われら六稜人【第24回】医療NGOから見たコソボ

第6章
ペア郊外の村バラニ


バラニ村の農家
    ペア市から車で30分の村バラニに5年ほど前に閉鎖され、今回の争いで破壊された診療所(Ambulanta)があります。牧草地に囲まれた本当にのどか な田舎です。この地に捨てられていた診療所を発見し、国境なき医師団の高圧的横やりを排除して、ここにささやかながら地元の医師・看護婦の協力を得て、診 療を再開したのがNeRUの活動の第一歩でした。幸い広域をカバーする位置にあり、住民の歓迎もあり、患者も日に日に増えています。他のNGOの目を引きつける存在になり、乗っ取られる危険におびえながらも地元医師会の長老の信頼を得て、先述のPEACE WINDS JAPANとの合意で診療所全体の改装を行うことが決定し、現在、改装が進行中です。MeRUとしては、今の所大成功というところです。1月末までバラニ での支援活動を行い、地元の人達に後を託して撤退する予定とのことです。
    バラニの住民に意識調査を行う機会があり、ほんの数軒でしたが地元の農家を訪問し話しを聞くことが出来ました。壊された家に慎ましく生活している人達です が、皆、大家族で純朴な人達で、バラニ診療所の再開を素直に喜んでいました。訪問の度にトルココーヒーを勧められ、嬉しいやら辛いやら、日本人の、少なく ともわたしの感性に合う人達に多く接することが出来たと思います。彼らが物量でせめる巨大NGOより、日本のささやかなNGOを評価したのもひょっとした ら日本人と感性が合ったからではないかという気もしました。

    以上でわたしの経験した、ほんのつかの間のコソボ滞在の報告を終えます。貴重な体験をし、いろいろ考えさせられた2週間でした。特に、日本の飽食・贅沢を なんとも思わない世相に対して疑問と反省を迫られたように思います。また、アルバニア人の矜持というものを痛感し、日本人としての矜持の復活を急がねばと いう思いにもさせられました。そして、たまたま、行きの飛行機で読んだ『おじいちゃん、戦争のことを教えて』中條高徳著、致知出版社、東京裁判以後の日本 のありようを嘆いている率直でわかりやすい、孫娘の質問におじいちゃんが心を込めて語っている本の、日本精神よ復活せよという思いと、GHQ占領下の屈辱 を孫娘に真剣に伝えようとしている著者の主張への同感が重なりあってより多くのことを考えさせられたと思います。コソボの一日も早い復興と、民族対立とい う不幸を出来るだけ早く断ち切り、自主・独立の達成されんことを祈りつつ。

Update : Sep.23,1999

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