NGOの限界

2008年7月22日

アフリカの大地を緑に~ジャカランタの花咲くジンバブエから【第23話】

バナナ,買ってくれー
バナナ,買ってくれー
(ジンバブエ東部にて)

NGOを辞書で引くと
“Non-Governmental Organization”
と出ています。
日本での印象は、「弱体化した政府機関に代わり、その行政能力が届かない貧困層に援助を行う」というところでしょうか。確かによくがんばっているNGOも ありますよ。しかし、いい話ばかりではありません。

この前のインドネシアのスマトラ島西部での地震の際、被害者救済・復興でNGOが活躍していましたが、「現地では交通の便のいい所で、NGOが被害者の取 り合いをしている」とか「NGOが現地事情も調べず、必要以上の数の船が持ち込まれ、捨てられている船が山になっている」という指摘もありました。
あと、ネパールで、日本を代表するNGOの現地担当者が「NGOの活動には電気と車が絶対必要だ」と真顔で話しておられました。ネパールの電気の普及率は 当時で15%。全土で40近くある県のうち、カトマンズから車で県庁に行ける県は半分しかありません。最も遠い県庁には、道路の終点から徒歩1週間です。 このNGOは、国民の85%・国土の過半は、対象外ということなのでしょうか。「見捨てる」ともいえますよね。

イランの米作り
イランの米作り
(カスピ海沿岸 左:筆者)

NGOの活動にはお金が必要ですから、そのお金を出してくれる先進国の機関・個人・企業(ドナーといいます)が、資金供給にOKを出すような案件を発掘す る必要があります。例えば、話題性とかね。あと、車を捨てて何時間も歩くような地域は、予算が効率よく使えませんから(面倒くさいばっかし?)、道路沿い とかに援助が集中しがちです。交通の便は、ドナーが現地を視察することを考えても重要な要素になる訳です。

ジンバブエでの話ですが、食料援助の下請けをしてるNGOがありました。国連の組織が持ち込んだ穀物や食料油を現地で分配する仕事です。その最前線の現地 オフィスを訪問したことがあります。NGOの現地職員はスーツにピカピカの革靴という姿でした。話では、1000近い村に食料を配っているというのです。
すごい、と思って、窓の外を見ると、10トンぐらいのトレーラーが食糧を満載して出て行くところです。「村には同行しないのですか」と聞いてみると、この ピカピカ革靴氏は「運転手が村長の受け取りのサインをもらってくるから大丈夫!」。この地域では、車で行ける村は、1/3ぐらいしかありません。残りの 2/3の村の村長のサインって、どのようにしてもらうんでしょう。
横流ししないでね。その援助には、日本の税金も使われているのよ。それにあなたの給料も。たまには、現地に同行したら。といいたくなりました。

アンナプルナ山群
アンナプルナ山群
(ネパール中部)

日本のNGOは、少ない資金で人件費も十分払えず、総じて貧乏所帯です。しかし、開発途上国では給与水準が低いので、多額の援助資金の一部である人件費 (運営経費)がNGO職員のフトコロを十二分に潤しているという現実があります。
さらに、海外のドナーから直接資金援助を得ることができるような看板を持っている大手のNGOの下に下請け・孫請けのNGOが群がるという構造もあるので す。
ジンバブエで私の職場であった農業省の職員がよく辞めます。月給がUS$10ぐらいしかありませんからね。その再就職先はNGOです。たちまち US$200に20倍増。まず、孫請けのNGOで2,3年キャリアを積んで、そのあと、下請け・元請けとステップ・アップしていくそうです。元請けなら、 月給US$500だと聞きました。