六稜NEWS-090801
講師紹介をする中井さん
講師紹介をする中井さん
六稜トークリレー【第67回】
「針目に込めた女たちの哀しみ」森南海子さん@64期

reporter:中井正明さん@64期

今回、森南海子さんの講演。同期生が壇上に立ったのは、計3名(第1回、小生。第13回、土井陽子さん)と記憶しています。

Yシャツをリ・フォームして作った手提げ袋
Yシャツをリ・フォームして作った手提げ袋
「リ・フォ−ム」の造語で洋裁の分野に進出された彼女が、戦前・戦中の時代に女性の意志や立場を表現した“千人針”の作品蒐集に傾注された由来は、以前に出版の著作を購入した時点をもって承知していたが、今回の8月1日の聴講によって充分に納得できた。

全国の報道関係の支援もあったのか?東南アジア方面にまで、資料収集と取材に赴かれた話題は、驚嘆に値する内容であった。

70年程昔の話になるが、愚生が母親(明治41年生れ)の綴る「縫玉」(玉留め?)の作業を真似て、お針子?になった時「この子、女の子みたいな事をする」と窘められた体験を思い出した次第。まことに好奇心の強いヤンチャ坊主でした。今も同じ性根でおります。

千人針
photo:NODERA Yuko
この日の六稜会館1階の陳列場に揃えられた“千人針”の中で特に目立った作品があった。5銭玉と10銭玉の縫込み作品。「死線(四銭)を越えて五銭」「苦戦(九銭)を凌ぐ拾銭」…この2枚の貨幣が埋められた「千人針」には、銃後を守る親、子、妻、兄弟、姉妹たちが身内や、隣人の兵士に向けた崇高なる祈りが凝集されていて万感に迫るものがある。往時の日本人、所謂弱い立場の庶民の境遇が想起され、いかに戦争が人間として無意味な「業」、悪辣な手段であることに気付かされる。

千人針
終りに蛇足ながら、会場にて見聞きした件をひとつ。

妙齢の婦人が質問していた。「武運長久…てどんな意味?」白髪の紳士が懸命に説明してなさった。こんな四字熟語は死語になって行くほうが良いのかもね。

Last Update: Aug.21,2009