六稜NEWS-090202

出典;やまがた刊行情報センター+wiki
A&Hホールシリーズ公演その五十七
古典芸能と出会うひととき

reporter:河渕清子(64期)

2月2日(月)午後のひとときを、久しぶりに「狂言」の世界に浸った。考えてみると2006年2月の「山本能楽堂」以来である。
「大和座」主宰の安東伸元氏(65期)に、六稜ト−クリレ−にご出演願ってからは、毎号「大和座通信」と公演案内を送って頂いているので、読む度に「狂言」「古典」への憧憬が高まってくる。

「狂言」って、筋はいとも単純、滑稽で他愛ない。登場人物はいつも3名。主人(大名)、太郎冠者と、もう1人が主役(今回は山伏)。狂言は歌舞伎や能のように鳴り物もなければ床の語りもなく、衣装に身を固めた出演者の台詞と所作だけで織り成す舞台だ。地味といえば地味だが、カラリとした明るさは観る人の心に和む。

「大和座」座員の方々は皆さんお若い。
今回の出演者5人は、プロフィルによれば大阪芸大舞台芸術学科卒の3人、相愛大音楽部卒でワルシャワ・ショパン音楽院終了のチェリスト、皆さん、大学時代に安東氏の講義を受け「狂言」と出会い、師事した人たちだ。そして落語家の桂蝶六氏も森五六九の芸名で名を連ねているのには驚いた。さまざまなジャンルで活動中のこの人たちは、古典芸能を極めんとする熱意に燃えた人たちなのだろう。

この日の出しものは「蝸牛(かたつむり)」だった。ホ−ルの普通のステ−ジなので、能舞台のように本舞台に続く袖の廊下もないので演じにくかっただろうが、さすがホンモノの発声といい、決まった演技、間(ま)など、いいお弟子さんたちに恵まれて、師匠もお幸せだろう。(撮影禁止で舞台写真を撮れなかったのが残念です)

今回は「古典芸能と出会うひととき」の57回目で、基調講演講師として、安東氏とも親しい万葉集学者、山崎馨氏(神戸大名誉教授、元母校でも教鞭を取られた方)の「万葉集に見える古代の芸能」のタイトルで万葉集から2首を取り上げてのお話もあった。1時間ばかりのお話だったが、万葉一筋に60年の先生の訥々とした語り口は魅力的で、さすが説得力もあった。機会があれば、また先生の万葉講座を聞きに行きたいと思っている。

「狂言」の前には“新しい年の吉祥を祈念する「謡と小舞」が安東氏以下5名の方で演奏。それに続いて“歌唱演習”「新春に謡う」を安東氏の指導で会場の皆さんが一斉に謡った。当日の会場A&Hホ−ルは、六稜の見慣れたお顔がいっぱい。前会館運営委員長、元事務局長を初め、山崎先生の「万葉講座」の愛講者である68期の女性の皆さん、安東氏と同期の65期の方々など六稜色濃厚で、まるで同窓会イベントのよう。古きを尊び、古典芸能の真髄を伝えながらも、常に新しい方向を目指して活動を続けて居られる安東氏に拍手を送るとともに、氏の古典への造詣の深さには脱帽です。


※「蝸牛」あらすじ
蝸牛(かたつむり)を食べると長生きをすると聞いた主人が、太郎冠者に蝸牛を取りに行かせる。蝸牛を知らない太郎冠者は「藪にいて頭が黒く、腰に貝をつけ、時には角を出し、大きいのは人ほどもある。」と聞いて出かけたが、藪で昼寝をしている山伏を見てそれかと思い込む。山伏の方も、巾・法螺貝・篠懸を用いて、すっかり蝸牛と思い込ませる。「雨も風も吹かぬに出なかま(出ないと殻)打ち割ろう」と太郎冠者に囃させては二人で浮かれているところへ、主人が探しに来て驚き、太郎冠者にあれは山伏だと叱ったり怒ったりするが、「でんでんむしむし」の拍子に憑かれている冠者に囃されるうち、自分も囃しては舞い出し、しまいには、3人一緒に浮かれ賑やかに囃して舞い続ける…。

Last Update: Feb.16,2009