六稜トークリレー Talk Relay【第33回】2006年8月5日

    三砂栄次さん@48期 
    MISAGO Eiji

    シベリア抑留を体験して

    三砂栄次さん@48期

    大正6年(1917)生まれ。昭和10年、北野中学校卒。16年、関西大学卒、辰馬海上火災保険入社。17年、中部63部隊(福知山)現役入営。18年、満815部隊(新京経理学校)入隊、6月卒業。7月、奉天俘虜収容所勤務(主計見習士官)。12月、陸軍主計少尉に任官。
    昭和20年から5ケ年にわたり、ソ連で抑留生活(イルクーツクに3年半、ハバロフスクに1年半)。25年2月、舞鶴に復員。4月に興亜火災保険に復社。以後、金沢支店長、本社営業部長、業務部長を経て、47年に停年退職。日本損害保険協会に監査人として勤務。56年3月、同協会を退職。現在に至る。


    1. 我が国の陸軍について
      1. 軍を統括する機関
        1. 参謀本部
        2. 教育総監部
        3. 陸軍省
      2. 平時編成
        1. 軍隊〜師団〜旅団〜連隊
          • 兵種:歩兵,騎兵,砲兵,工兵,輜重,鉄道
          • 各部:法務,兵技,経理,軍医,薬剤,軍楽
        2. 官衛〜司令部〜補給廠etc
        3. 学校
        4. 病院
        5. 特務機関
      3. 兵役の義務(国民皆兵)
        1. 徴兵制〜満20才の壮丁〜検査〜入営
        2. 幹部候補生の制度
        3. 学徒の徴兵延期
        4. 学徒出陣

    2. 俘虜とは
      1. 人命尊重(キリスト教精神)の見地から「俘虜は戦場に於ける最高の英雄なり」と外国では考えられている。わが国では左に非ず。
      2. 関係法規
        1. 戦時国際法〜定義〜資格要件
        2. 条約〜万国赤十字条約
            具体的の取扱い規定
            ソ連はこの条約を批准していない
        3. 中立国赤十字委員の駐在
      3. 奉天俘虜収容所の設立
        1. 目的 奉天にあった満州工作機械に就労さす為、南方で捕へた技術のある者を約1,000名集めた。
        2. 編成
          1. )管理部
            • 総務
            • 俘虜監視
            • 経理〜金銭会計
              物品会計〜糧秤、衣服、営繕
            • 医務
          2. )俘虜収容部門
            • 米国将兵60%
            • 英国将兵40%
        3. 就労
          1. )当初は満工のみに就労さしていたが、半数は拙劣で役にたたず他に就労さす
          2. )就労先
            第1派遣所(帆布会社)
            第2派遣所(木材会社)
            第3派遣所(皮革会社)
            第4派遣所(中山鉄工所)
        4. 分所の設置〜戦局が悪化して台湾にあった高級俘虜収容所が危険になり、収容中の俘虜を受入れることになった(昭和19年10月)。
            第1分所(西安)
            第2分所(鄭家屯)
            ※第1分所には軍司令官級(ウエンライトバーレバル)16名程収容し特別の管理した
        5. 特別収容室の設置〜全満で捕へられたB29のパイロット約26名が憲兵隊より移送されて本所の近くで管理することにした。
        6. 中国西安にあった米軍司令官の使者が8月16日、B29で来奉落下傘降下で収容所の視察に来所。無条件降服の事実を知る。主要都市が焼土と化したこと
          今後の管理について俘虜代表者と協議し、従来通り給与を頼むとソ軍の武装解除の日まで実施
          武装解除後、今度はわれわれが俘虜として逆収容されることになる

    3. シベリア抑留生活について
      1. 期間 昭和20年12月〜25年2月
      2. 場所
        1. イルクーツク地区(20年〜23年9月)
        2. ババロフスク地区(23年9月〜25年2月)
      3. 日本将兵のソ連へ輸送
        1. ソ連収容所に移送されシベリヤ送りが開始
        2. 輸送の単位:1列車1500名(1ケ大隊1000名)鉄道で北安を経由、黒河に向かう。黒竜江の結氷を待ち氷上渡河。対岸のブラゴエチエンスクより入国(2月初旬)さらにシベリヤ鉄道でイルクーツクに向かった。
      4. 収容所の種類
        1. 赤軍労働大隊
        2. 内務省(ゲーペーウ)(ラーゲルと称す)
      5. 収容所の概要
        1. 住居
          1. )工密兵舎
          2. )在来の建物利用
          3. )幕舎
        2. 食事
          1. )黒パン(エンバク粉)
          2. )スープ
          3. )カーシャ
        3. 就労、作業〜「働かざる者喰うべからず」
          建築工事関係に従事させられた
          1伐採、2製材、3煉瓦工場、4ガラス、5駅構内の荷役etc
          職人(大工、左官、鉄金、機械工、etc)は重用された。
        4. 保健、衛生〜極めて劣悪
          入浴1ヶ月1回位(共同浴場)
          医務室 日本軍医が常駐、診療に当たる。医薬品不足
        5. 余暇 生きるために食べること、睡眠が何よりの欲求である
          1. )娯楽〈イ〉碁、将棋、マージャン、花札
               〈ロ〉演芸大会
          2. )小遣いかせぎに物品の作成
            玩具、スプーン、指輪etc
          3. )アルバイト(ロシヤ人の家の手伝い)
            薪割、農事、掃除、etc

    4. 抑留中ソ連の見聞、所感について
      1. ソ連人の日常生活
        1. 住居〜防寒上丸太造(ログハウス)
        2. 食事〜ジャガイモが主食
        3. 水道〜家庭にない(水汲み)
        4. 電気〜停電が頻繁に起こる
        5. 官営の売店(マガジン)日曜日休み
          日常必需品を販売
        6. 入浴ー共同浴場(バーニヤ)
          概してシンプルな生活である
      2. 所感
        1. 一般人は親しみがもてるが軍人、役人には好感もてない。
        2. 上下の格差が大きく中流クラスが少ない(学者、技術者、医師、etc)
        3. 女性の労働力は偉大
        4. 国家主義の教育が徹底(何でも世界一)
        5. スターリンの個人崇拝(銅像、写真)
        6. 少数民族が圧迫、酷使されている。
        7. ロシヤ語 文法は複雑で難しい。会話はブロークンで何とか達していた。吾々は大体下層の人達と接することが多く、上流者とは接触なかったので偏った見聞であったかも判らない。

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     → email talkrelay@rikuryo.or.jp

    チラシ
    公式チラシ(JPG,444KB)



    Last Update : Jul.16,2006