もあるんですね。

Update : Jan.23,2000

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