六稜NEWS-091107
会場の様子
六稜トークリレー【第70回】
「医療崩壊の真相」清野佳紀さん@70期

reporter:高田早智子さん@70期

 昨今の日本の医療崩壊の現状は実に暗澹たる様である。救急患者のタライ回し、医療ミス、医師不足による地域病院の閉鎖等の根本原因が勤務医の不足によるとされる。実際には毎年医師数は増加しているということだが病院の勤務体制の苛酷さ、劣悪ともいえる環境が勤務医の減少を促進させているようである。

 質疑応答に答える清野さん
 トーク講師の清野佳紀氏は大阪厚生年金病院の院長として、その対策の視点を女性医師の動向へ向けた。確かに医師数は増加しているが、29歳未満の世代では女性医師数が男性医師数を上まわっている。女性医師は結婚後出産、子育てにしばられ、必然的に離職せざるを得なくなる。その離職を防ぐことが勤務医定着の第一歩と考えたであろう清野氏は、院内での子育て支援制度(託児所の設置)を打ちたてた。
 これは医師以外の職員数も女性が7割以上占める同病院においては、女性職員の離職をも防ぐ方法につながってくる。そして清野氏の改革は、病院全体のワークライフバランスを目指すこととして、主治医制度の廃止、グループ診療制度の導入、産科診療では地域の開業医との連携をすすめ、さらには医師の採用を増加させている。この施策は男女医師の安定した勤務態勢につながり、同病院の運営状況も好転させている。勤務医の定着は、こうした現場を熟知する人々によって生きた対策が立てられなければならないことを、清野氏の改革が例証しており、今後の医療界の方向性を示唆するものである。

Last Update: Nov.14,2009