六稜NEWS-070303
六稜トークリレー【第39回】
「雇用機会均等法一期生のわたしたち」吉田一実さん@94期

reporter:中 満理(94期)

 
 
 
 3月3日、おひな祭りの昼下がり、北野を巣立ってから初めて再会した友達と、同級生の玉井さん(旧姓)の講演会に参加させていただきました。

 「男女雇用機会均等法」……そうでした。私たちは20年前、この9文字の漢字をお守りのように抱きしめて、前年までは女子に閉ざされていた企業の扉をたたいたのでした。玉井さんのお話を聞くにつれ、すっかり忘れていた遠い記憶の先の、大学の厚生課に貼り出された求人票や、面接の控え室で出されたお湯飲みの柄が、ふと浮かんできました。
 とは言え、玉井さんの今までの20年間は、もちろん、私などの比ではなく、まさに重い荷物を持って、果敢に障害物競走に挑み続け、そして先頭を走り続けた20年間だったのです。玉井さんの、みんなを安心させてくれる笑顔と、暖かい大阪弁、それに包まれてなお、キラリと輝く、自分を甘やかさずに自分を信じ、常に一歩前へ進もうとする気持ち……トークの中から、真っ直ぐに伝わってくるものがありました。

 まず第一に、何といっても玉井さんの積み上げてきた努力の大きさに驚きました。連日の激務と、雇用機会均等法一期生ならではの「道無き道」を切り開いていく生みの苦しみは、玉井さんが爽やかな笑顔でさらりと語られるその裏でどれほど大きなものであっただろうかと、尊敬の念を感じました。
 しかし、もっと私が心を動かされたのは、彼女の生きる姿勢でした。先駆者だからといって、肩肘張ったり自分を強く主張するのではなく、しなやかに今までの社会の流れに寄り添いながら努力を重ねた結果、性別を越えて実力が周囲に認められる存在になったのです。制服を着用したり、お茶汲みで「喫茶・玉井」とまで呼ばれ、愛された玉井さんのお人柄が、お話のあちこちに感じられました。また、繰り返し言われていた「人に助けられて」という考え方も心に残りました。周囲に感謝を忘れないことで、玉井さんの人生の節目に、必ず救いの手が差し伸べられることになったのでしょう。人の運命や、ご縁というものは、決して偶然のラッキーではなく、こうやって大切に時間をかけて育まれていくものなのですね。

 
 
 
 そのようにして、社会の変化に柔軟に対応し、責任を持って長く働き続けた今、玉井さんと、その姿を見て育った後輩達は、周囲に暖かいまなざしでエールを送っています。
「瀬戸際ちゃんを救え!」と、辛い思いをしている同僚の所に駆けつけ、おしゃべりやお食事で気分転換を図り、「それでも続けていこうよ」と声をかける。「他人事だとは思ってないよ、一人ぼっちじゃないよ」と伝えることは、会社だけでなく、学校をはじめ、様々な場面で必要な支援の形だと思いました。それが自然発生的に存在しているのは、玉井さん達のこれまでの努力に対する勲章のような気がします。
 これからも、性別を越えて人々が普通に仕事をしていく方法を模索する日々は続くでしょう。苦しい時に気負わずに「お互い様だから」と、手を差し伸べることが出来たら、私達の生活はもっと生きやすく、優しいものになるのではないかと思いました。

 玉井さんの講演を聞きながら、こんなに素敵な人が同級生であり、同窓生であることを誇らしく思いました。それと同時に、玉井さんの笑顔に元気をもらって「私も何か出来るかも」という暖かい希望を感じました。講演から一週間経った今も、私は意識して背筋を伸ばし、出来るだけ笑顔で、ゆっくりと前進しようという気持ちを持ち続けようとしています。軽妙な語りに誘われて、あっという間の2時間でしたが、本当に心にしみるお話でした。有難うございました。

 また、末筆になりましたが、このトークリレーを企画・運営してくださっている先輩の皆様、お雛様ということで格別にお心遣いをいただきました。有難うございました。又、参加させて下さい。


Last Update: Mar.11,2007