ピアノリサイタル inスウェーデン~Mit der Musik【第19話】

2010年9月4日

海辺の様子

海辺の様子

 ウィーンより暑中お見舞い申し上げます。
 7月初旬からウィーンは連日30度以上の気温で快晴、真夏日が続いています。朝からなんとなく暑さを感じ、お昼はぎらぎらの太陽、夜は熱帯夜。それなのに、この街ではアパートはもちろん、レストラン、学校、お店、公共施設、ほとんどどこへ行ってもクーラーがないのです。
 ではみんなどうしているかと言うと、一日何度も水風呂に入るか泳ぎに行くか、手軽なところでは冷たいアイスやスイカを食べるなどしてひととき涼み……そうでなければ、ウィーンから非難して山や湖などの避暑地に大移動です。それでもやっぱり、寒くて体が凍える長くて暗い冬より、明るい夏が好きです。 さて、そんな暑さの折、私もヨーロッパの北に位置する少し涼しいところに行って来ました。
 滞在していたのはスウェーデンの南西にある海辺の街、ハルムシュタッドです。デンマークの首都コペンハーゲンから電車で1時間。海岸からはデンマークが見えました。
 そのハルムシュタッドに音響が大変素晴らしいことで有名なニコライ教会という立派な教会があり、そこでリサイタルをしてきました。

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▲リハーサルの様子
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▲ニコライ教会

 今回のプログラムはバッハの曲が多く、教会の特別温かい響きの中で弾けることを練習の時から楽しみにしていました。
 キリスト教ではない自分が、教会でバッハの曲をキリスト教信者のお客さんのために弾くことは、ふと思うと嘘っぽい感じもします。そうかといってキリスト教徒の演奏者が厳しさを感じさせず気持ちよさそうに教会で演奏している姿もよく見られ、表面的に見えてしまうことも頻繁にあります。
 演奏会を通して、音楽を聴いているある瞬間、ピアニストの弾いている姿を見たひと時に、何か特別な想いが心のどこかから湧き出てきたり、希望が持てたり、優しくなれたり、安らいだり、元気になったり……そういう感情の揺れのひとつひとつがとても特別な瞬間で、そのためには、練習の時は自分に厳しく強くいることが本当に大切なのだと今回なぜか再び強く思いました。
 弾いてる本人が楽しくなったり酔いしれたり気分よくなっているのはチャンチャラおかしい自己満足でしかないと思います。

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▲海水浴場

 今回のリサイタルは土曜日だったため、金曜日の午後に現地に入り月曜日の朝までゆっくりしていました。寂しいことに一人で行ったので、どこかアクティブに観光する気にもなれず、バスで近くの海岸へ行って、岩や砂浜に寝ころんで海をのんびり眺めたり、かもめにパンをあげて遊んだりしていました。
 気温は23度くらいでしたが、短い夏を存分に楽しもうとするたくさんの学生やはだかんぼの子供をつれた家族、海岸を散歩するカップルなどで賑わっていました。そんな海を見ながら、スウェーデンではまた新たな出会いもあり、心をオープンにしてこれからも演奏活動を積極的にしていこう、強くいようと思いました。