【連載】なにわことば三昧(40)

のぉせんぎょ

中井正明
(64期・なにわことばのつどい代表世話人)

    大阪辯の訛語で“野施行”と書く。
    現在は死語に近うおまス。施行は国語辞典に載るが
    野施行の熟語は無い。

    大阪ことば事典と上方語源辞典には収載だして
    “寒中は狐狸の類が飢えているので、
    施行すると応報があるとて大勢連れ立ち
    「センギョセンギョ野施行」と
    囃しながら、辻堂や小祠に赤飯・油揚げなどを
    配り廻った庶民層の風習。

    上方落語・吉野の花山にも
    野施行の件がある”と。

    今でいう動物愛護運動の一環ヤッタかなあ。

    戦前戦後(’40年代)までは、
    大阪市内にも田畑が多く見受けられ、
    このしきたりが各地域で行われていたヨ。

    筆者の生育地・中津の町(現北区)カテ
    近所に祈祷師の老婆が居てテ、
    同様の寒中行事に防寒頭巾をかぶって
    参加した経験を持っとりま。
    旧き良き時代も今はもう
    大阪の町から消えてマイましたなあ。

    川柳に

    野施行や葎(むぐら)の中の捨て社 (甲子)

    が詠まれ、
    何ト郷愁を誘なう一句やおませんかィな。

Last Update: Feb.23,2003

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