われら六稜人【第41回】昆虫少年、博物館へ

遠隔授業の様子

第8展示室
学校との連携の必要性

    最近、「遠隔授業」のモデルケースとしてテレビ会議をやりました。僕は直接担当しなかったので詳しくは知りませんけど。ともかく、何回かシリーズでセット したらしいです。「ハチを調べてみよう」みたいなテーマを設定して、それでうちの研究員がテレビ会議で説明をする。遠隔でそれを聞いている子供たちが質問 を返してきて…。何ヶ月か後に結果をまた各学校が話をして、またこちらにレスポンスを返してくる。子供は喜びますわな。NTTが協力してくれたんですよ。 まぁ…商売の一環ということで(笑)。その時はタダで貸してくれたんですわ。次からは知らんでって?もうでけへんかも知れんなぁ(笑)。
    そのうち通信インフラが整備された暁には(しよう思った時にはいつでもできそうですけど…笑)、そうなった時にコンテンツが問われる…コンテンツの質が問 われると思うんです。ハードが整備されてもソフトがね。その時たぶん博物館っていうのはいろんなデータベースとして活用されるんだと思いますけどね。
    今でも館内では所蔵資料なんかを端末から検索できますし、インターネットでも多少は検索できるんです。ただ、やっぱり音声とか映像とかになると、かなり重 たいんでね。情報量が莫大で…これがすべて光ファイバー網とかになってきたらサクサク行くんでしょうけど…もうちょっとかかるかなって感じです。仮にそう なったとしても、使うのはやっぱり先生とか生徒なんで…そこのところのインタフェースは…やっぱりインターネットだけでは難しいですけどね。


    去年、学校の先生を対象にしたセミナーとかやったんです。先生に対してちょっと研修所的な役割…ちょっと専門分野に特化した研修をやっていくと、その先生 方が学校に持って帰って生徒さんたちにいろいろ教えていけるっていうような奴をね。
    まず、先生の研修が大事やろな思います。だってね、最近、校内に「ビオトープ」…トンボの池を作るのが流行ってるらしいんですけど。僕もいろんなところに 呼ばれて話をしたりするんですけど、ヤゴがね(トンボの子供ですわな)…何食べるか知らん先生がものすごく多いんですよ。特に女性の先生とかね。
    ですから教育現場の先生方に対して、いろいろとこちらの持ってるノウハウを活かせたらいいなと思います。やはり僕らには生徒さんに教えるテクニックはない ですから。難しいと思いますしね(笑)。

    博物館で社会教育の仕事に携わっていて思うのは、たぶん…文化部の再興なんかは、もう学校単位では無理な気がしますわ。特に生物部なんか見ててね。あるエ リアのブロックでまとまって大々的にお祭りをうつとか…それこそ博物館を使ってですね、県内の(あるいは区域内の)学校の生物クラブの祭典をやるとか…な んかそういうような派手な打ち上げ花火が要るんちゃうかなという感じもします。
    どうしても「学校教育」というと割と閉鎖的なところがありますでしょ。逆に「社会教育」というと、変な話…詩吟の会とか、そういう高齢者福祉に近いところ に重点が置かれるって言う現実があったりして、その中間が抜けてるんですね。最近、学舎融合とか学校教育と社会教育との融合とか連携とか…口ではいろいろ 文部科学省とかも言ってるんですけど、実体としてはなかなかやっぱり進まないですね。きわめて日本的な状況ですね。

    アメリカの博物館でいろいろ話を聞いたんですけどね。「実は日本では学校と博物館とでうまく連携できてないんですよ」って言ったらね。「じゃあ、博物館が 学校と連携しないで、一体どこと連携してるの?」って聞かれるわけですよ。確かに、そう言われたらそうやなぁ…と改めて思うんですけどね。
    ひとつには縦割り行政…セクションがあると言うことですよね。学校教育と社会教育がまったく違う管轄にあったりして。自治体によっては、特に公民館とか生 涯学習のほうが、知事部局とか首長組長部局にあったりするわけですよ。社会教育はまだ教育委員会に残ってたりしてね。てんで連絡が無いというような状況も あったりするわけです。
    そう考えるとね。簡単に「高校生物部の活性化」と言うても「博物館で何かそのために協力をしたい」と言うてもね。なんか変な話…恥ずかしいことなんですけ ど…書類の回る順番が、たとえ学校と博物館が隣接していても、直接ダイレクトには行かないんですよ。そういう状況ですわ。社会教育課長から教育次長くらい まで上って…そこから漸く学校の課長へ。役所ってそうでしょ?隣の課へ行くのに、ぐるっと大回りしないとスジが通せない。

    アメリカで何故それがうまく行ってるかって言ったら、要は博物館自体がビジネスなんです。経営がほとんど民間の財団になってますので、つまり公益法人に なってますので、寄附を取ってきたり事業展開していこうと思ったら「学校」が最大のマーケットなんです。学校にサービスしておけば、それだけ博物館のネー ム・バリューもあがって、寄附も集まってくる。ごく自然な流れなんですよね。「なるほど、それか」って思って、そう考えたら学校と連携するのは当たり前と 言えば当たり前かも知れないですけどね。
    自分の中学・高校時代を振り返ってみると、ちょうど個人のレベルで両者を行き来しとったわけですよ。学校の場…生物研究部と博物館という社会教育施設との 間をね。個人では行き来してましたけれど、それを制度化して実施するには確かに難しいところがあるのかなと思ったりします。

    とはいえ、博物館の先生が学校に来たら面白いのになぁ…学校ももっと博物館を利用したら面白いのになぁ…とは思いましたけどね。自分はその両方に行ってよ く知ってるからなんやけど。せめて「そういう場があるよ」という情報がキッチリ流れてくれれば、今頃はもうちょっと両者の関係も濃密なものになってたか も…。
    うちの博物館の職員の中にも、学校現場から来てる人間が3人おります。そういう人が指導主事という立場で、例えば学校団体が来られた時に先頭に立って案内 するとか、そこが窓口になるわけです。

Update : Apr.23,2001

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