【第108回・6月1日(土)】 「従軍作家の見た戦争~火野葦平 『土と兵隊』を中心として」

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あ増田周子さん@99期(関西大学文学部 教授)

【講演要旨】
火野葦平は、アジア・太平洋戦争中、長期間にわたって従軍した作家である。杭州湾上陸作戦(昭和十二年十一月)、徐州会戦(昭和十三年五月)、広東作戦(昭和十三年十一月)、海南島作戦(昭和十四年二月)、宜昌作戦(昭和十五年六月)、フィリッピン作戦(昭和十七年三月)、ビルマ・インパール作戦(昭和十九年三月)などに従軍し、日本の近代作家の中で、最も長く戦争を体験した。火野葦平は、その戦争体験を、手帳やノートに記録し、『麦と兵隊』『土と兵隊』『花と兵隊』の、兵隊三部作をはじめとする数々の戦争作品を残したのである。兵隊三部作は、世界各国で翻訳され、火野葦平を戦争作家として世に広めることとなった。
日本文化・文学研究者として著名な、米コロンビア大学名誉教授のドナルド・キーン氏は「私が初めて読んだ日本の現代文学作品は、火野葦平の『麦と兵隊』」で、「その時、火野の小説にひどく感動した」と述べ、その後『Modern Japanese Literrature』(1868)を編集する時、「是が非でも、火野の作品のどれかを入れなければ」と「土と兵隊」を収録したのであった。このように、葦平の兵隊三部作の完成度は極めて高く、世界中の人に称賛されたのである。
今回とりあげる、兵隊三部作の一つ『土と兵隊』は、葦平の最初の戦争体験に基づいた作品である。「創作ノート」など多くの資料を使いながら、葦平の『土と兵隊』が人々になぜ感動をよんだのかをお話しし、戦後七十年の今、戦争をふりかえり、平和の意味をかみしめたい。

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