第27話 海外技術援助を目指す

2008年12月18日

子どもたちさて、最終回になりました。最後に、やっぱり、海外で援助の仕事をしたいという方に、もう少し。

海外の仕事は、きれいごとではありません。
先進諸国は、エイズ対策に資材や資金、人材を投入していますが、なぜエイズなのかが問題です。
アフリカでは、子供を含む死因の第1は衛生状態が不良であることによる下痢、次は気温が高く水があるところならどこにでもあるマラリア、そして3番目にエイズと言われます。

なぜ、日本は死因1番手の下痢対策にもっと援助しないのでしょう。
対象が広過ぎる上に飲料水の確保に膨大な資金が必要なのです。援助の効率が悪いという訳。人間の命が経済的に評価されるのです。

次、マラリア。
マラリアは、ハマダラ蚊が媒介する病気です。マラリアは、完全に治癒できないといわれ、感染すると一生の付き合いになってしまいます。私は、マラリアにかかるおそれのあるネパール南部やナイルデルタに行ったことがありますので、現在でも献血できません。
マラリアの困ったところは、注意していても、ハマダラ蚊に刺されると感染してしまうことです。ですから、対策や治療に行った人間がマラリアになってしまう 可能性があるのです。このため、先進国の援助機関は、自国の専門家や医師を、マラリアの危険のある所へ送り出すのには、尻込みしちゃう訳です。

エイズは注意すれば、感染することはありません。それなら、エイズの方がマラリアより良いということになり、先進国は、下痢やマラリアより、エイズの方を優先ということになってしまう訳です。
援助にも、援助する側の都合や、ちょっと大きな声では言えない事情というものがあるのです。

北海道胆振の農民家族しかし、援助は必要です。
日本は、世界の平和の一番の恩恵を受けています。世界の平和が失われた時、最も困るのは、食料を含む資源確保や外貨獲得のための貿易に依存する日本でしょう。

最近は、気候変動に対応するための環境分野の協力を強調する声もありますが、基本は、やっぱり世界の平和でしょう。戦争がない状態が平和ではありません。 世界の人々・子供たちに、生活の安定と明日への希望を与えることが現在を生きる私たちの使命です。もちろん、日本だけが平和と繁栄を甘受するというのは、 人類の一員として許されないでしょう。ましてや、援助は町内会費=近所付き合いではありません。
開発途上国の平和の鍵は、間違いなく農業生産です。開発途上国では国民の大半が農業に従事している中、この農業生産の安定こそ、社会的にも、経済的にも、政治的にも重要なのです。

海外でも、日本でも、農業にかかわると、素晴らしいお土産があります。 それは、収穫の喜びを農家とともに満喫できることです。「農家の喜びは、我が喜び。」ですわ。 援助はきれいごとではないからこそ、基本や純粋な喜びを大切にしたいと思います。

筆者は2008年5月31日に日本に帰国しています。もう次の海外赴任はないかと思いますが、海外での仕事や生活を振り返ると、それなりに満足できるものでしたよ。
そのココロは「清く 正しく 美しく」「その健児、励まざらめや」。なかなか簡単ではないですがね。
最後に、オヤジの海外赴任で、苦労をかけた妻と娘に、「ごめんなさい」。