われら六稜人【第36回】漢字に魅せられて…漢字学の楽しみ
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この字形を今から3300年前の古代中国のものだと考えるから、漢字の問題だと考えてしまうのですが、実はもっと広い情報メディアとして使えるんですよ。たとえば最近のパソコンには、画面に四角いアイコンというものがある。そのアイコンの一つに《W》と書いてあるものがあったり、《一》が書かれていたりします。これをクリックするとワープロソフトがジャーンと立ち上がる。しかしそれぞれのアイコンのデザインとソフトの機能とはなんの関係もない。《W》とか《一》と書いてあっても、それがいったい何をするソフトなのか、「ワード(Word)」とか「一太郎」というソフトの名前を知らない人にはさっぱりわからない。それを使っていない人にはまったくわからない。
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要するに、21世紀の情報化社会で一番有効なメディアは、実は最古の漢字である「甲骨文字」ではないだろうか(笑)…なんてことを、ここしばらくあちこちでしゃべったり書いたりしています。そんなわけで漢字の将来は明るいといえるでしょう。
今まで勉強してきて、一番楽しかったことですか?そうですね、自分がやっているのが「なんとか学」だといえないというところではないかと思います。縦割りの「なんとか学」におさまらない仕事は、ものごとを横断的に見ていかなければならないのでしんどいものですが、そのかわりすごく楽しい。これから新しい学問に従事していく人が、従来の縦割りの学問にこだわっていたらだめですよ。さいわい世界には自分で新しいシステムを作っていくことができる分野が、まだまだ未開拓な分野がたくさんあります。身近な例をあげれば、たとえば書物でページ順に数字をふる、ノンブルというのがどこでいつごろから始まったかというのはまだよくわからない。本の作り方についてなんかでも、まだよくわからないことが多いんですよ。こういう分野にどんどん若い人が入ってきてほしいですね。