われら六稜人【第13回】建築家の跳躍力

4階
建築家の素質

    そうですね、愛でしょうか。建築に対する愛情でしょうね。他のジャンルでもみんな同じだと思うのですけれども、絵を描くのが好きだとか、音楽を演奏するに しても作曲するにしても…まぁ「好きこそ物の上手なれ」という諺がありますけど…まず「好きだ」という事が前提でしょうね。人生が…(ちょっと飛躍的な言い方をすると)…所詮、時間つぶしに過ぎないにしても、その人生の「時間つぶし」を、時間をつぶすことによって金を生もうと 考えるか、とにもかくにも自分の好きな事をやって時間をつぶせればそれで幸せだと考えるか…。少なくとも建築は「儲かる商売」とは言い難いですから、「自 分が好きだから」と思わないではやってられないと思うんです。

    実のところ…建築は全然スマートな職業ではなくて、わりとクラーイ作業が多いんですよ。こういう模型をずっと作ったり、図面をしこしこ描いたり、地道に役所と折衝したり。そういう作業を忍耐強く続けられるかどうかというのは、本当に愛情を持てるかどうかだと思うんですね。

    まず、好きになれるかどうかだと思いますが、ただ、正直な話…誰でもがなれるとは思えないンですね。やはりある程度は「才能」という要素が無視できない。 それは「空間的に物事を組み立てられるかどうか」で、これは…音痴がいくら練習しても歌手にはなれないように、すべての人がオリンピックに出場できないよ うに…多分、建築家にもある程度の素質というのが必要だと思います。

    もちろん素質だけでなれるということではないでしょうし、多分に素質よりも努力のほうが大きいとは思います。パーセンテージとしてはね。空間的な組み立てというのはトレーニングをすればかなり出来ることですから。

    でも、建築って…特に僕らはデザインというジャンルだと思われてますから…「デザイン」というとすぐ表面的なかたち、丸か三角か四角か…という議論に陥る ように思われがちですが、建築でいうところのデザインというのはそうじゃないんです。「問題をどう掴むか」ですから、資質としては「いろんな…様々な諸条 件がある時に、問題はどれかということをザッと掴んで、それに優先順位をつけて的確なジャッジメントを下していく」こういう能力が重要なんです。その正確 さと速さですかね、大切なのは。

Update : Oct.23,1998

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