ウクライナのEU加盟は時期尚早??!!

2013年12月17日

もう一つ写真無しで最近ホットな話題を。ウクライナの動向が連日ニュース紙面を賑わしていますが、やはり日本・西側メデイアの流す情報だけで理解するのと、現地にあるいろいろな情報を組み合わせてみるのとでは、かなり見方に相違が出てくるように思います。身近にある情報(と言ってもロシア人に翻訳してもらって理解してますが・・・(^-^;m )も参考にして自分なりの見方をまとめてみました。

 

過日ウクライナのヤヌコビッチ大統領がEU加盟へ向けて最終段階に入る直前で翻意し、当面加盟は見送ると発表し、それ以降同国内外で大騒ぎになっていることはご既承の通り。西側メデイアではロシアが圧力かけてウクライナに無理やり翻意を迫ったとして、ロシアを非難する記事が紙面をにぎわせている。それに呼応するように同国内では大規模反対集会が連日繰り返されており、今やウクライナは混迷の一途を辿っている。ウクライナの経済は今夏くらいからようやく多少落ち着きを見せ始めたところで、我々ビジネスサイドも政治の安定→経済の安定→市場の緩やかな回復を期待していただけに、現状の様相は非常に残念。しかし、ウクライナのEU加盟は、果たしてこの時期必須であったのだろうか?ロシアの高級経済氏Expertや英字新聞Moscow Timesには興味深い記事が掲載されていた。これら内容を盛り込みながらまとめてみると以下のようになる。旧ソ連時代の抑圧されたイメージから抜け出すにはウクライナもEUに加盟して欧州の一角に張り込みたいという一般的な気持ちは十分理解できるし賛同もするが、では現在加盟してウクライナにとって本当にメリットあるのかということになってくると様相が異なってくる。ウクライナのEU加盟を実利で考えると、ウクライナが期待しているのは当然ながら経済復興に向けての資金的援助である。しかし、今回の加盟交渉では、EU側は自分達の足元が南欧問題で揺れ動いている中、新たに中東欧から更なる支援求める国が入ってきても、とても支援する余裕は無く、ウクライナ側が要求した資金援助はほとんどDeclineされている。即ちウクライナ側にとっては、一番期待するものが得られないということである。唯一VISAや労働許可手続きの緩和が考えられるが、それらとて移民問題が各国の頭痛の種となっている現状では、声明ではそう言ってもEU諸国がそう簡単に実務レベルでウクライナからの移民を受け入れるとは考えにくい。また、ウクライナの産業は脆弱で現時点では欧州に打って出るほどの競争力あるものは限られ、現状はロシアが最大の市場。即ち経済的な結びつきは当然ロシアの方が強い。逆にEUにとってみれば、自国製品が売れる市場が拡大すると考えることもでき、支援受けられぬウクライナの産業にとっては、現時点でEU加盟しても新たな試練が到来するだけになる可能性もある。直近4年間で最悪の債権利率に陥り、既にウクライナは国家破綻を目前にしている状況で、一刻の猶予もならない。しかしEUは国家破綻の危機を救ってくれるのかどうかも分からない。そう考えてゆくと、冷静な考え方としては、現状を正確に認識し、ロシア寄りに残ることでロシアから資金を引き出し、ロシア市場の力を活用しながらウクライナ経済建て直しの軌道に乗せ、その中でウクライナが産業競争力を強化し、EUに打って出る力をつけるのが先決ではないかというように映る。そういう観点ではヤヌコビッチ大統領はロシアの圧力に屈したという形を見せ付けておいて、ある意味責任逃れ(ロシアの圧力のせい)をし、実はその点を見極めている、実は冷静な判断をしているのかもしれない。EU加盟は先に可能性を残しているわけで、扉が閉ざされたわけではない。旧西側報道だけだと、国民の大半がEU加盟を望んでいて、それがロシアの圧力で砕かれたというイメージを作り上げているが、EU加盟に積極的なのはウクライナ西部(学生など若者中心)であって、ビジネスという実利の面でも東部は親ロシア派なのである。いずれにせよ、国民は「EUの一員になって生活水準上げたい」という単純な希望から感情的にならず、現実・事実を十分認識して、ウクライナの将来のためには今はどうすればよいのかを考えなければならないのだろう。その為には国を牽引する政治家たちが、単に対立しあうだけでなく国のリーダーとして国民に事実を正確に示し、考えられるシナリオを提示してゆかねばならないのであろう(その点は極東のどこぞやの国と似ているかも??)。親EU派の若者たちが主張する「EUに加盟して自由と民主主義を手に入れる」だけでは国民は食っていけないのは明らか。EUに加わるならウクライナにとっての加盟の実利が必要。今、ウクライナはロシアとEUの中間で留まって(=賢くロシアを利用して)、力をつけてからEUに加盟するというのも十分あり得る正しい選択肢の一つのようである。そういう点ではヤヌコビッチ大統領は、現実を直視し淡々とウクライナにとって今必要なことを実行しているだけなのかもしれない。現にEUが断ったウクライナが欲する資金援助の一部をロシアは了承したようである。当面はロシアとEUの中間でバランス取りながら上手く生き延びて、力をつけてから自分達の将来を考えるというのが現実的なのかもしれない。